自衛隊の新規採用、日銀の政策金利据え置き、真田広之の「SHOGUN」…スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が先週(9月16日〜22日)伝えた日本関連のニュースから、①自衛隊の新規採用に行き詰まり②日銀が政策金利据え置き③真田広之「SHOGUN」エミー賞受賞の3件を要約して紹介します。
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自衛隊の新規採用に行き詰まり
日本の防衛省によると、自衛官の採用計画に対する昨年度の「達成率」が、創設以来で過去最低を記録しました。1万9598人の募集に対し採用は9959人で、達成率は51%に落ち込みました。
手厳しい論調を載せたのは独語圏の日刊高級紙NZZです。「日本の自衛隊は新兵獲得に失敗している。安っぽいPRではなく、東アジアで高まる安全保障上のリスクを訴えた方が得策だ」と断言しました。
若年層人口の減少などにより新規隊員を確保する努力は避けては通れないとしたものの、これまでの採用キャンペーンには「絶望的と思えるものもある」と指摘。髪型の選択の自由化やセクシャル・ハラスメント被害者へのカウンセリングサービスなどが若者を誘致する原動力にほとんどなっていないと述べました。
利用すべきは東アジア情勢のリスクだと同紙は指摘します。中国、北朝鮮の軍事的圧力や大国ロシアとの国境問題などといった「周辺の安全保障状況は悪化しており、日本は近隣諸国からの脅威に対してもっと武装しなければならないという核心的なメッセージを政治指導者が伝えられない限り、(新規採用に向けた)こうした努力が実を結ぶことはないだろう」と断言しました。
また日本は第二次大戦後、平和憲法の下で交戦権を放棄し、反軍国主義は一種のエチケットとみなされてきたと説明。日本の街角で軍服姿の兵士を見かけることがほぼないのも不思議ではないとしました。その上で「エレガントなシャワー室や兵営の食堂を充実させたところで、(新規採用が伸びない)状況は何も変わらない。エリート層の意識改革が必要であり、それを効果的に体現するロールモデルが必要だ」としめくくっています。
(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
日本経済に依然「弱さ」
政策金利を0.25%に据え置くことを決めた20日の日銀の金融政策決定会合はスイスでも報じられました。
経済紙ハンデルスツァイトゥングは、金利据え置きは「アナリストらの想定内だった」と評価。日銀の声明にある通り国内の経済・物価を巡る不確実性は今もなお高く、日本経済は緩やかに回復しつつあるものの、依然として一部に「弱さ」が見られると評価しました。
コメルツ銀行の専門家フォルクマール・バウアー氏は「日銀が主要金利を大幅に引き上げるのは難しいと引き続き想定している」とコメント。利上げは早くても今年12月になるだろうと予測しています。
(出典:ハンデルスツァイトゥング外部リンク/ドイツ語)
「SHOGUN」の成功が示すもの
俳優の真田広之さんがプロデュース・主演を務め、アメリカの有料テレビチャンネルFXが制作したドラマシリーズ「SHOGUN」がアメリカテレビ界のアカデミー賞といわれるエミー賞で史上最多の18冠を獲得したニュースは全国各紙が大きく取り上げました。
特に独語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、この作品がアメリカで大きな成功を収めた理由を分析。真田さんが製作に10年の歳月をかけ、細部まで絶え間ない努力を払い練り上げられた同作品がこれだけの賞を獲得するのは当然であり、俳優陣の演技も絶賛しました。
アメリカ発のドラマでありながら台詞の70%は日本語、さらに歴史学者や言語の専門家、日本演劇や時代劇の作家を結集しオーセンティックさにこだわった面も、受賞の特異性を際立たせていると指摘しました。
アメリカのエンターテインメント業界の変化にも触れ「話されている言葉は昔の時代の外国語、そのために大部分に字幕のついたドラマは、数年前なら観客や賞を惹きつけるチャンスはほぼなかっただろう。アメリカのエンターテインメント業界は外国人に対してよりオープンになり、ようやく『エキゾチックな』ストーリーを持つ人たちと協働するようになった」と分析しています。
(出典:ターゲスアンツァイガー外部リンク/ドイツ語、RTS外部リンク/フランス語、Le Temps外部リンク/フランス語、トリビューン・ド・ジュネーブ外部リンク/フランス語、20 minutes外部リンク/フランス語、Le matin外部リンク/フランス語、24 herues外部リンク/フランス語)
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話題になったスイスのニュース
先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイスの人口が900万人を突破」(記事/日本語)でした。他に「広島被爆の三輪車レプリカ、ジュネーブで展示」(記事/日本語)、「苦境のスイス時計業界 政策支援を要請」(記事/英語)も良く読まれました。
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校閲:上原亜紀子
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