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トランプ関税、無料ナプキン、「ジブリ風」…スイスのメディアが報じた日本のニュース

宮崎駿氏と「崖の上のポニョ」
2009年、米ロサンゼルスで「崖の上のポニョ」上映会に登壇する宮崎駿監督 AP Photo/Chris Pizzello, File

スイスの主要報道機関が先週(3月31~4月6日)伝えた日本関連のニュースから、①中国が日韓に送る秋波②「無料ナプキン」提案に殺害予告③「ジブリ風」AI画像 スイス仏語圏で物議、の3件を要約して紹介します。

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中国が日韓に送る秋波

米トランプ政権が2日発表した「相互関税」に、世界中が揺さぶられています。石破茂首相は輸出依存度の高い日本にとって「国家的危機」にある外部リンクと述べ、林芳正官房長官は「きわめて遺憾外部リンク」と発言。東京株式市場も急落したことなど、さまざまな日本の反応がスイスで報じられています。

そんななか、ドイツ語圏のターゲス・アンツァイガーなどタメディア系新聞は、中国が日韓への接近を図っていることに注目する記事を掲載しました。

記事が着目したのは、中国の民間シンクタンク「全球化智庫(中国グローバル化センター)」に今月1日掲載された王輝耀理事長の論考外部リンクです。3月末に経済貿易相会合を開いた日中韓は「アジアの屋台骨」であるとする王氏の見解は、後に中国国営メディアにも取り上げられたといいます。

記事は、第1次トランプ政権下で「自国を自由貿易のリーダーと位置付けていた」中国がこのようなシグナルを発することは「めったにない」と位置付けます。中国に軌道修正をせまっているのは第2次トランプ政権。34%の高関税を課された中国は、3カ国の自由貿易協定(FTA)やデジタル経済パートナーシップ協定(DEPA) 、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定 (CPTPP)を推進しようとしていると伝えました。

記事は、CPTPPを主導する日本が「中国の参画を支持する可能性がある」とする一方、「実際に実現するかどうかは全くの未知数」とみています。①いくつかの加盟国が中国・台湾の対立に巻き込まれることを嫌い、中国の参加申請(2021年)が協定締結プロセスを停滞させている②TPPは本来、米国が中国の脅威に対抗するために始めた構想であり、中国が加盟すれば地政学的問題を引き起こす――とみられるためです。

記事は「中国との自由貿易の強化は、トランプ政権下の貿易戦争における不確実性に対抗するのに役立つ」としながらも、鉄鋼ダンピングや歴史・領土問題といった日中韓が抱える課題を挙げ、「中国が突然新しい友人になるわけではない」と指摘しました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

「無料ナプキン」提案に殺害予告

生理用ナプキンを公衆トイレに無料で置いてほしい――地方議員がSNSに投稿したこんな一言が大反響を呼びました。ターゲス・アンツァイガーなどドイツ語圏のタメディア系新聞は、議員に対し殺害予告まで寄せられる事態に発展したことを伝えながら、ナプキンの入手は世界的に「死活問題」になっていると報じました。

記事は、三重県の吉田紋華議員(共産党)が庁内で突然生理になったがナプキンの手持ちがなく困った経験とともに「トイレットペーパーみたいに、生理用ナプキンをどこでも置いてほしい」と投稿したことを紹介。これに対して「いい歳して非常用ナプキンを持ち歩かない吉田あやか議員を殺害します!」などと題するメールが大量に届いた、という毎日新聞外部リンクの報道を引用しました。

殺害予告について、記事は「吉田議員の切実な願いに対しては、マイルドな怒りをぶつけることさえ適切なリアクションとは言えない。その反対だ」と断言。毎日新聞の別の記事を引用して「日本のSNSでは駅やショッピングモールなどに生理用品を置いてほしいという要望が高まっている」と伝えました。

