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スイスの視点で振り返る日本関連の記事
swissinfo.chが毎週月曜日にお届けする「スイスのメディアが報じた日本のニュース」では、スイスの報道機関が配信した日本関連ニュースを要約して紹介しています。こちらのページは、これまでに配信した記事の一覧です。
「スイスのメディアが報じた日本のニュース」では、政治や経済、ビジネス、科学など各分野の日本に関連したトピックスを、スイスメディアがどう報じているか、要約してご紹介しています。
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7月8~14日
防衛協力を深める日・フィリピン
日本とフィリピン両政府が8日、自衛隊とフィリピン軍が共同訓練をしやすくするための「円滑化協定」に署名しました。ドイツ語圏の日刊紙NZZのパトリック・ツォル台北特派員は、協定は「中国政府に向けたシグナルだ」と解説しました。
インド太平洋の地政学に詳しいツォル記者は、「日本とフィリピンが接近している主な理由は、両国とも中国からの圧力を感じているからだ」と説明。中国政府が「九段線」と呼ぶ境界線をもとに南シナ海ほぼ全域の領有権を主張し、中国当局・民兵船舶が補給任務中のフィリピン船舶に対し繰り返し嫌がらせしていると伝えました。
日本に対しては東シナ海の尖閣諸島を「釣魚島」と称して島周辺に日々侵入していると指摘しました。中国は日本とフィリピンに対し歴史的な領有権を主張していますが、「これらは法的に受け入れがたい」と位置付けました。
記事は2つの島国が米国の重要な同盟国であることも解説しました。「台湾をめぐる緊張が高まるにつれ、ワシントンの戦略家にとって両国の重要性が高まっている」。しかしこのために両国の接近は「中国が包囲されているという強い感覚を同国政府に与える」こととなり、中国は「軍事ブロック」への警鐘を鳴らしていると報じました。
ただ日本が第二次大戦中にフィリピンなど東南アジアに残虐行為を行った、と訴える中国の戦略は「マニラにはまったく通用していない」。フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領政府にとって「現在の危険は民主主義の日本ではなく、独裁的な中華自民共和国にある」からです。
記事はマルコス大統領と岸田文雄首相が二国間関係を深めていくことが米国政府にとっての「再保険」となり、「次期米大統領の同盟国に対する関心は現職のそれより低くなる」と予言して結びました。
海自護衛艦が中国領海に侵入
フィリピンとの防衛協定から3日後、海上自衛隊の護衛艦が中国浙江省沖の中国領海に一時的に侵入していたことが明らかになりました。NZZのツォル記者は「太平洋の状況がきな臭い」として、事情を解説しました。
事件は日本の護衛艦「すずつき」が、公海上で実施中だった中国の演習を監視している最中に発生しました。ツォル記者が取材した米NPO「横須賀カウンシル・アジア太平洋研究所(YCAPS)」のジョン・ブラッドフォード所長は、「海軍が他国の演習を観察するのは日常茶飯事」と語りました。他の海軍の戦術や運用する編隊、使用する兵器システムなど多くを知ることができると言います。
観察する際は演習の邪魔にならないよう、ほとんどレーダーなど電子的手段で情報を取得します。かつて米海軍の駆逐艦に乗務していたブラッドフォード氏は、「私は日本の海上自衛隊とほぼ30年間一緒に働いてきたが、彼らは非常にプロフェッショナルだ」と話し、「すずつき」は演習のために中国が閉鎖したゾーンを尊重していたはずだとの見方を示しました。侵入は「手続き上のミスだった」とする日本政府の説明についても「艦長もミスをするものだ」と話しました。
槇文彦の遺作 独ラインハルト・エルンスト美術館
世界的建築家の槇文彦氏が6月、95歳で逝去しました。その約2週間後に開館し同氏の遺作となったラインハルト・エルンスト美術館外部リンク(独ヘッセン州ヴィースバーデン)を、NZZは「槙文彦の繊細な建築の特質を全て表象している」と紹介しました。
記事によるとラインハルト・エルンスト氏は精密減速機で一財を成したドイツの起業家で、長野県安曇野市に建設した自社施設TRIAD外部リンクの建築で槙氏と縁ができました。2012年には東日本大震災で被災した宮城県名取市に多目的ホール「希望の家」を寄贈し、その設計も槙氏が担いました。
記事は「希望の家」こそ日本との繋がりを強く意識し木材や温かみが強調されましたが、エルンスト美術館で槙氏は「自身を世界的名声に導いたデザインの王道に戻った」と評します。ガラス製芸術作品が玄関ホールに印象的な色彩をもたらし、中庭には美しいイロハモミジの木が植えられています。テラスの一部に千本格子を採用し、ファサードにエレガントな光を落とします。
