ジュネーブにカルト(新興宗教)情報センター開館へ
7年前スイス西部で、宗教団体ソーラー・テンプルの48人が集団死(殺人か自殺かは不明)する事件があった。ジュネーブ当局が昨年設立を決定した宗教関連団体に関する情報センターが完成した。公式オープンは来年1月1日から。
ジュネーブのカルト情報センターは、ジュネーブ、ヴォー、ヴァリス、ティチーノ各州が共同で設立した国内初のカルト対策のための公式な独立機関で、今後他の仏語州も運営に参加する予定だ。ジュネーブ司法当局のジェラール・ラムセイヤー局長は、「我々は人々の信教の自由を侵害しようとは思わない。が、カルト・グループの危険性は是非認識してほしい。」という。同センターのフランソワ・ベランゲル館長は、センターはゆくゆくは連邦情報構造に組み込まれる見込みだという。また、全ての州レベルの自治体はカルトに関する情報サービスを設置するようにという欧州議会の提唱に沿い、仏語圏以外の州も同センターに参加するよう呼び掛けている。
1994年10月4日夜、ソーラー・テンプル教団の会員48人が、他の惑星に移されるという信仰のもと、集団死する事件があった。ヴァリス州のスキーリゾートGrans-sur-Salvanでは25人、フリブール州Cheiryでは23人の遺体が発見されたが、自殺か他殺は今でも不明で何体かは頭部を数発撃たれていた。この事件を受け、ジュネーブ州は、カルト情報センターの設立と州のカルト規制強化を決定した。このような事件の再発防止の、第一義的かつ最善の手段は、人々のカルトに対する認識を高めることだ。同センターでは、カルトに関する正しい情報と、自分または家族・親族など周りの人々が危険なカルト教団に関わっていないかどうかの見きわめ方などを人々に知らせるためのパンフレットなどを出版、またウェブサイトwww.infocroyances.chも立ち上げる計画だ。
が、当局は、カルト情報センターはカルト撲滅のための機関ではなく、信教の自由を尊重しながら、各カルトの情報を収集、分析し中立で正確な情報を社会に提供するための機関だと強調している。実際同センターは、カルト教団の犠牲者、カルト活動リサーチを実施している各大学との対話だけでなく、カルト教団との対話も可能ならば行いたいとしている。
ジュネーブ司法当局は、スイス仏語州には150から180のカルト教団があると推定する。当局がカルト教団の活動に介入するのは、教団が違法行為に及んだ場合に限る。現在ジュネーブ州議会は、カルト教団の犠牲者救済とカルト商法規制のための2つの法案を検討中だ。
前述のソーラー・テンプル教団が、スイス、フランス、カナダなど数カ国にアジトを持ち集団死事件を起していた事からも明かのように、カルト教団は一国内に留まらない。従って、ジュネーブのカルト情報センターは、ベルギー、オーストリアなど各国の同様な機関と情報交換を行っていく。が、同センターは、フランスのような潜在的危険カルト教団リストの作成は、信教の自由侵害と社会のミスリード防止のため着手する計画はないという。「我々は、カルト教団の活動と教団が危険なものかどうかについて人々が理解するための手助けをしていきたい。」と、ベランゲル館長は語った。
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