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東京砂漠、ゲームショウ…スイスのメディアが報じた日本のニュース

東京の眺め
2023年11月に開業した麻布台ヒルズは日本一高い高層ビル。東京を一望できる EPA/FRANCK ROBICHON

スイスの主要報道機関が先週(10月14日〜20日)伝えた日本関連のニュースから、①樹木が失われゆく東京②日本のゲーム業界に何が起こったのか?の2件を要約して紹介します。

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樹木が失われゆく東京

超高層ビル麻布台ヒルズの開業、神宮外苑の再開発。東京では常に建設業界が新名所の開発を競い合っていますが、そのなかでどんどん緑が失われています。南ドイツ新聞のトーマス・ハーン東京特派員のルポが、スイス・ドイツ語圏の大手紙ターゲス・アンツァイガーに掲載されました。

「地震やその他の災害がこの年の歴史を形成した」。記事は、市場広場や古い文化財、距離・緑地規制など欧州の都市にみられる整然さは、東京のまちづくりでは重視されなかったと指摘します。特に第二次世界大戦後、山に囲まれた日本では「経済を回すため狭い土地にできるだけ多くの人間や企業を安全に収用すること」が主な目標となったといいます。

結果として開発規制は緩く、東京は「無慈悲に石化」していきました。転機は1990年代のバブル崩壊。三菱地所による丸の内の再開発を皮切りに、土地を売るために生活の質を重視した再開発が進みました。

都市計画法は住宅・商業・工業用地区を区別し、防災に関する義務なども定めています。「しかし、それを実際にどう実行するかは開発者の裁量に委ねられている。それが欧州との大きな違いだ」。ドイツ出身の都市学者、クリスティアン・ディマー早稲田大准教授はこう話し、欧州では政府が「都市にはもっと緑が必要だ」と判断し、法整備や計画変更が進むと解説しました。

神宮再開発への抗議運動を行うロッシェル・カップさんは、緑地保護に関する法律の欠落だけではなく、高額な相続税の問題も指摘しました。古い庭のある家屋の相続人は、相続税を支払うために収益力の高い集合住宅計画に土地を売らざるをえなくなるというわけです。

「未来都市が数百万人を抱える森であるとするなら、東京は未来都市ではない」。記事はこう嘆くとともに、落葉・落枝による掃除や安全性の観点から樹木が邪魔者扱いされている、と伝えました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

日本のゲーム業界に何が起こったのか?

かつてはテレビゲームといえば日本だったが、今やほとんどのゲームは米国製。日本のゲーム業界に何が起こったのか?そんな疑問を解こうと、ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は9月25~29日に開催された東京ゲームショウを取材しました。

今年の東京ゲームショウでは約1000社の出展者がゲームを発表し、27万5000人の来場者を呼びました。どちらも記録的な数字ですが、欧米の出展・来場者はわずか。記事は「欧米の日本ブームにもかかわらず、東京ゲームショウはケルンで開催されるゲームズコムに比べると国際的な存在感は驚くほど乏しい」と伝えています。

その理由として、SRFは「日本ゲーム市場のガラパゴス化」を挙げました。日本のゲーム人口は米国、中国に次ぐ世界第3位で、日本ゲーム会社は国内市場専用のゲームを制作できる環境にあります。その特徴として、アニメを多用し、リアリティーよりも想像力を重視し、ストーリー性が強い点を列挙しています。

多くの欧米製ゲームは日本で苦戦し、日本のゲームの多くは英訳されていないことは「祝福でもあり、呪いでもある」と記事は続けます。孤立した日本市場は国内企業に安定を保証する一方、「欧米との刺激的な交流を困難にしている」と指摘しました。

日本製ゲームが減っているという印象は、米欧製が増えていること、単にスイスに上陸しないことによる誤認だと指摘します。米国ゲーム企業と異なり、日本は大量解雇を免れたうえ、賃上げする企業も多くなっています。人口減少が進むなか、日本ゲーム業界に関しては国内・海外市場ともに成長が予測されている、と結びました。(出典:SRF外部リンク/ドイツ語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「世界の年金制度ランキング、スイスは12位 首位はオランダ」(記事/日本語)でした。他に「チューリヒの一等地にパン屋開業 高級街に転機か」(記事/日本語)、「越境ショッピング、免税上限を150フランに引き下げ」(記事/英語)も良く読まれました。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は10月28日(月)に掲載予定です。

校閲:大野瑠衣子

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