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石破演説、日産危機、シャチ、おっさんレンタル…スイスのメディアが報じた日本のニュース

曲芸をするシャチ
南仏のマリンランドで曲芸をするシャチ、2012年3月撮影 AP Photo/Lionel Cironneau

スイスの主要報道機関が先週(11月25日〜12月1日)伝えた日本関連のニュースから、①石破首相、トランプ氏に「警告」②日産危機、時間との勝負③仏、シャチの神戸への移送に反対④「おっさんレンタル」体験記、の4件を要約して紹介します。

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石破首相、トランプ氏に「警告」

石破茂首相は先月29日の所信表明演説で、来年1月に就任するドナルド・トランプ次期大統領と「率直に議論する」と述べました。スイスのオンラインメディアwatson.chフランス語版は、これを「日本の首相がトランプ氏に警告」と伝えました。

「率直に議論」することがなぜトランプ氏への「警告」になるのでしょうか?ヒントは石破演説の「米国は事実上日本の防衛を保証しているが、同時に日本にある軍事施設から大きな戦略的利点を得ている」という発言にあります。記事は、日本には約5万4千人の米兵が沖縄に駐留し、対中戦略において「ワシントンに強い存在感を与えている」と説明しました。

石破演説は11月のアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で中国の習近平(シーチンピン)国家主席と会談したことも振り返りました。watson.chは石破氏が中国と「建設的な」関係を築こうとしており、また防衛予算も増強し米国依存が和らいでいると強調。こうした日本の立ち位置を踏まえると、率直な議論の呼びかけは孤立主義を掲げるトランプ氏への「警告」にあたる、という解釈のようです。(出典:watson.ch外部リンク/フランス語)

日産危機、時間との勝負

「我々が生き残りのために残された時間は12~14カ月しかない」――業績悪化が深刻な日産の幹部が英紙フィナンシャル・タイムズに語ったと報じられています。スイスのオンラインメディアwatson.chドイツ語版はこの報道を受け、日産危機がどれほど深刻なのかを解説しました。

「1つ明らかなのは、強力なパートナーがなければ日産にチャンスはないということだ」。記事は日産がファンドや銀行、保険会社、さらには競合メーカーのホンダさえも視野に提携相手を探していると伝えています。「しかしホンダの参入は、すでに脆弱になっているルノーとの提携を危うくする可能性もある」

シンガポールのアクティビスト投資家で上場子会社の日産車体の大株主である エフィッシモ・キャピタル・マネジメントの名も取り沙汰されています。東芝などを厳しいリストラにより再建したことで知られる同社日産の株式を取得したことに言及し「株式市場は前向きに反応したが、大幅なリストラが断行される可能性もある」と指摘しました。

アシンメトリー・アドバイザーズの日本株ストラテジスト、アミール・アンヴァルザデ氏は「奇跡が起こらない限り、会社は救われない」と語ります。記事は「ホンダであれ、投資家であれ、奇跡であれ、最も重要なのは時間だ」と結びました。(出典:watson.ch外部リンク/ドイツ語)

仏、シャチの神戸への移送に反対

フランスのアニエス・パニエ・リュナシェ・エコロジー移行相が25日、仏コートダジュールにある水族園「マリンランド外部リンク」のシャチ2頭を日本に移送することに反対を表明しました。反対理由は日本の「動物福祉」に関する規制の緩さだと言います。

「スペインには現在、シャチを収容できる公園がある」が、「日本には動物福祉に関してこれほど広範な規制はない」。リュナシェ氏が仏民放TF1でこう述べたことを、スイスの大衆紙ブリック仏語版が報じました。

フランスは2021年にシャチの飼育を禁止したため、水族園「マリンランド」は2026年12月1日までにシャチ2頭をどこかに移送しなければなりません。複数の調査の結果「現行基準に準拠する神戸が最良の選択肢と思われた」として、マリンランドはエコロジー移行省に神戸への移送を申請しました。カナダ東部のノバスコシア州での保護は「不可能」と判断したうえでのことでした。

しかしリュナシェ氏はこの申請に反対を表明。「欧州の規制」を順守する場所に移送すべきだとして、スペイン・カナリア諸島のテネリフェ島を例に挙げました。(出典:ブリック外部リンク/フランス語)

「おっさんレンタル」体験記

人間をレンタルするのってどんな感じ?――ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガー生活部の記者が出張で日本を訪れた際、京都で50歳代の男性を「レンタル」した体験記を執筆しました。

「日本はサービス社会であり、数時間だけ人間を買い取ることも珍しいことではない」。記事は、身近な人を亡くした時に一緒に泣いてくれる人や、お祝い事に一緒に参加してくれる親・きょうだい・恋人をレンタルすることもできると紹介しました。

記者がレンタルを試みたのは年金受給者でした。出張の合間の自由時間に一晩付き合ってくれ、外国人として生じる誤解を解く「文化通訳者」を担ってくれる人。何より「年配男性が自分をレンタルに出すのはなぜなのか?」という記者の疑問に答えてくれる人を探したのです。

レンタルに出す理由について、記者は一般論として▼年金を補うため▼社会貢献のため▼労働力不足のため▼コミュニティーの中で自分の存在意義を満たすため、を挙げました。

「おっさんレンタル」を利用して3人にコンタクトを取ったところ、返事をくれたのは50歳代のロッキーさん。記者と居酒屋で語り合ったロッキーさんは、自身をレンタルに出す理由を▼人々と知り合える▼英語が上達すされる▼人々が日本文化を理解するのを助けることができる、の3つだと説明しました。記者の期待通り「文化通訳者」だったのです。

有償のレンタル時間が過ぎたあとも、2人はカラオケバーに移ってロッキーさんの仲間とともに午前1時まで歌い明かしました。記者はこの夜から2つのことを得たと言います。「私自身の存在がコミュニティーのなかでより充実したこと。そして日本に行ったらいつも年金受給者を借りようという気持ちが芽生えたことだ」(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

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担当: Giannis Mavris

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校閲:大野瑠衣子

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