バレエは「蘇る」を信念に 振付師モーリス・ベジャール氏
創作意欲の衰えを知らないモダン・バレエ振付師の巨匠、モーリス・ベジャール氏は、今年で77歳を迎えた。振り付けの世界に入って50年になる。
50周年を記念して、同氏が率いるバレエ劇団、ベジャール・バレエ・ローザンヌは今月、地元ローザンヌで彼の主な作品6作を上演する予定だ。
ベジャール氏の作風は、形式的なバレエを壊しながら、独自の世界を作り上げ、ときには物議をかもし出すことで知られる。装飾的な表現を極力取り除き、人間の体を使って、人間の感情を最大限に表現していく。
「私のバレエは、悲劇と喜劇、死と愛、人生で起りうるあらゆるものを凝縮したもの」とベジャール氏は語る。
50年間
ベジャール氏の生まれはフランスのマルセーユ。14歳でバレエを始め、クラシック・ダンサーの道からスタートする。いくつかのバレエ団を転々としたあと、1954年にパリで最初のバレエ団、エトワール・バレエを結成する。
翌年、「孤独な男のためのシンフォニー」を振り付け、振付師としてデビュー。ただし、ベジャール氏が探求する新しい振り付けに、観客は当初、戸惑い気味だったという。
「観客から認めてもらうには時間がかかってね。初めのころは80人も集まれば、上々だったんだ」とベジャール氏は笑う。
1959年に「春の祭典」を発表。世界的な振付師としての評価を得る。翌年、劇団名をパリ演劇バレエ団に変える。同じ年にブリュッセルに渡り、劇団名を20世紀バレエ団に改めた。スイスのローザンヌに移るのは、1987年になってから。劇団名をベジャール・バレエ・ローザンヌに改名、現在に至る。
「50年間、バレエ劇団を率いてきて、名前も何度か変えた。でも根っこのところは同じ」とベジャール氏は言う。「バレエ劇団とは、言ってみれば、生き物のようなものだ。死んで、そして再生して。私達の体の細胞が蘇るのと同じさ」。さらりとそう言えるのも、残してきた跡の確かさゆえ。
ベジャール氏のバレエ劇団では、彼の世界を体現する才能豊かなダンサーが育ち、ジョルジュ・ドンなどの有名ダンサーを生み出した。退団して活躍する人も多いという。
スイス国際放送 イゾベル・レイボルド 安達聡子(あだちさとこ)意訳
公演日程
5月7-9日、最新版「ブレルとバルバラ」「バクチ」
5月12-14日、「春の祭典」「ボレロ」「火の鳥」
5月16日、最新版「ボレロ」
5月19-21日、「魔笛」
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