広がる緑の山肌、続く温暖な気候、中・低地のぬかるんだゲレンデ。異常気象に伴う雪不足が、スキーヤーやスイスのリゾート関係者の頭を悩ませている。
このコンテンツが公開されたのは、
英ロンドン生まれのマルチメディア・ジャーナリスト。2006年にswissinfo.ch入社。フランス語、ドイツ語、スペイン語を操る。国連などジュネーブに拠点を置く国際機関を担当。スイス・フランス語圏を中心に幅広い話題を取材。
1965年スイス生まれ。チューリヒで写真を学んだ後、1989年からフォトジャーナリストとして活動。1990年、スイス人カメラマンの代理店Lookat Photosを設立。世界報道写真財団(オランダ)の世界報道写真コンテストを2度受賞したほか、スイスの奨学金を多数獲得。その作品は多くの展覧会やコレクションで紹介されている。
欧州各地ではここ数週間、記録的な気温が続く。アルプス地方は季節外れの暖かさに見舞われ、雪不足で多くのスキーリフト、特に低山のリフトが閉鎖された。このためスキーヤーたちは雪を求めてより標高の高いゲレンデに向かった。
低山のリゾートの中には、夏のサイクリングコースを開放したところも。グラウビュンデン州スプリュゲン・タンボ(標高1480m)は2日、雪不足、大雨、温暖な気候のため「追って通知があるまで」リゾート地を閉鎖する措置に踏み切った。
スイス全土ではここ数日、記録的な高温が観測されている。1日には、スイス北西部のジュラ州ドゥレモンで20.9度を記録。アルプス以北で1月の気温としては過去最高となった。
おすすめの記事
おすすめの記事
スイスで記録的に暖かいお正月
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北西部のジュラ州ドゥレモンは1月1日の気温が20.9度に達し、アルプス以北の1月の最高気温を記録した。
もっと読む スイスで記録的に暖かいお正月
スイス気象台(メテオ・スイス)によると、温かい南西風が気温を押し上げた。温暖な気候は長引く見込みという。標高2000メートル以上の斜面には雪が降ったが、それ以下の山肌に雪は見られない。
大晦日には、ベルナー・オーバーラント地方アデルボーデンの気温は15.5度だった。同地では今週末、スキーのワールドカップ男子スラロームと大回転が開催される。1日に2万5千人が訪れるイベントだ。コース責任者のトニ・ハリ氏は、今年のレースは100%人工雪で行うと言う。
同じベルナー・オーバーラントのグリンデルワルトでは、雪で巨大な彫刻を作る伝統の雪まつり「ワールド・スノーフェスティバル」が、暖かい気候のため中止となった。
ただスイス政府観光局はこのクリスマス・年末年始の休暇について比較的楽観的だ。外国人観光客の増加で宿泊者数は前年同期比3%増となり、リゾート地は賑わった。だが同局は3日、国内からの日帰りスキー客の数は「雨、春に近い気温、低地での雪不足のため」8%減少したと述べた。
スイスケーブルカー協会は、シーズン開始以来、リフト運営会社から報告のあった売上高は、昨冬の同時期よりも9%低かったと発表した。
バーゼル大学の最近の研究によると、地球温暖化が進んだとしても、標高1800メートル以上のスキー場は1シーズン連続100日の運営が可能だという。しかし、スキー場はゲレンデを維持するため高価な人工雪に頼ることが多くなり、それによってリフト券などの価格が大幅に上昇することが予想される。
同大は声明で「この時期やその前の数週間の天候が十分に寒くない状態が続いた場合、今後数十年のクリスマス休暇中のビジネスは厳しいものになりそうだ」としている。
英語からの翻訳・宇田薫
続きを読む
おすすめの記事
スイスの学校が守る伝統のスキー合宿
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの子供は義務教育課程の間に少なくとも1週間のスキー合宿に参加しなければならない。これはスイスの法律ではなく、伝統だ。スイスに雪がある限り、スイスが自国の国技を愛し続ける限り、この伝統は守られるだろう。
もっと読む スイスの学校が守る伝統のスキー合宿
おすすめの記事
スイスのスキーリゾート、エネルギー危機で一部値上げも
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのスキー場はこの冬、パンデミック以来最大のウインターシーズンを迎える。ウクライナにおける戦争の影響で高騰したエネルギー価格を受け、省エネや値上げを検討中だ。
もっと読む スイスのスキーリゾート、エネルギー危機で一部値上げも
おすすめの記事
スキーW杯・ツェルマット大会、雪不足で中止
このコンテンツが公開されたのは、
スイスに本部を置く国際スキー連盟(FIS)は22日、10月29~30日に予定されていたアルペンスキーワールドカップ・男子ダウンヒルのレースは雪不足で中止すると発表した。
もっと読む スキーW杯・ツェルマット大会、雪不足で中止
おすすめの記事
アルプス高山植物を守る、特別な羊
このコンテンツが公開されたのは、
過去30年間でスイスアルプスの牧草地の7%が消失し低木の茂みに姿を変えた。一番の元凶は外来植物のミヤマハンノキ。この外来種の駆除に有効な方法をスイスの研究チームが突き止めた。
もっと読む アルプス高山植物を守る、特別な羊
おすすめの記事
人工雪は冬季五輪を救う?
このコンテンツが公開されたのは、
北京冬季五輪で使われている人工雪が環境にどんな影響をもたらすかを巡り、議論が起こっている。世界中のスキー場の存続が人工雪頼みになっており、スイスもその例外ではない。
もっと読む 人工雪は冬季五輪を救う?
おすすめの記事
スイスハイキング、山の事故には要注意
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのアッペンツェル・アルプスにあるアルプシュタイン山群で今年、ハイキング中の死亡事故が多発している。
もっと読む スイスハイキング、山の事故には要注意
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。