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通貨安、パスポート、捕鯨…スイスのメディアが報じた日本のニュース

ポール・ワトソンの山車
2025年2月、南仏ニースのカーニバルではクジラに乗ったポール・ワトソン氏の山車が登場。同氏はスイス紙のインタビューで、フランスで亡命申請が認められたと語った AP Photo/Lewis Joly

スイスの主要報道機関が先週(3月3~9日)伝えた日本関連のニュースから、①トランプ米大統領が日中の通貨安を批判②パスポートを持たない日本人③反捕鯨活動家ポール・ワトソン氏がジュネーブの人権イベントを欠席、の3件を要約して紹介します。

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トランプ米大統領が日中の通貨安を批判

ドナルド・トランプ米大統領は3日、関税引き上げの理由の一つとして日本や中国が通貨安を誘導してきたとの見解を示しました。これを受けて市場では円高・ドル安を招き、日経平均株価が下落。スイス・ドイツ語圏の大手紙NZZがトランプ氏の真意を解説しました。

市場の混乱について、記事は「トランプ氏が日本に対する慎重な姿勢をやめ、対中国でも貿易面の強硬姿勢を強めるのではないかという懸念が強まっている」と解説。「トランプ氏の世界では、日本は特別な位置を占めている」としたうえで、石破茂首相が先月の首脳会談で取り付けた同盟強化の約束は「欧州にとっては夢のようなこと」だと伝えました。

ただ「日本政府にとって、円高は不快なことではない」と続けます。コロナ禍以来の歴史的円安が輸入インフレを招き、国民・企業の購買力低下という問題をもたらしているからです。

記事は「(トランプ氏の)口先介入が為替相場に永続的な影響を与えることができるかどうかは不明だ」とみています。円安の原因には日米金利差の拡大、デジタルサービスや人工知能(AI)分野では日本が巨額の貿易赤字を抱えていることがあると指摘しました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

パスポートを持たない日本人

外務省の2月の発表外部リンクによると、2024年末時点で発行されている有効なパスポートの累計は2164万冊で、保有率は17.5%でした。ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは「この島国には、多くの人が遠くへ旅行する時間もお金も意欲もない」と報じました。

記事は「母国に満足している人は、海外旅行は不要だと考える」と始めました。「日本の愛国主義者や外国人嫌いの人々にとって、外務省の発表は決して悪いニュースではなかった」。

しかしことはそう単純ではありません。「日本の多くの人は、インターネット上でのみ外国を見るというこの傾向が永続的な問題を引き起こす可能性があることにずっと以前から気づいていた」。コロナ禍収束後に多くのインバウンド(外国人観光客)が押し寄せる中、「自分たちがほとんど触れたことのない他国の言語や気質に圧倒されている」と指摘しました。

日本のパスポートでビザなし渡航ができる国は190カ国と、シンガポールに次ぐ世界2位(韓国が同位)。スイスの187カ国(5位)をも上回ります。

それでも日本人が海外旅行に消極的な理由として、記事はまず「日本人の休暇は、例えばスイスの会社員に比べ少ない」点を挙げました。円安で海外旅行が割高になっていること、「何か新しいものに対する好奇心は、おそらく未知のものに対する不安を払拭するほどには大きくない」ことも指摘しました。

その一因はコロナ禍にあると続けます。日本の国境をほぼ3年間閉鎖し観光客を閉め出したことが「遠方への憧れよりも、遠方への恐怖をあおった」というわけです。日本から海外への留学生も減っていると伝えました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

反捕鯨活動家ポール・ワトソン、ジュネーブの人権イベントを欠席

7日に開幕した今年の「ジュネーブ国際人権映画祭とフォーラム(FIFDH)外部リンク」で講演予定だった反捕鯨活動家のポール・ワトソン氏が、安全上の理由から出席を中止すると前日に発表。プレスリリースでは「問題の渡航はスイスに直接関係するものではないが、ポール・ワトソンを逮捕するという日本の決意は変わらないことが確認された」と説明しています。これを受け、フランス語圏のスイス通信社Keystone-ATSや大手紙ル・タン、複合メディアTamedia系地域紙がワトソン氏にインタビューしました。

ワトソン氏はATSのインタビューで、昨年149日間にわたりデンマーク領グリーンランドで拘束された間、世界中の著名人や政治家、子ども、メディアから「信じられないほどの支援」を受けたと語りました。6千通を超える手紙を受け取り、うち7割はフランスから。日本からも肯定的な手紙が数十通届いたと言います。

「海洋の状況や日本による違法捕鯨の継続、デンマーク領フェロー諸島でのイルカやゴンドウクジラの虐殺に世界の注目を集める機会になった」

ル・タンにはFIFDH出席を見送った理由の詳細を語りました。「スイスに確認したところ、スイスは私に何の保証も与えず、インターポール(国際刑事警察機構 )の要請があれば私を逮捕しなければならないと答えた」。同氏は「現在すでに亡命者の資格を持っていて、シェンゲン内ならどこでも行けるが、おそらくデンマークとスイスには入国できない」と話します。

報道によると、ワトソン氏は昨年10月にフランスのエマニュエル・マクロン大統領に政治亡命を申請。パリ市は今年2月に名誉市民の称号を授与しています。

ル・タンのインタビューでは、勾留中には在デンマーク米国大使館から支援を受けていたものの、その後トランプ大統領の就任によって米国も同氏にとって危険な存在になったと明かしました。

2月の日米首脳会談で「敏感な問題」について話し合われ、直後に日本の岩屋毅外務相がデンマークによるワトソン氏の引き渡し拒否は日本に対する裏切りだと同国の駐日大使に伝えたことも披露。「米国に帰るリスクを負うことはできない」と語りました。

24heuresなどTamedia系の仏語紙に掲載されたインタビューでは、捕鯨を止めることの「難しさ」について問われ、ワトソン氏は次のように語りました。

「腐敗や既得権益、欲望が沢山ある。(世界では)捕鯨をする人がほとんどいなくなったのに、日本では続けられている。年間約2500万~3000万ドルの補助金が支給され、捕鯨船は政府が所有している。捕鯨船に船員を供給する組合は、政府内で大きな影響力を持つ日本のヤクザに支配されている」(出典:Keystone-ATSル・タン外部リンク24heures外部リンク/フランス語)

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話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイス議会、新聞配達費用の補助金を引き上げ」(記事/日本語)でした。他に「スイス、シェンゲン域外の訪問者のデータを収集へ」(記事/日本語)、「住宅ローン基準金利が低下 家賃引き下げの可能性も」(記事/英語)も良く読まれました。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は3月17日(月)に掲載予定です。

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校閲:大野瑠衣子

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