スイス時計業界の職業教育
スイスの時計業界は現在、時計技術者を育成する職業教育により力を入れなければならない状態にある。景気も良好なほか、時計の設計や組み立てに携る人まで、時計業界全体で高齢化が進み、今後、多くの引退者が出るためだ。
時計業界は高級時計分野を中心に好業績を上げ続けている。手作業の多い時計職人の技術を学ぼうと、日本をはじめ、スイス国外から来る若者も多くいる。
現在、スイス時計協会には117社が加盟している。そこで働く人の数はおよそ4万1000人。時計業界全体の労働者数はこの2倍。高級時計を中心に時計業界は好景気が続いているが、今後もその勢いは衰えることがないと予想されている。しかし、職人の高齢化が進み、今後大量の引退者が出ることも見込まれ、少なくとも2200人の若い技術者が必要になりそうだ。
職業教育
向こう5年間のうちに、時計職人は660人、修理工480人、技術者は220人不足する。そのほかにも研磨工、宝飾細工師、彫刻師も必要で、あらゆる時計に関する技術者が不足するという。
こうした技術者を育成するには、学ぶ技術の種類にもよるが、5年間時計学校に通う必要がある。しかし、これでは現在の需要には追いつかない。時計業界は、新たに短期間で終了する職場内の教育制度を設けることにした。さほど高い技術を身につけていない労働者も、必要だからだ。また、成人向けの教育や引退年齢に達した人を引き続き雇ったり、隣国からの越境者の雇用を拡大するといったことも考えているという。
swissinfo、外電 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )
<スイス時計の現代史>
1949〜1970年
スイス時計業界の好景気時代。ピーク時の1970年には、業界には1500社以上あり、労働者は9万人いた。
1971〜1974年
好景気のため物価が上昇。給料の上昇に従い人員削減と製造のオートメ化が進む。労働者15%減少。
1975〜1983年
不景気に見舞われ雇用は半減。また、半数の企業が閉鎖に追い込まれる。オートメ化がますます進む。生産コストは下がり、生産率は上昇。1984年以来現在に至るまで、労働者数は横ばいとなっている。
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