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ホンダ・日産統合、日本株、ポール・ワトソン、「ふてほど」…スイスのメディアが報じた日本のニュース

日産・ホンダ、三菱の共同記者会見
23日、共同記者会見に臨む日産の内田誠社長(左)とホンダの三部敏宏社長(中央)、 三菱自動車の加藤隆雄社長(右) AP Photo/Eugene Hoshiko

スイスの主要報道機関が先週(12月16日〜22日)伝えた日本関連のニュースから、①ホンダ・日産が経営統合②日本株市場の魅力③反捕鯨活動家ポール・ワトソン氏釈放④2024年新語・流行語大賞「ふてほど」、の4件を要約して紹介します。

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ホンダ・日産が経営統合

ホンダと日産自動車が23日、持ち株会社の設立を目指して経営統合の協議に入ると正式発表しました。日産が筆頭株主の三菱自動車の合流も視野に入れています。18日には日本経済新聞外部リンクがスクープしており、スイスでもこれらをもとにドイツ語・フランス語・イタリア語圏の主要メディアが報じました。

フランス語圏の大手紙ル・タンは「仏ルノーにとって、この合併は天の恵みとなる可能性がある」として、同社と日産との提携関係の経緯や見通しを詳報。日産株の売却を進めてきたルノーにとって、日産・ホンダの統合により「他の分野に投資する追加的流動性を得ることができる」と解説しました。ただし日産もホンダもまだ欧州での存在感が薄いため、「ルノーは今後も欧州市場へのアクセスのパートナーとして中心的な役割を果たす可能性がある」と見通しました。

ドイツ語圏の大手紙NZZは「2021年のステランティス設立以来、自動車業界で最大規模の合併になる」と報じ、自動車業界担当のヘルベルト・シュミット記者の解説記事を掲載しました。しかしその論調は厳しく、タイトルは「足の悪い2人が一緒にアスリートになることはできない」。

国内市場で伸び悩む2社はもっと中国や北米、欧州という大規模市場に目を向けるべきだーーだがまさにこれらの市場で、この2社は後塵を配している、とシュミット氏は続けます。電気自動車(EV)開発の遅れに加え「バッテリー技術もまた、日本企業2社にとって未知の領域だ」として、同分野をリードする中韓に2社が追いつくのは難しいとの見通しを示しました。自動運転などに使われる技術やセンサーについても日本特有の遅れがあると指摘しました。

その上で、ホンダと日産はまずこうした世界とのギャップを埋める努力を可及的速やかに行わなければいけないと論じます。「ホンダと日産が必要としているのは、両社が事業を展開するすべての市場に技術的に適した新しい製品だ」とも指摘。会社規模だけを追及するのではなく、技術と品質を磨く必要があるとして、今後の統合交渉を急ぐべきだと警鐘を鳴らしました。

その他のスイスメディアは、仏AFP通信からの転載が多くなっています。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語、NZZ外部リンク/ドイツ語)

日本株市場の魅力

日銀は19日の金融政策決定会合で、政策金利の据え置きを決めました。日本メディアが「利上げ見送り」と報じるなか、スイス・ドイツ語圏の金融紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトは、外国人投資家目線ではなお日本市場が魅力的に映る理由を解説しました。

日銀は今年3月に17年ぶりの利上げを実施しましたが、記事はインフレ率を差し引いた実質金利は新型コロナ禍前の水準をなお下回ると指摘。根強い円安も「緩やかな金融情勢に大きく寄与している」。インフレ率が日銀目標を上回っているのに利上げが見送られたことを「寒すぎるよりは暑すぎる方がいい――経済全体の温度に対して、金融当局はこう考えているようだ」と読み解きました。

労働市場の引き締まりが賃上げ圧力となり、消費を押し上げると説明。「投資家視点では、インフレの持続的回復、緩やかな金融情勢、足元の円安、無傷の成長見通しなど、日本株への投資を促す論拠が数多く揃っている」。中国・欧州とは異なり日本はトランプ関税から今のところ免れていることも強調しました。

特に注目すべき業界として、半導体とロボット産業を挙げました。「企業は有望な市場セグメントで特に有利な立場にあり、イノベーション研究に多額の投資を行っている」。リスクとして、トラプ次期政権がもたらす世界貿易の混乱や、日銀が予想より速いペースで利上げすることだと伝えました。(出典:フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク/ドイツ語)

反捕鯨活動家ポール・ワトソン氏釈放

デンマークの司法省は17日、反捕鯨団体「シー・シェパード」の創設者で、7月にデンマーク自治領グリーンランドで警察に拘束されたポール・ワトソン氏を日本に引き渡さない事を決めまました。グリーンランド警察も同日、同氏を釈放したと発表しました。捕鯨への反発が強いスイスでも、フランス語圏を中心に大きく報じられました。

仏語圏のル・タンは、同氏の釈放を「特にフランスでは多くの擁護者が喜びを表明した」として、デモや嘆願書などを通じて数万人が釈放を求めていたと伝えました。デンマーク政府は政治問題にしないよう努めてきたものの、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が介入したり、欧州議会でも議論されたりしたことで、日本政府の引き渡し要請を拒否する決断に至ったと説明しています。

林芳正官房長官の「遺憾だ」というコメントなど、日本側の反応も詳しく報じています。ただ日本メディアはワトソン氏の拘束をあまり報道してこなかったと指摘し、一般の日本国民は同氏を「テロリスト」とみなしている、と仏紙リベラシオンの報道を引用しました。

独語圏のNZZも「一部の環境保護活動家はワトソン氏を英雄だと考えているが、他の人は彼が過激すぎるとみている」と指摘。ただ2010年の捕鯨船襲撃を非難する日本政府に対し、ワトソン氏の弁護団は「口実に過ぎない」と反論しており、同氏の釈放を求める声が国際的に広がっていたことを伝えています。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語、NZZ外部リンク/ドイツ語)

2024年新語・流行語大賞「ふてほど」

2日発表された2024年の「新語・流行語大賞」で、昭和から令和の時代にタイムスリップした男性を描いたテレビドラマ「不適切にもほどがある!」を略した「ふてほど」が年間大賞に輝きました。NZZはドラマのストーリーを紹介するとともに、「ふてほど」が大衆の共感を得た背景を読み解きました。

ドラマは現在と40年前の価値観の対比を通じ、「古い世代だけでなく、ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)を求めることが自分たちの生活を必ずしも楽にしてくれるとは限らない日本のZ世代も揶揄している」、と記事は解説します。バブル崩壊後の1990年代は経済的には困難だったものの、終身雇用や年金といった安定が残り「昭和のノスタルジーには確かに魅力がある」と伝えました。

しかしもちろん、ドラマの中で「ふてほど」なのは令和ではなく昭和世代。女性や障がい者に関する悪しき固定観念は「とうの昔に過ぎ去った」ものの、ドラマは「こうした古い見方が現代社会とどのように衝突するのか、そしてどちらの時代にも良い面、悪い面があることをユーモアと深みを交えて」描いていると続けました。

年末に「ふてほど」が新語大賞に選ばれたことで、記事は「もしかしたら伝統的な(年始の)家族の集いで、今日何が『ほどがある』のかについて議論を引き起こすかもしれない」と結びました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「世界で最も急勾配のロープウェイがスイスで開業」(記事/日本語)でした。他に「運が良ければ見られるかも?スイスの珍しい鳥たち」(記事/日本語)、「ATM爆破事件が過去最多」(記事/英語)も良く読まれました。

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