美術館は日本語の「奥」をコンセプトに設計されたと言います。「プライベート」「親密な」の他に「崇高な」「神聖な」「奥深い」という意味を含むこの言葉を礎に、来館者は中庭を起点に9つの展示室を巡ります。そこではエルンストが収集した日米欧の抽象芸術品約1000点が展示されています。
![ラインハルト・エルンスト美術館のファサード](https://www.swissinfo.ch/content/wp-content/uploads/sites/13/2024/07/Press-Review-Teaser-1-2.png)
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7月1日~7日
半導体大国の再興を目指す日本
日本は再び世界の半導体リーダーになれるのか――最先端半導体の国産化を目指すラピダスに、日本政府は最大9200億円の支援を約束しています。ドイツ語圏の大手日刊紙NZZはラピダスの小池淳義社長に取材し、同社が政府の野心的計画で果たしている役割を解説しました。
ラピダスは2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの高性能半導体を2027年に市場化することを目標に、北海道に初の工場を建設中です。NZZは米シンクタンク国際戦略研究センターの言葉を引用し、ラピダスの生産開始は「前例のない技術的成果」になると紹介しました。台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスン、米インテルなどが時間をかけて開発してきた半導体を、「日本は数世代スキップする」ことになるからです。小池氏は「政府の強力な支援」を背景に、この難題を乗り越える可能性があると語りました。
また記事は「日本は自前の半導体工場の建設に関して、欧州やドイツよりも一歩進んでいる」と評価。欧州はTSMCやインテルの工場設立に依存する一方、日本自体はかつてのように世界的な技術リーダーになろうとしていると対比しました。
行政のフロッピーディスク使用を終了
デジタル庁が3日、行政手続きの記録媒体としてフロッピーディスクの使用を求める規定を全て撤廃したと発表しました。つい先月までこの「旧式の記憶装置」が使われていたことは、スイスのフランス語圏・イタリア語圏でニュースになりました。
フランス語圏の無料紙20min.は「我々は6月28日、フロッピーディスクとの闘いに勝利した!」という河野太郎デジタル相の言葉を見出しに取りました。ティチーノニュースなどイタリア語圏メディアは「日本はテクノロジー大国とみなされているが、変化に対する一定の抵抗もあり、近年は世界的なデジタル変革の波に遅れをとっている」と報じました。
東京都知事に小池百合子氏再選
7日実施された東京都知事選。男性政治家が圧倒的多数を占める日本政治の中で小池百合子氏と蓮舫氏の女性対決になったことに、無料紙20min.などスイスのフランス語圏メディアが注目しました。
同紙は小池氏がコロナ禍で延期・実施された東京五輪で都のトップに立ち、閉会式でパリのアン・イダルゴ市長に五輪旗を手交したと紹介。「不人気な岸田文雄首相率いる自民党は小池氏を支持し、同氏の再選を歓迎している」と説明を加えました。
![花束を抱えた小池百合子氏](https://www.swissinfo.ch/content/wp-content/uploads/sites/13/2024/07/Press-Review-Teaser-1-1.png)
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6月24~30日
輸出に有利でも懸念される円安
外国為替市場で円の対ドル相場の下落が止まらず、6月28日には一時1ドル=161円台と約37年半ぶりの円安水準を更新しました。フランス語圏の日刊紙ル・タンは、この円安は日銀にとって「需要主導のインフレを起こしたいという願望と、家計の負担となっている円安を食い止めるために利上げするかという葛藤をもたらす頭痛の種だ」とする解説記事を掲載しました。
記事は「日銀の最大の関心事は、インフレ率を2%に安定させることだ」と明言。エネルギーコストを除いた物価は下落が続くうえ、円安による個人消費の低迷が日銀の目指す需要主導のインフレを妨げている、と分析しました。。また政策を誤り景気回復が水の泡になった過去の経験から「日銀は慎重になっている」とする専門家の見方を紹介しました。
日米韓の対中三国協力
日本と米国、韓国が26日、ワシントンで初の商務・産業相会合を開きました。ドイツ語圏の日刊紙NZZのマルティン・ケリング東京特派員は、3カ国協力は「電池と半導体の供給網で最も重要な2カ国と米国がこれまで結んだ二国間協定に、より大きな影響を与えることになる」と伝えました。
