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新日鉄、ハイジ、在日スイス人…スイスのメディアが報じた日本のニュース

ハイジとミャクミャク、2人の男性
2024年12月、ベルンで開かれた大阪・関西万博に関する記者会見に、ハイジとミャクミャクが登場した。右端はスイス館を率いるマヌエル・サルフリ氏、隣は藤山美典スイス大使 SWI swissinfo.ch/Tomoko Muth

スイスの主要報道機関が先週(1月6日~12日)伝えた日本関連のニュースから、①新日鉄・USスチール、米大統領を提訴②スイス館の「秘密兵器」ハイジ③常滑在住スイス人手記、の3件を要約して紹介します。

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新日鉄・USスチール、米大統領を提訴

新日鉄・USスチールが、買収計画を拒否したジョー・バイデン米大統領を提訴。ドイツ語圏の大手紙NZZは2社の反発を詳しく報じるとともに、勝訴への道の難しさを伝えています。

「バイデン氏は当初から売却に批判的だった」。同紙は、USスチールが長い間、外国鉄鋼会社との競争の中で不公正な貿易慣行に苦しめられていたことに、バイデン氏が反感を抱いていたと指摘。これに対して新日鉄・USスチールは、バイデン氏が個人的な政治的アジェンダを推進するために政治的影響力を行使したことを批判していると説明しました。

そのうえで、「訴訟の成功の可能性を評価するのは難しい」としました。バイデン氏が拒否権発動の理由に挙げた「国家安全保障」の意味や、それがどんな時に脅かされるのかについて、「米大統領には多くの裁量の余地がある」ためです。

記事によると、「米政界では、バイデン氏の新日鉄に対する厳しい姿勢は多くの人に支持されている」。ドナルド・トランプ氏も関税導入によってUSスチールは収益力を高めることができると確信しています。一方、「バイデン政権内では意見が分かれた」として、アンソニー・ブリンケン国務長官とジェイク・サリバン国家安全保障顧問が、バイデン氏の拒否権はアジアの重要な同盟国を遠ざけることになると主張したと紹介しています。

フランス語圏の大手紙ル・タンは、石破茂首相が米政府に対し、日本産業界の対米投資に当たっての「懸念を払しょくする」ために、「国家安全保障」上のリスクについて説明を求めたことを取り上げました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語、ル・タン外部リンク/フランス語)

スイス館の「秘密兵器」ハイジ

大阪・関西万博の開幕まで3カ月。大衆紙ブリックのドイツ語・フランス語版に、スイス館のマスコットキャラクターを務めるハイジが「スイス連邦政府の秘密兵器」として紹介されました。

ハイジはマスコットとして、「ハイジが何十年も憧れてきた開催国・日本」への架け橋を築くことを目指しているといいます。「ハイジは我らがスイスの得点を稼ぐための秘密兵器なのだ!」

ハイジはスイス館広報活動の一環として、万博公式マスコットのミャクミャクとともにユングフラウヨッホなどスイスの名所を回り、SNSなどに写真を投稿しています。開催中はスイス館の屋上で来場者を迎えることになっているそうです。

記事は日本における「ハイジ崇拝」の理由も説明しています。スイス人作家ヨハンナ・シュピリが原作を書いたのが1880年。小説の日本語訳は1920年に出版され、高畑勲監督が1974年に制作したアニメ「アルプスの少女ハイジ」は「(日本の)全世代に、後には欧州にも影響を与えた」。スイス外務省が任命したマスコットも、原作風のハイジではなく高畑版ハイジが採用されています。

外務省の公式ホームページでも高畑版ハイジは紹介されており、「伝統と現代性の矛盾、健康と幸福の源、崇高さの現れとしての自然の描写」が人気の理由とする推察もブリックに引用されました。(出典:ブリック外部リンク/ドイツ語)

スイスから日本、そしてまたスイスへ

スイス西部ローザンヌ出身のエリーザ・トラモンタナさんは日本人男性と結婚し、家族で2018年に日本に移住した在外スイス人。今またスイスに戻ることを検討しているといいます。フランス語圏の日刊紙24heuresに、日本とスイスの生活を比べたエリーザさんの手記が掲載されました(原文は女性誌フェミーナ外部リンクに2024年8月5日に掲載)。

エリーザさんが日本文化に初めて触れたのは2013年、職業訓練校で陶芸を学んでいたときにした短期留学中でした。翌年23歳で再び日本を訪れたエリーザさんは、宿泊先のゲストハウスで働いていた夫・Shotaさんと出会います。妊娠を機にスイスに戻り、2016年に長女を、2018年に次女を産みました。

「私たちはスイスに 3 年間住んで、その後日本に 3 年間住んでそれぞれの文化を学ぶことにしました。それからどの国に定住するかを選びたい」との思いからでした。

2018年、陶芸の名所として知られる愛知県・常滑市に移住。エリーザさんが短期留学した地で、Shotaさんの出身地・名古屋にも近いことから選んだ土地でしたが、馴染むのは簡単ではなかったといいます。

「常滑は海辺で住むにはとても素敵でしたが、ある種の村の雰囲気もあります」。外国人も英語を話せる人も少なく、エリーザさんは子育てに勤しみながらも大きな孤独を感じていました。

そんなエリーザさんの生活が変わったのは、古民家を改築したゲストハウスの開業。子どもが保育園に通い始めたことで、エリーザさんはフランス語教師を始めたり、英語の堪能なママ友と出会ったりと、「どんどん地域に溶け込んでいけるようになりました」。

「日本ではあえて話しかけたり、近づいたりしません。平穏を保てるから女性としては良いことですが、出会いが少なくなります。とえば、お互いの家に招待するには親しい間柄でなければなりません。レストランで友達と会うのが一般的です」

日本移住から6年が経ち、エリーザさんたちはスイスに戻ることを検討しています。近く娘たちが中学校に上がると「非常に厳しくなり、生徒の自由が少ないように思える」からです。でも、なかなか決心はつきません。「スイスの方が経済的に安定していて、学校制度も社会的保護も充実しているかもしれない」とは思いつつ、日本でゲストハウスを経営する楽しさも手放し難いのです。2024年にはエリーザさんがスイスに滞在し、日本とスイスの生活を比べてみる予定だと記していました。「私は今後もこの 2 つの文化の間で引き裂かれることになると思います。そして、この国を常に発見し続けてきたおかげで、日本は私を驚かせてやまないでしょう」(出典:24heures外部リンク/フランス語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠」(記事/日本語)でした。他に「『スイス銀行のナチス関連口座は再調査を』 歴史家ら提唱」(記事/日本語)、「グラウビュンデン州のスキー場で2人が死亡」(記事/英語)も良く読まれました。

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担当: Sara Ibrahim

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校閲:大野瑠衣子

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