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ギネス認定の世界最長列車に乗ってみた

ギネス世界記録への挑戦に参加できるのは日常的なことではない。10月29日、スイスを運行した世界最長の列車に乗ることができたのはたった150人。記者もその幸運にあやかった1人だった。

スイス最大の私鉄事業者であるレーティッシュ鉄道 (RhB) はこの日、最長の旅客列車の世界記録を更新した。全長1910メートル、客車100両で構成された列車は、スイス南東部グラウビュンデン州のプレダからアルブラ/ベルニナまでの25キロにわたる狭軌線路を走行した。

レーティッシュ鉄道 ギネス記録ルート
記録を打ち立てたプレダ・アルヴァノイ間ルートは、複数のらせん状トンネルを通る Kai Reusser / swissinfo.ch

10月29日(土) クール駅10番線

「スキーのマラソン大会の朝に、なぜ申し込んでしまったのかと自問する時のような気持ちだ」。RhBのレナート・ファスチアーティ社長は、海抜1788メートルのクール駅で、世界記録のスタート地点・プレダ行きのビンテージ列車に乗り込もうとする私たちにこう白状した。

レーティッシュ鉄道(RhB)のレナート・ファスチアーティ社長
報道陣や来賓を迎えたレーティッシュ鉄道(RhB)のレナート・ファスチアーティ社長 SWI swissinfo.ch / Céline Stegmüller

緊張するのは当然だ。予行練習を重ねてきたとはいえ、世界記録への挑戦には多くの技術的な課題が伴う。本番がどんな結果になるかは神のみぞ知る、だ。

世界記録のスタート地点となるアルブラトンネルを囲む山村プレダで、アルプホルンの音色に迎えられ列車からいったん降りた。演奏は記録更新を報じようと世界中から詰めかけた記者たちの注目を引いた。

このイベントがいかに特別なものであるかを実感した。世界記録列車の乗客に選ばれたのはたった150人。乗客が増えると、ただでさえ重い列車を止められなくなる。

企画に携わったRhBのインフラ部長、クリスティアン・フローリン氏は「まるで結婚式の招待客リストを作っているかのような気分だった」と振り返る。

新アルブラトンネルの中で列車に乗り込む前に、アルプホルンの演奏をBGMにトンネルの建設や掘削技術について講義を受けた。身体を温めるため、グラウビュンデン名物の大麦のスープが振舞われた。

新アルブラトンネル内部で待機する記者団
列車に乗る直前、新アルブラトンネルで自撮りする中国人記者 SWI swissinfo.ch / Céline Stegmüller

記録破りの列車に乗って

いよいよ出発の時が来た。旧アルブラトンネルで私たちを待っていた列車は、到着したばかりの4両25編成、合計100両の車両で構成され、全長は1910メートルにも及ぶ。

新旧アルブラトンネルをつなぐいくつものドアの前に列を作った。そこに突如として現れたのは、赤いスポットライトに照らされた世界最長の列車だ。両端はトンネルの暗闇に隠れて見えない。

RhBの社員に参加証となるブレスレットと記者証を見せる。名前にチェックが付けられ、乗車が許可された。

出発予定時刻の45分前、記者たちは混雑した列車の周りを歩き回り、インタビューを撮影し、走行を歴史に刻むのに最適な場所を探した。窓から携帯電話を出して列車の先頭や最後尾を撮影したいところだが、実際に窓が開けられる場所はごく少数に限られていた。私はそんな窓のそばに場所を確保できた幸運なジャーナリストとなった。

テレビクルー
ブリックTVのクルーが、旅の始まりを列車の中から中継する準備をしていた SWI swissinfo.ch / Céline Stegmüller

イベントのメディアパートナーであるブリックTVの記者兼カメラマンが車両の通路を塞いでいる。ルート中ほどにあるベルギューンの村で世界記録への挑戦をパブリックビューイングで見守る観客3千人に向け、全工程を生放送するチームだ。ライブ映像は世界中でもストリーミング放送される。同乗した中国人記者は、在中国スイス大使館でもライブ中継が行われると話した。

募る不安

出発予定時刻が過ぎ、乗客らは不安そうに時計に目を落とした。電車は動かない。男性が私たちのいる車両を通り抜けながら、17分の遅延を告げた。私の右にいたドイツ人ジャーナリストがくすくす笑っている。「スイスの電車はいつも定刻通りだと思っていた!」。だが時が経つにつれて空気は張りつめていった。午後2時30分頃、ようやく列車がゆっくりとトンネルを抜け出した。出発だ。飛行機が無事に着陸したときのように、乗客は一斉に拍手した。

赤い大蛇がうねりながら谷を下る。乗客は右へ左へと移りながら窓の外を眺め、最後尾の見えない列車に感嘆した。

プレダ=アルヴァノイ間の走行中、列車は568メートル下降する。下り坂でブレーキをかけると、一般家庭の年間消費量と同等の電力が生産される。

記録への挑戦には運輸上の難題が山積していた。7人の運転士の間で完璧に調和を取るために採用されたのは、軍隊で使う野外電話機だ。

盛大な祝典

ベルギューン駅で下車した。ここで他のイベント参加者とともに巨大スクリーンで残りの走行を見守ることになっている。列車は壮観なランドヴァッサー橋とその先の最終目的地に向かう旅を続けた。

列車が高架橋を通過する頃には、大型スクリーンに「世界記録」という文字が大きな黄色い文字で表示された。ついに成し遂げたのだ。RhBは、狭軌軌道を走る最長旅客列車の世界記録を更新した。

ベルギューン
アルブラ峠のふもと、ベルギューン村で祝典が開かれた SWI swissinfo.ch / Céline Stegmüller

英語からの翻訳:ムートゥ朋子

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