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日本製鉄、ロシア機密文書、ごみ分別…スイスのメディアが報じた日本のニュース

ペットボトルの袋
スイスでは通常、ペットボトルも蓋はつけたまま、ラベルを剥がさず・洗わずリサイクルに出せる。そんなスイスからすると、日本のゴミ出しルールは厳しすぎる? KEYSTONE/Christian Beutler

スイスの主要報道機関が先週(2024年12月30日~25年1月5日)伝えた日本関連のニュースから、①バイデン氏、日本製鉄によるUSスチール買収に反対表明②ロシア軍の日韓攻撃リスト③ごみ出し違反者の氏名公表は厳しすぎる?の3件を要約して紹介します。

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バイデン氏、日本製鉄によるUSスチール買収に反対表明

ジョー・バイデン米大統領が3日、日本製鉄によるUSスチールの買収計画を禁止する命令を出しました。スイスでは主に通信社Keystone-SDA/ATSの記事が各言語圏で伝えられています。

フランス語圏ATSの記事は、バイデン氏の決定は「非常に政治的で、日本政府との緊張を引き起こす恐れがある」と位置付けています。バイデン氏はアジアにおける戦略的同盟国である日本との外交を主導してきましたが、「鉄鋼問題については国内を優先することを選んだ」。同氏が21年にフランスからオーストラリアとの巨大潜水艦契約を奪い取り、米仏間に亀裂を招いたことも紹介しました。

イタリア語圏のスイス公共放送(RSI)はATSや仏AFP通信の記事をもとに、バイデン氏の決定を批判する日本製鉄・USスチールの共同声明や、決定に「感謝する」とした全米鉄鋼動労組合(USW)の声明に焦点を当てました。またニューヨーク株式市場でUSスチール株が6%超下落したことを受け、「同社の将来に対する不確実性が高まっていることの表れだ」と報じました。

ドイツ語圏のスイス通信社SDAは、3日に武藤容治経済産業相がバイデン氏の決定について「理解しがたく、残念だ」とするコメントを中心に報じました。

フランス語圏のスイス公共放送(RTS)は、日本製鉄・USスチールが法的措置を取る方針を示したことを報じました。20日にバイデン氏からドナルド・トランプ氏への政権移行が迫るなか、2人とも買収計画に反対していたことから「非常に緊迫し分裂した政治情勢において稀に見る共通認識の対象となっていた」と伝えました。

(出典:Keystone-ATSRTS外部リンク/フランス語、RSI外部リンク/イタリア語、SDA/ドイツ語)

ロシア軍の日韓攻撃リスト

英紙フィナンシャル・タイムズ外部リンクが31日、ロシア軍が日本や韓国内160カ所の攻撃対象リストを作成していたと報じました。14年までに作成されたロシア軍の機密文書を同紙が独自入手したもので、スイスではフランス語圏の大手紙ル・タンが詳しく伝えています。

「ロシアは1万2000人近い兵士を北朝鮮軍から集めており、ウクライナ戦争は東に拡大した。アジアはウラジーミル・プーチン大統領の軍事戦略の中心に据わっている」。ル・タンはFT報道に注目した理由をこのように説明しました。「それは既に10年前に起きていた」

ル・タンはさらに、米安全保障シンクタンク、スティムソン・センターのウィリアム・アルバーク外部リンク氏がFTに寄せた「欧州とアジアの戦域は、直接かつ分かちがたい関係にある」とのコメントを引用しました。

アルバーク氏は、FTが報じた機密文書は「アジアにおける西側同盟国の脅威に対するモスクワの認識を反映している」とも解説。「もしロシアが突如エストニアを攻撃するのであれば、在日・在韓米軍やそれを支援する人々も攻撃しなければならないだろう」との見方を示しており、これらもル・タンに引用されています。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語)

ごみ出し違反者の氏名公表は厳しすぎる?

福島市は12月、ごみ出しのルール違反が悪質な場合にごみ袋を開封し、出した家庭を特定できるよう条例を改正しました。これについて、ターゲス・アンツァイガーなどドイツ語圏の総合メディアTamedia系の日刊各紙に、「福島はごみ罪人にうんざりし、さらし者にする」と題する記事が掲載されました。

記事が注目したのは、罰則の1つである氏名公表措置です。氏名公表は「ネーミング(Naming)やシェーミング(Shaming)とも呼ばれ、日本では法的に禁止できない行為に対する抑止効果が実証されている」。新型コロナ禍でも隔離義務の違反者は氏名公表という形で「処罰」された例を挙げました。

また「日本はごみの分別について非常に厳しい」と紹介。自治体によってごみの分け方は細かく異なり、練馬区ではごみの種類が10種類にもわたると説明しました。「間違いが起こるのは当たり前だ」。違反は「ミス」にすぎないと同情心を示しています。

氏名公表は厳しすぎるのではないか、と記事は問いかける一方、「福島市民にとっては朗報だ」としています。違反者が特定されてもすぐに処罰されるわけではなく、当局がまず状況を監視し、当人に警告し、必要に応じてアドバイスを与え、それでも違反が続く場合のみ氏名公表に至るからです。

そのうえで、氏名公表がミス削減につながるかどうかは不透明だとし、「代替案はごみの分別を簡素化することだが、福島市にとってはその方が過激すぎるのかもしれない」と結びました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「国民投票に向けた署名がまたも偽造」(記事/日本語)でした。他に「2024年のスイスの企業倒産件数、過去最高に」(記事/日本語)、「スイス航空乗務員、緊急着陸後に死亡」(記事/英語)も良く読まれました。

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担当: Geraldine Wong Sak Hoi

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中立国、平和の推進者、人権の擁護者――スイスは世界でさまざまな見方をされています。しかし、スイスと他国・機関との関係について、すべての情報が正確・十分に理解されているわけではありません。

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校閲:大野瑠衣子

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