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スイスの春 イースター、ゴールドバニーは人気者!

言わずと知れたリンツ社の人気商品「リンツゴールドバニー」がズラリと並ぶ姿は圧巻! swissinfo.ch

暗くて長い冬を終え、今年もスイスに心ときめく春がやって来た。透けるような青い空が広がるチューリヒ湖畔の我が町では、小鳥達の楽しそうなさえずりも一層高らかだ。自宅近くの散歩道では、春の訪れを知らせる真っ白なスノードロップの花が咲き、小さなクロッカスも姿を見せ始めた。周りの木々の葉は芽吹き、マグノリア(モクレン)の蕾も膨らんできた。これから間もなく咲き始めるであろう、美しい桜の季節がとても待ち遠しい。

 春の訪れと共に、今年もイースター(Easter)の季節が近づいてきた。イースターはドイツ語でオーステルン(Ostern)と呼ばれる「復活祭」で、クリスマスと共にキリスト教のメイン行事だ。基本的に、春分の日の後の最初の満月の次の日曜日に祝われるため、その年によって日付が変わる祝日である。今年のイースターは4月5日で、3日の聖金曜日、6日の復活祭月曜日と共に祝日となる。本来はキリストの復活を祝う行事なのだが、最近ではバレンタインデー等と同様に、商業化されている印象も強い。イースターの前に町を歩くと、本来の意味や、起源を忘れてしまいそうになるほど、カラフルに美しくディスプレイされた、卵やウサギの形をしたチョコがショーウィンドウを彩っているのを目にする。イースターと卵・ウサギの関係はと言うと、もともとは野ウサギが起源なのだそうだ。子沢山な野ウサギは昔から繁殖や豊穣を、卵も子孫繁栄をイメージし、それが再生の象徴となるのだと言う。

 町では大小様々、いろんな表情をしたイースターバニー達を見かける。ウサギのスイスチョコレートと言えば、一番に思い浮かぶのが、日本でも大人気の、リンツ社の金のうさぎ「リンツゴールドバニー」だ。チューリヒ郊外にはリンツの本社ビルと工場があり、直売所も併設されている。同社では常設の直売所とは別に、年に2回、期間限定の特別マーケットが開催される。クリスマス前とイースターの前になると、敷地内の大きな倉庫の一つが、臨時のチョコレート直売所へと変身する。筆者もイースターを前に賑わう、リンツの工場直売所を訪れた。

青空に映えるリンツ本社の工場 swissinfo.ch

リンツの工場までは、チューリヒ中心部のビュルクリプラッツから定期的にバスが出ており、20分程で到着する。また、駐車場も完備されている。敷地内に足を踏み入れると、トレードマークの金色のうさぎの像がちょこんと座って、お客様をお出迎え。バスを降りると、どこからともなく、チョコレートの優しく甘い香りが漂ってくる。 

リンツ本社前、同社のトレードマークである、金のうさぎがお出迎え swissinfo.ch

 OSTERMARKT(イースターマーケット)のサインに沿って数分歩くと、巨大な倉庫が目の前に現れる。過去に初めて訪れた際には、この飾り気の無い建物の中で、本当にリンツのチョコレートが販売されているのだろうか?と、恐る恐る中に入った記憶が甦る。階段を登り、一歩仮設店舗へ入ると、そこはもう別世界!広い倉庫内に、豊富な種類のチョコレートが陳列されている。ゴールドバニーなどの売れ筋の商品から、その他イースターのギフト用の商品などを中心に、様々な種類のチョコレートが並ぶ。数年前、ちょうどイースターの時期に英国からスイスを訪問した親戚の少女をこの場所に伴ったのだが、色とりどりのチョコレートの山を眺める、彼女の嬉しそうなキラキラした目が今でも忘れられない。人気商品の一部は海外へ輸出され、日本をはじめ、世界各地のスーパーや直営店等で販売されているのだが、スイス本社の期間限定特別店舗でだけ購入できる商品もあるそうだ。