記事は「裕福な日本において、これは単に出血して困るという話ではない」と続け、それは「生理の貧困」という世界的な問題につながっていると解説します。それは生理用品を買うお金がない、税金のため高額、知識の欠如や社会的偏見があるなど様々な理由で、国連によれば、こうした健康上の格差によって学校に通ったり働いたりすることさえできない女性・女児が世界に何百万人もいます。

日本は「比較的進歩的」で、無料ナプキンや自動販売機が設置されているところもあります。それに対し、「善良な日本人女性ならいつでも緊急用ナプキンを携帯している。無料設置を求めるのは身勝手だ」という批判が上がっていると記事は伝えています。

この記事には7日現在16件の読者コメントが寄せられています。男性とみられる読者からは「もし男性に生理があったら、何十年も前から世界中で無料の生理用品が提供されていただろう」とのコメントが。また1日の食事に困る貧困国のことを踏まえれば、ナプキンは死活問題ではないという趣旨のコメントもありました。

また「あらゆる物を無料で提供すれば、ほかの人にとっては高くつく。誰もが赤ちゃん・高齢者用のおむつも無料化を望むようになる」というコメントに対し、「高齢者用のおむつは健康保険で支払われることが多く、それは良いことだ」「その論理なら、公衆トイレに行くにも自分のトイレットペーパーを持参しなければならない」といった反論もありました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

「ジブリ風」AI画像 スイス・フランス語圏でも物議

米国の生成AI、ChatGPTが先月発表した画像生成機能を機に、写真を「ジブリ風」として宮崎駿監督のアニメに寄せた画像に編集することが世界中で大流行しています。スイス南部ヴァレー(ヴァリス)州では、このブームに便乗した地元の企業・団体が一部で批判を買っている、と地元の仏語紙ル・ヌーヴェリステが報じました。

物議を呼んだのは、スイスの施設80カ所でスキーリフトなどが乗り放題になる「マジック・パス」の投稿。「ジブリ風」の人物にマジック・パスを持たせた画像に、「もしも宮崎駿がマジック・パスを持っていたら、仏オートサヴォワをバックにしたスキーや、ヴォー州の2大巨峰の谷間を滑るソリ、フリブールのチーズフォンデュが『ジブリ風』で見られるかも」との文章を添えてInstagramなどに投稿外部リンクしました。

この投稿は多くの「いいね」を得る一方、「宮崎監督がこの作品を見たら、きっとがっかりしただろう」など批判的なコメントも。マジック・パスの運営団体(ヴァレー州シオン)のセバスティアン・トラベレッティ社長は広告代理店に相談したうえでの投稿であり、「ライセンス権に問題があるとすれば、解決する責任はChatGPTにある」と同紙に釈明しました。スイスのバスケットボールチーム「BBCモンティ」やトリアン渓谷観光局外部リンクなども便乗していると言います。

記事は、宮崎氏がかつてAI画像に否定的な見解を述べていたと解説。地元の映画祭を主催する団体CIME外部リンクはジブリ風画像を公開翌日に削除しました。同団体の代表者は同紙に「私たちは、ハイジも手がけた宮崎監督に敬意を表したかった」と説明し、「苦しむ可能性や考える可能性のない者に、芸術作品を尊重することはできない」という宮崎氏の言葉を知って考えを改めたと語りました。「私はこの投稿が映画祭の価値観と合致していないことに気づき、すぐに取り消した」

同紙は短い動画外部リンクで、「ジブリ風」の是非について読者の意見を募っています。(出典:ル・ヌーヴェリステ外部リンク/フランス語)

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話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「トランプ関税、なぜスイスに大打撃?」(記事/日本語)でした。他に「スイス住民の12人に1人が貧困ラインを下回る」(記事/日本語)、「スイスから英国への入国にETAが必要に」(記事/英語)も良く読まれました。

ご意見やご感想、取り上げて欲しいテーマなどのご要望がありましたら、お気軽にこちらのメールアドレスまでお寄せください。

次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は4月14日(月)に掲載予定です。

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校閲:大野瑠衣子

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