大阪万博、買収阻止、森山大道、ユニクロ…スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が先週(9月2日〜8日)伝えた日本関連のニュースから、①大阪万博のスイス館②バイデン米大統領、日本製鉄のUSスチール買収を阻止へ③ローザンヌの森山大道展④スイス人待望のユニクロ、上陸はいつ?の4件を要約して紹介します。
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大阪万博のスイス館
2025年4月に開幕する大阪万国博覧会に向け、スイスはいち早くパビリオン建設の許可を取得し、外部リンク今年3月には起工式外部リンクが行われました。建設が進むスイス館の特長を、ドイツ語圏の大手紙NZZが詳報しました。
スイス館を設計したのはスイス北部バーゼル出身の建築家マヌエル・ヘルツ氏。「万博のすべての建物の中で環境負荷を最小限に抑えながらも、印象を残す」ことを目指したといいます。超軽量構造のパビリオンは乳白色のシャボン玉のような形をしており、高機能フッ素樹脂ETFEフィルムを利用。展示後は解体して家具などに再利用できるそうです。
再利用のアイデアは、前回のドバイ万博でも試されました。ドイツ館は失敗してしまった一方、永山裕子氏が大阪向けに設計した「ウーマンズパビリオン」はドバイ万博の日本館を解体して大阪に移送・再組立てしたものだと記事は紹介しています。
「マヌエル・ヘルツや永山祐子のような有望な若手建築家は、アイデアとは対照的に素材を経済的に使用することで、世界中の展示会を持続可能にするためのデザインに貢献できるかもしれない」(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
バイデン米大統領、日本製鉄のUSスチール買収を阻止へ
日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収案をめぐり、ジョー・バイデン大統領が阻止する方針を固めていることが明らかになりました。買収は米政府に阻止される見込みが高まっており、スイスでもドイツ語圏の経済紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト(FuW)やNZZが注目しました。
FuWは、バイデン氏が買収を阻止するとの関係者証言を伝えた5日のロイター報道を転載。USスチールが買収失敗は数千人の雇用を脅かすと警告したこと、本社を大統領選の激戦区・ペンシルベニア州から移転させる可能性も報じています。
NZZは経済部のベンジャミン・トリーベ編集員による論説を掲載しました。金銭欲に駆られる人々をやゆする慣用句になぞらえて「Ein Tanz um das stählerne Kalb(鉄鋼の仔牛の周りで踊る)」と題し、バイデン氏に批判的な見方を展開しました。
「買収は、最も収益性の低い場所で行われる過剰生産を削減し、業界の他の部分を効率化するための正しい方法だ」と指摘します。鉄鋼はどの国も必要な産業ながら、世界の製鉄所数は過剰状態にあり、特に中国への依存度が問題になっています。「USスチールと日本製鉄が協働すればチャンスがあるのに、別々に倒れたら誰の得にもならない」(出典:FuW外部リンク、NZZ外部リンク/ドイツ語)
ローザンヌの森山大道展
スイス西部ローザンヌにある写真美術館「Photo Elysée(フォト・エリゼ)外部リンク」で6日、写真家・森山大道氏の回顧展が開幕しました。ローザンヌのあるフランス語圏はもちろん、ドイツ語圏外部リンクでも各紙がとりあげています。
なかでもフランス語圏の大手紙ル・タンは、森山氏本人にメールでインタビューし、見開き2ページの大特集を展開しました。
記事は「森山氏の作品は、フォトジャーナリズムの影響を受けている」と記しています。1938年生まれの同氏は、特に米国の占領が遺した禍根や、日本が西洋化していく様子をフィルムに収めました。次第に撮影スタイルは進化し、被写体に接近して奥行きや消失線を駆使して、「ある意味ではよりアングラで実験的なものになった」。この変化について、森山氏本人は「日常生活の混乱したビジョンを再現」しようとしたと語っています。
「展覧会の観覧は、日本社会の進化を追うことでもある」。写真には森山氏の主観や白黒、誇張された粒状感、大胆なフレーミングやぼかしなども施されているものの、「森山氏は自国の変容の特権的な目撃者だ」と指摘しました。森山氏も「写真は歴史、社会、そしてそれに付随する全てを映し出す」とコメントしました。
展覧会ディレクターのナタリー・エルシュドルファー氏は「森山氏が強迫的な写真家であるがゆえに、この展覧会の蓄積された次元は、頭脳的であると同時に没入的な訪問を可能にしている」と表現しています。展覧会は2025年2月23日まで。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語)
スイス人待望のユニクロ、上陸はいつ?
男子テニス界のスターだったロジャー・フェデラー選手が広告塔を務めるユニクロは、スイス国内でも知名度が上がっています。しかしスイス国内にユニクロの店舗はありません。先月中旬にはユニクロ欧州がTikTokに掲載した新店がチューリヒなのではないかとの憶測外部リンクが広がりました。
豪ZimmermannやノルウェーのNorrøna、仏Sessùnといった海外ファッションブランドのスイス出店が相次ぐなか、ルツェルン新聞などドイツ語圏のCHメディア系の地方紙に「ユニクロはいつ来るのか?」と題する分析記事が掲載されました。
記事はこれらの新規出店を並べたうえで、「スイスはアウトドアブランドのサプライヤーにとって人気のある国だ」と位置付けます。そして「ユニクロのミニマル・スタイルも、スイスに多くのファンを抱える」。しかし、同社広報によると「現在、スイスには出店の予定はない」そうです。
「ユニクロのスイス市場参入は、実現するとしてもかなり先のことになりそうだ」と記事は続けます。その理由の1つとして、「スイスの関税制度が他の欧州諸国と異なる」ことを挙げました。スイスは関税が重量で計算されるため、追加作業が発生し、関税コストがかさんでしまうとのことです。
高い家賃も難題です。出店するとすれば大都市チューリヒやジュネーブの市街地に広大な敷地が必要ですが、その家賃はかなり高く、「高い魅力を持つユニクロは、いかなる代償も支払うわけではないことで知られている」と説明しました。
ただユニクロファンに「わずかな希望の光」もあります。チューリヒにはいくつかの空き物件があり、CHメディアの取材では少なくとも1件で最初の交渉が行われたことが明らかに。「ただベストシナリオでも、開業までには数カ月から数年かかる可能性がある」と結びました。(出典:ルツェルン新聞外部リンク/ドイツ語)
【スイスで報道されたその他のトピック】
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話題になったスイスのニュース
先週、最も注目されたスイスのニュースは「プーチン大統領の息子、スイスのルガーノで生まれていた」(記事/日本語)でした。他に「1000人超でアルプホルン演奏 スイスで世界記録を更新」(記事/日本語)、「スイス連邦鉄道から数キロの爆発物が盗まれる」(記事/英語)も良く読まれました。
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校閲:大野瑠衣子
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