倉庫の中に一歩入るとそこは別世界、色とりどりのチョコレートが棚いっぱいに並んでいる swissinfo.ch

 リンツのうさぎ型のチョコが金色の紙に包まれ、初めて販売されたのは1950年代の事。同じように赤いリボンと鈴を付けた、一見リンツのうさぎに類似しているようにも見える金のうさぎ型のチョコがオーストリアのチョコレートメーカーからも販売された。その商標と権利については、その後8年間をかけた裁判で争われ、数年前にスイスのリンツゴールドバニーが晴れて裁判に勝利し、リンツ社は独占販売権を得たという経緯も持つ。ゴールドバニーは、赤いリボンがミルクチョコ、白がホワイトチョコ、茶色はビターチョコ味で、最近では緑色のリボンを付けた、ヘーゼルナッツ味も登場した。

笑顔で試食用のチョコレートをサービスする男性スタッフ、倉庫の中は魅力的なイースター用のチョコレートでいっぱい! swissinfo.ch

 ちなみにリンツの商品に関わらず、町の至る場所で目にするウサギの形をしたチョコレートは、中が空洞になっている。ガブリと頭からかぶりつくか、下から食べてみるか、毎年うさぎのチョコが出回る季節には、日本で馴染みの深い、ひよこの形をしたお饅頭を思い浮かべてしまう。

店内にディスプレイされた、可愛い「リンツゴールドバニー」 swissinfo.ch

 リンツ社の試みは、倉庫で行われる期間限定のマーケットだけではない。チューリヒの町では、様々なプロモーションも行われる。数年前に立ち寄ったスイスの百貨店グローブス(GLOBUS)のバーンホフシュトラッセにある店舗では、イースターの前に、チョコレート作りの実演販売が行われていた。チュ―リヒ空港内のリンツではお馴染みの光景であるのだが、町でこのパフォーマンスが開催されるのは、大きなお祝い事やイベントの前だけ。白いユニフォームに身を包み、山高帽をかぶった男性は、自慢げに熱々でトロトロのチョコレートを高々と上げ、カメラにポーズを取ってくれた。サービス精神の旺盛さに、観光客や子供達も大喜びする事は間違いない。

町のデパート、グローブス(GLOBUS)のチューリヒ・バーンホフシュトラッセの店舗にて、イースター用のリンツチョコレートのプロモーションをする男性 swissinfo.ch

 また、リンツゴールドバニーが乗ったフェリーがチューリヒ湖に出現した事もあった。これは過去に数回、イースター前とイースターの週の特別な試みとして実施された。チューリヒ湖を渡る定期便の一部に金のうさぎが飾られ、イースターの日とその週末には、フェリーの中でお茶やお菓子を楽しむ遊覧船としても、数日間運行された。自宅近くのフェリーポートも、金のうさぎが乗ったフェリーの航行ルートに入っていた事を知り、好奇心いっぱいで見学に出かけた。実際には乗船するよりも、少し離れて岸を離れ行くフェリーを眺める方が、うさぎが船に乗っている様を楽しめるのかもしれないとも感じた。

期間限定で現れた、イースターバニーをディスプレイしたチューリヒ湖を渡るフェリー swissinfo.ch

 大小さまざまな可愛い金色のうさぎを眺めていると、日本でも大人気となった理由が理解できる気がする。食べてしまうのがもったいない気もするゴールドバニーチョコ。我が家ではもうしばらく、観賞用として飾り付けておく事にしよう!

スミス 香

福岡生まれの福岡育ち。都内の大学へ進学、その後就職し、以降は東京で過ごす。スイス在住11年目。現在はドイツ語圏のチューリヒ州で、日本文化をこよなく愛する英国人の夫と二人暮らし。日本・スイス・英国と3つの文化に囲まれながら、スイスでの生活は現在でもカルチャーショックを感じる日々。趣味は野球観戦、旅行、食べ歩き、美味しいワインを楽しむ事。自身では2009年より、美しいスイスの自然と季節の移り変わり、人々の生活風景を綴る、個人のブログ「スイスの街角から」をチューリヒ湖畔より更新中。

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