万博、北方領土、山口組…スイスのメディアが報じた日本のニュース

スイスの主要報道機関が先週(4月7~13日)伝えた日本関連のニュースから、①大阪万博が開幕 スイス議員団の期待②千島列島をめぐる日ロ紛争③山口組が抗争終結宣言、の3件を要約して紹介します。
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大阪万博が開幕 スイス議員団の期待
13日に大阪・関西万博が開幕しました。スイスでは全言語圏の各メディアが開幕を伝えるなか、フランス語圏の日刊紙ル・タンは開幕前に訪日したスイス議員団に取材し、スイス・日本関係への期待を聞きました。
スイス議員団はマヤ・リニカー下院議長ら9人。開会式やスイス館の落成式に出席したほか、東京や京都、大阪で経済・研究・イノベーションに関する会議が開かれました。
In Tokyo, @MajaRiniker外部リンク & the🇨🇭parliamentary delegation met Fukushiro Nukaga, Speaker of the 🇯🇵 House of Representatives & officials from several ministries. Talks focused on bilateral ties & opportunities for deeper cooperation among like-minded partners amid global challenges. pic.twitter.com/0NC9WfmNij外部リンク
— Parl CH (@ParlCH) April 8, 2025外部リンク
記事によると、代表団はロジェ・ドゥバッハ駐日スイス大使や額賀福志郎衆院議長ら、閣僚とも面会。国民党(SVP/UDC)のピエール・アンドレ・パージュ議員は「日本との協力の多くの機会について既に議論を交わした。私はこの機会を利用して貿易、特にチーズについて話をした。どうやらそこにスイス製品の市場があるようだ」と語っています。
急進民主党(FDP/PLR)のダミアン・コティエ議員は「今回の訪日からすぐに具体的な利益があると期待するべきではない」としつつ、米トランプ政権の相互関税の発表を受けて日本が交渉による解決を模索していることを強調しました。
社会民主党(SP/PS)のサミュエル・ベンダハン議員も、トランプ政権のもたらす世界の不安定化といった特定の政治問題に対処する好機とみています。「日本はスイスと共通する特徴を持っているため、例えば人工知能(AI)分野でパートナーシップやプロジェクトを生みだすことにも興味がある」と話しました。
4月22日は万博におけるスイスの「ナショナル・デー」にあたり、ギー・パルムラン経済相が万博会場を訪問する予定でしたが、記事によると「地政学的混乱のため」カリン・ケラー・ズッター大統領とともにワシントンに行くことに。代わりにイグナツィオ・カシス外相が出席する案が出ています。
ドイツ語圏のベルナー・ツァイトゥングは、スイス館のディレクター、マヌエル・サルクリ氏に遠隔取材し、スイスが大阪・関西万博で目指すことについて聞きました。
サルクリ氏は2002年以来、万博のスイス館や五輪のスイスハウスを担当する「スイスの主任イメージキーパー」。2005年の愛知万博では、開幕直前にスイスから持ち込まれた食器が押収されたり、14年のソチ五輪では物資を積んだトラックがウクライナで行方不明になったり。2010年の上海万博ではスイス館のチェアリフトが頻繁に故障し、来場者が足を骨折する事故も起きたといいます。
そんな困難を乗り越えてきたサルクリ氏は、日本の「官僚主義」に苦労したそうです。例えば外国人が日本の銀行に口座を開くのは事実上不可能で、請求書は在日スイス大使館を通さないと発行できないといいます。
万博ベテランのサルクリ氏が注視するのはZ世代。イベントのヘルパーとして期待されていますが、以前ほどの熱意が感じられないそうです。「20年前は、異文化の中で6カ月間働けるということにスタッフが熱意を抱いていると実感できた」
記事は、万博でスイスのイメージアップを図るにあたり、スポンサーの選定が重要であることも指摘しました。海運大手MSCが今回のスイス館のスポンサーの一員となっていることは、万博の主題である持続可能性に違反すると批判外部リンクされています。
この批判に対し、サルクリ氏は「内陸国であるスイスに、世界最大の海運物流会社が存在することは大変喜ばしいことだ。スイスが魅力的なビジネス拠点であることを示している」と反論。スイス館が万博史上最小の排出量を特徴としていることも強調しました。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語、ベルナー・ツァイトゥング外部リンク/ドイツ語)
千島列島をめぐる日ロ紛争
ロシア当局が7日、日本のNGO「北方領土問題対策協会外部リンク」を「好ましからざる団体」に指定しました。イタリア語圏スイスの地方紙コリエーレ・デル・ティチーノがこの件をとりあげ、千島列島をめぐる日ロ間の紛争を解説しました。
「地震が頻繁に発生し、『極端な』天候で知られる。その場所を間近で見た(少数の)人々によれば、そこは荒涼とした寂しい場所だという」――記事は千島列島(イタリア語でIsole Curili)についてこう描写しました。
協会については、「領土問題に関する国民の意識向上、調査研究、元島民の高齢者支援」を使命としていると紹介。一方、協会が「復讐主義的な思想」を推進し「ロシアの主権を損なっている」と非難するロシア当局の見方を伝えました。
ロシア当局の言い分についてはさらに深堀りしています。ロシアの声明は、協会がNGOを自称しながら「宣伝活動」や「教育イベント」を企画し、日本政府から資金提供を受けていると指摘。記事は「日本の活動家の暗闇の中で…ロシア検察庁は復讐主義イデオロギーを見抜くことに成功した」との文言も引用しました。
記事によると、ロシアは世界自然保護基金(WWF)や反汚職団体の「トランスペアレンシー・インターナショナル」、米政府系メディアラジオ自由欧州・ラジオ自由(RFE/RL)外部リンクも「好ましからざる団体」に指定しています。(出典:コリエーレ・デル・ティチーノ外部リンク/イタリア語)
山口組が抗争終結宣言
特定抗争指定暴力団の山口組が、対立組織との抗争終結を宣言した書面を兵庫県警に提出したと複数の日本メディアで報じられています。仏AFP通信は独自に同県警本部に取材し、山口組の構成員が「問題を起こさない」ことを誓約し「すべての内部抗争」を終わらせるとする内容の文書を提出したと報道。ル・マタンなどフランス語圏スイスのメディアにも転載されました。
記事は、日本の暴力団について「イタリアのマフィアや中国の三合会と異なり、ヤクザは長い間日本社会のグレーゾーンを占めてきた。ヤクザの存在自体は違法ではなく、その拠点は警察の監視下にある」と説明。「ヤクザのやり方は疑問視されているが、街の秩序を保つために必要な悪として長い間容認されてきた」としています。
暴力団の構成員の数は減少をたどる一方、インターネット詐欺や投資詐欺をはたらく犯罪集団「トクリュウ」との関連も伝えています。「警察によれば、一部のヤクザはこうした新たな犯罪組織のリーダーであり、その利益は伝統的な犯罪組織の資金源となっている」(出典:ル・マタン外部リンク/フランス語)
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話題になったスイスのニュース
先週、最も注目されたスイスのニュースは「【トランプ関税】スイス経済相が米通商代表と初協議」(記事/日本語)でした。他に「スイス大統領、関税でトランプ氏と電話会談」(記事/日本語)、「チューリヒで家賃引き下げ求めるデモ」(記事/英語)も良く読まれました。
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校閲:大野瑠衣子

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