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アフガニスタン 密かなナショナリズムの台頭

外国部隊が都市部を抑さえている間に、タリバンは背後の山岳地帯などを固めている Keystone

2001 年9月11日の同時多発テロ後、アメリカがアフガニスタンに侵攻しタリバン政権を崩壊させて、すでに長い月日がたつ。しかし、日本のNGO で活躍していた伊藤和也さんが犠牲となるなど、自爆テロや戦闘による犠牲者は関係軍部のみならず民間にも広がる一方で、食糧不足や難民の数も増加の一途をたどっている。

「西欧諸国の武力的介入は、アフガニスタンの人々にとって、介入から占領へと変わりつつある。それが問題だ」と語る、スイスのアフガニスタン専門家2人にインタビューした。

アフガニスタンは侮辱されている

 現在のアフガニスタンは、さまざまな外国からの武力的介入ないしは援助の下に置かれている。まず武力的介入として、テロリズム撲滅を謳 ( うた ) うアメリカ軍と国の安定を目指す北大西洋条約機構 ( NATO ) 主導の国際治安支援部隊 ( ISAF ) 、またこのISAF指導下で軍の強化をはかるアフガニスタン政府部隊の存在。さらに、人道援助や開発援助を行う国際的諸機関が混在している。

 アフガニスタンの苦悩は深い。1979年のソ連の軍事介入以来、ほとんど戦火が絶えたことがない歴史を持つからだ。タリバン政権崩壊後の現政府も、国全体の多様な民族、部族を統一する手立てを持たないままでいる。こうした中、イスラム原理派勢力タリバンが密かに勢力を伸ばしている。

 「すべてのアフガン人がタリバンに賛成しているわけではない。アメリカ軍の存在、国際治安支援部隊 を必要悪だと考えている人が、2年前はかなりいた。しかしそうした人々が激減している」
 と説明するのは、アフガニスタン専門の民族学者ピエール・サントゥリーブル氏だ。
「アフガン人の大多数が今、アフガニスタンは侮辱されていると受け取っている。外国部隊の存在だけでなく、民主主義の導入、それも西欧社会に影響された憲法の導入を外国人主導で行われているという事実がいらだちを感じさせている。いまや外国の管理下に置かれていると感じている」
 とサントゥリーブル氏は続ける。

 また、国際テロリズムの専門家ジャック・ボー氏も同様な意見を持ち
「アフガン人の山岳地帯民族特有の精神性がポイント。彼らはほとんどが山岳地帯に住み、自分たちの村などには関心が深いが、外の世界には関心が薄い。また外国人が大規模な開発援助を行うことも、近代化を推進することも望んでいない。自分たちの発展は自分たちのリズムで、自分たちのやり方で、伝統とマッチする仕方でやりたいと思っている」
 と分析する。

ナショナリズムの台頭

 こうした民族主義に根ざすナショナリズムの台頭により、外国部隊に対するレジスタンス運動はますます広がり、タリバン勢力にウズベキスタン、タジキスタンなどのイスラム原理主義者たちが加わってきていると、ボー氏は見ている。

 この民族主義はまた、タリバン側の兵士のリクルート方法にも影響を与え
「コーランに基づく正義やイスラム原理主義ではなく、外国人支配を拒否するナショナリズムを鼓舞する方法も兵士のリクルートに使っている」
 とサントゥリーブル氏は言う。その結果、タリバンとその連合部隊はアフガニスタンの内部深くまで侵入し、国の6割近くまで勢力を伸ばしているという。

 ボー氏によれば、歴史は繰り返され
「ソビエト軍が侵入したときのように、外国部隊が都市や情報の中心部を抑えているとすると、タリバン側は田舎や山岳地帯を支配し、水を泳ぐ魚のようにスムーズに移動している。なぜなら一般国民が彼らを支持しているからだ」
 と言う。

まず戦うべき相手は外国人

しかし、レジスタンス運動側も一枚岩ではない。宗教への信心の程度、民族の違いなどにより、分裂は避けがたいものがあり、特にパキスタンとの国境あたりではその傾向が強いとボー氏は見ている。
「そしてアメリカはこの分裂をうまく利用しようと狙っている。ちょうどイラクで行った作戦と同様に。しかしそれが今度もうまく行くとは限らない。歴戦を経た筋金入りの戦士たちにとって、まず戦うべき相手は外国人なのだ」

 つまり、ボー氏はアフガニスタンでは軍事的介入による解決策は意味が無いと考える。遅かれ早かれ、西欧諸国は和平交渉のテーブルに着かざるをえないという。しかしこの交渉による解決も、決して容易な道ではない。アフガニスタンが抱える問題は複雑で、単にタリバン問題に集約されるものではないからだ。

 「もし解決策があるとするなら、それはたった1つとは思えないが、その1つは武力闘争を行っている当事者たちだけではなく、インド、パキスタン、イランを含む、アフガニスタンで起こっていることに関わるすべての国が和平協議のテーブルに着くことだ」
 とサントゥリーブル氏は結んだ。

swissinfo、フレデリック・ビュルナン 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳 

アフガニスタンは19世紀に英国の軍事介入により、すでに3度の戦争を経験し、1919年の第3次大戦でようやく外交権を回復して独立した。しかしその後、1979年のソ連の軍事介入が1989年まで続いた。当時アフガニスタンを支援していたアメリカは、2001年10月、アフガニスタンに拠点を置いていたアルカイダの討掃とタリバン政権の崩壊を目指し、アフガニスタンを攻撃した。

その後、テロリズム撲滅を続行するアメリカ軍と国の安定を目指す北大西洋条約機構 ( NATO ) 主導の国際治安支援部隊 ( ISAF ) 、またこのISAF指導下で軍の強化をはかるアフガニスタン政府部隊の存在。さらに、人道援助や開発援助を行う国際的諸機関が混在している。

国連によれば、およそ20万人の国内難民と、パキスタン、イランなどの近隣諸国にはおよそ300万人以上のアフガニスタン難民がいるとされる

スイスは1977年から、アフガニスタンの開発援助協力を行っている。

2004年来、スイスの開発協力プログラムは、国の再建と発展に焦点を当てた、長期的な計画に方向を変えつつある。

今日、連邦外務省開発協力局(DEZA/DDC )は、公的機関への援助、人権、少数民族の生活向上援助などに集中した援助を行っている。

2007年の援助額は2100万フラン ( 約21億円 ) 。

2007年、連邦国防省(VBS/DDPS)は、北大西洋条約機構 ( NATO ) 主導の国際治安支援部隊 ( ISAF ) に配属されていた数人の将校を撤退させた。

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