共同声明は中国を名指しこそしなかったものの、「中国の代名詞として西側諸国で定着した言い回し」を使っていると解説しました。それは3カ国が協力を通じて「インド太平洋」諸国の安全と繁栄の向上を目指すこと、「戦略物資を特定の供給源に依存することを武器として利用する」国々への懸念を示すことです。
3カ国協力が本領を発揮するのは11月の米大統領選挙になる、との見方も示しました。「ドナルド・トランプ氏が大統領として復活する可能性がある間、この新しい仕組みが存続するかどうかは完全に不透明だ」
日本の排他的な顔
人手不足で移民の重要性が指摘されるなか、在日クルド人に対する反発が高まっているのはなぜか――ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、「日本のクルド人コミュニティーの中心地」とされる埼玉県川口市のルポ記事を掲載しました。
同紙が取材したテヴフィク・タスさんは20年前、13歳の時から川口に住み、解体業者やケバブ店、カフェ、バー、フードトラックを経営。外国人としての生活に問題はないと感じていましたが、昨年7月のある事件以降、タスさんはネット上の誹謗中傷や日常生活での敵対行為に悩まされているそうです。
記事は江戸時代の鎖国政策を始め、日本人の外国人との付き合いの歴史にも注目。難しい言語やマナーを習得した外国人は称賛される一方、「多様性を棚上げ」する集団意識が深く根付いているため、外国人労働者や難民受け入れに消極的だと伝えています。「だからこそ、他国であれば警察が扱い慣れていそうな出来事が、日本では大きなもめごとに発展することがよくある」
![川口駅の上空写真](https://www.swissinfo.ch/content/wp-content/uploads/sites/13/2024/07/Press-Review-Teaser-1.png)
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6月17~23日
日銀総裁、7月の利上げを示唆
日銀の植田和男総裁が18日の参院財政金融委員会で、「次回(7月30~31日)の金融政策決定会合)までに入手可能になる経済・物価情勢に関するデータや情報次第だが、場合によっては政策金利の引き上げも十分ありうる」と発言。スイス・ドイツ語圏の金融メディア、フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトはこれを「7月に利上げの可能性を示唆」との見出しで報じました。
一方、フランス語圏の地域ラジオ局RFJは、植田総裁発言について「一部のエコノミストは、家計の購買力を圧迫する円安を抑え込むためのはったりではないかと疑問を抱いている」という解説を加えました。
触覚ロボット「LOVOT」の成功
米テスラが開発中のヒト型ロボット「オプティマス」が世界中の投資家の注目を集めるなか、スイス・ドイツ語圏の日刊紙NZZは「日本ではLOVOT(ラボット)のような感情を持つロボットの市場が既に存在する」と紹介する大型記事を掲載しました。
1970年代以降、数々の技術者がヒト型ロボットの開発に勤しんできました。そんななか、日本では同志社大の勝野宏史氏らが「 Haptic creatueres (触覚のある創造物)」という「市場性のある概念」を生み出したとNZZは紹介。なかでもGroove X(グルーブエックス)の開発したラボット外部リンクは、数週間で飽きられやすい感情型ロボットは異なり、発売から3年経った今でも9割が現役で使われているといいます。
知日派スイス人「長期滞在は難しい」
スイスは空前の日本旅行ブーム。あらゆる国内旅行業者で日本への旅行者が激増したと報道されています。そんななか、スイスの無料紙20min.イタリア語版などに、「日本の住民は外国人には敵対的なことが多い」とする記事が掲載されました。
その論拠は複数あります。まずは国籍取得が制限的であること。「社会のルールも厳格で、西洋から来た人にとっては奇異なことも多い」として、路上で食べないこと、公共交通機関では黙っていることを挙げました。
チューリヒ大学の日本学者ダーフィト・キアヴァッチ外部リンク氏は「規範から逸脱すれば、特に外国人とみなされると、軽蔑される」と語ります。また観光業が日本社会の転機になるとみており、「観光業や飲食業の労働力不足は深刻化で、移民政策は寛大になっている」と話しました。
![ロボットを抱く子どもたち](https://www.swissinfo.ch/content/wp-content/uploads/sites/13/2024/06/Press-Review-Teaser-1-1.png)
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