あつあつ、とろ〜りチーズフォンデュ
チーズフォンデュが美味しい季節がやってきました。日本でもたくさんレシピが紹介されているスイスを代表する料理ですが、スイス家庭流の食べ方、楽しみ方をご紹介したいと思います。
スイスの南国と言われるチィチーノも、肌寒い日が増えてきました。寒がりな私はちょっと気が重いのですが、散歩友達のフランチェスカは「フォンデュの季節ね」と嬉しそうです。フランチェスカはスイスチーズをこよなく愛する生粋のスイス人。夫、娘、息子の4人家族の家計を切り盛りする主婦です。
彼女がチーズフォンデュをする時は、チーズはチーズ屋で選び、その場ですりおろしてもらうそうです。基本はグリュイエールチーズで、ここにエメンタールやバシュラン、アッペンツェラー、ティルジットなどをその日の気分で加えます。
チーズを塊で買ってきて自分ですりおろす家庭もありますが、スーパーで手軽なフォンデュ用チーズミックスを買うこともできます。鍋に入れてワインなどを加えて作るのですが、それすら必要なく、鍋に移して温めるだけ、電子レンジにかけるだけという商品もあります。
チーズフォンデュの作り方はいたって簡単。鍋の内側に生にんにくをこすりつけて香りをつけ、チーズを入れます。400gのチーズに対し辛口白ワイン150〜200mlを用意し、ティースプーン1〜2杯のコーンスターチを溶かして鍋に注ぐ。後はとろっとクリーミーになるまで混ぜながら加熱するだけです。
気をつけなくてはいけないのは、チーズが焦げつかないように絶えずかき混ぜること。そしてもう1つ、弱火で少なくとも20分以上かけてゆっくり加熱することです。早く溶かそうと強い火で加熱すると、チーズの油が分離してしまいます。
仕上げにキルシュ酒を加えることはよく知られていますが、スイス家庭ではナツメグパウダーも欠かせません。ほかに黒こしょう、パプリカパウダー、カイエンヌペッパーなど。ちょっと贅沢にしたい時は、スプーン1杯のトリュフオイルをまわしかけます。
料理本などではチーズにつけるものとして、野菜、きのこ、果物などバラエティー豊富に紹介されていますが、実際はひたすらパンだけという家庭が多いようです。濃厚なチーズが引き立つように、パンは前日に買って乾燥させるのがフランチェスカのこだわりです。
最後のお楽しみは、なんといっても鍋底でパリパリに固まったチーズ。みんなで奪い合いながらはがします。前に招かれたお家では、チーズが鍋底に残り5ミリくらいになったら生卵を1つ割り入れて、スクランブルエッグのようにして出してくれました。
そういえば、チーズの表面をなでるようにしてパンをつけていたら、「底までフォークを入れて混ぜながら食べるのよ!」と注意されました。私はどうも下手で底まで入れるとすぐにパンを落としてしまうのですが、パンを落とした人には罰ゲームが待っています。
立ち上がって詩を朗読するとか、1曲歌わなくてはいけないとか。メンバーによって言うことはいろいろですが、女性は男性みんなにキスをする、なんてものも。 誰かがパンを落とすたびに歓声が上がって、フォンデュの夜はことさら楽しくふけていきます。
奥山久美子
神奈川県生まれ、福岡県育ち。都内の大学を卒業後、料理や栄養学を扱う出版社に就職。雑誌、書籍の編集業務に携わる。夫の転職に伴い、2012年からイタリア語圏ティチーノ州に住む。日本人の夫、思春期の息子2人の4人家族(+日本から連れてきた猫1匹)。趣味は旅行、読書、美味しいものを見つけること。
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