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スイスでクルマが大型化 駐車場問題・自動車税の見直し広がる

クルマの背面
KEYSTONE/© KEYSTONE / GAETAN BALLY

スイスで大型車の人気が高まっている。フランス語圏のスイス公共放送(RTS)の分析では、スイスで登録される新車の平均サイズは毎年1~2㎝ずつ長くなっている。駐車スペースや大気汚染への影響など、課題も見え始めた。

より長く、より広く、より高く。スポーツ用多目的車(SUV)の流行に伴い、自家用車の大型化が続く。スイスも例外ではないが、駐車スペースや道路幅は変化していない。

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RTSは連邦運輸省道路局(ASTRA/OFROU)の新車販売・保有データを分析し、サイズの変化を調べた。その結果、新車の全長は毎年1~2㎝ずつ長くなっており、2023年は平均4.49mと、2011年比で16㎝も伸びた。

問題は車幅だ。新車では2年で約1㎝ずつ伸び、2023年の平均全幅は1.84mと、2011年比で6㎝広がった。

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大型化の背景には何があるのか?主な理由はSUVの爆発的な販売増にある。2023年は販売された新車の半分がSUVだった。

電気自動車も一役買っている。2023年に登録された新車の平均は全長4.52m、全幅1.86m。ガソリン車よりも長さは18㎝、幅は5㎝大きい。

ドイツ語圏で特に人気

自動車メーカーが販売するモデルが大型化する一方、最終的にどんな大きさの車を買うか判断するのは消費者だ。RTSの分析によると、スイス人の大型車に対する好みには地域差があり、特に大型車を好むのはドイツ語圏だった。

昨年登録された新車の平均値が最も大きかったのはドイツ語圏のツーク州で、シュヴィーツ州とグラウビュンデン州が続いた。地域別では山岳部のグラウビュンデン州エンガディーン地域で最も大きく、平均全長は4.60m、全幅は1.87mだった。

フランス語圏とイタリア語圏では小型車が好まれる。平均サイズの下位6州はすべてフランス語・イタリア語圏だった。唯一の例外はフランス語圏のジュネーブ州で、新車の平均サイズは全国平均を上回る。

ジュラ州の平均サイズはツーク州より19㎝短く、5㎝狭い。地域別ではティチーノ州ロカルノの全長4.32m、全幅1.81mが最小だった。

大型の高級車

フィアットは人気モデル「フィアット 500」が平均サイズを押し下げた。同モデルは1957年の発売当初に比べれば大きくなったが、それでもランボルギーニより車幅が約 30㎝狭い。

ツーク州以外ではランボルギーニやベントレー、アストンマーティンが走り回る姿はほとんどみられない。だが高級車以外でも、スイスで人気のメーカーは超大型モデルも取り揃えている。2023年の新規登録台数が5位だったメルセデス・ベンツは、平均全長がフィアットより97㎝長く、全幅は22㎝広い。

駐車場の抱える苦悩

大型車の人気は駐車場問題に直結している。2台のSUVの間に車を停めるのは至難の業だ。拡張不可能な地下駐車場など、そもそも大型車を停められない場所もある。

ローザンヌにあるイノヴィル駐車場を管理するジョニー・ペレラ氏はRTSの番組で「柱を動かすことはできない。大型車の登場は、50~60年前に建設された駐車場にとって大きな制約となっている」と語った。

唯一の解決策は停められる車の数を減らすことだが、駐車場管理者にとっては難しい選択だ。「3台置けるスペースを2台分に減らすこともできるが、そうなると駐車料金は1.5倍に引き上げなければならない。消費者にはその心構えができていない」(ペレラ氏)

サイズ比例の自動車税?

一部の大都市は、増える四輪駆動車への対策に乗り出す。パリでは今秋、SUVに対する駐車税の引き上げが予定されている。スイスでもいくつかのプロジェクトが検討される。

バーゼル・シュタット準州では、州議会が自動車税の算出に重量とCO₂排出量に加えて車高を組み込む案を議論している。 旗振り役のラファエル・フューラー議員(緑の党=GPS/Les Verts)は「社会に害を及ぼす車を買う人々にもっとお金を払ってもらうのは正しいやり方だと思う」と強調する。「大気汚染や土地利用に生じる問題の解決費用は、これらの車を購入・運転する人々が負担するべきだ」

だがロビー団体はこの案に反対する。スイス自動車販売整備業協会(AGVS/UPSA)ヴォー州支部のニコラ・ルーバ支部長は「人々は使途に応じて購入する車を決める。街に行くには小型の電気自動車、週末には少し大きめの車が便利で、営業にはステーションワゴン、農家にはSUVが必要だ。それは正当化されるべきであり、罰金政策を設けるのはおかしい」と主張する。

バーゼル・シュタット準州を埋め尽くす

連邦議会では近年、SUVの普及を阻む議員動議や請願が提出されている。直近では緑の党のマリオンナ・シュラッター下院議員が3月、連邦内閣(政府)に「自動車の大型化、重量化、高性能化を阻止するための措置」を要請した。

シュラッター氏は、SUVは二酸化炭素(CO₂)排出量が多すぎるだけでなく、「小型車両に乗る人や歩行者、自転車にとってより大きな危険」をもたらすと訴える。連邦内閣はまだ回答を示していないが、同じような別の提案を却下している。

駐車や追い越しが難しいことは、消費者が大型車の購入を思いとどまる理由にはなっていないようだ。サイズも販売台数も右肩上がりとなった結果、スイスを走行する自動車の「総面積」は2011年比で24%増えた。国内の登録車480万台を並べると、面積37万km²のバーゼル・シュタット準州が埋め尽くされることになる。

仏語からのGoogle翻訳:ムートゥ朋子、校正:宇田薫

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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