スイスの開発協力に人生をささげて
連邦外務省開発協力局のヴァルター・フスト局長は、4月末に15年間の任務を終える。
「開発協力局は改善を重ね強化された局に成長。この状態で後継者に渡せることに満足している」と語った。
フスト氏は退任後の5月から、アナン前国連事務総長が会長を務める「グローバル人道フォーラム ( Global Humanitarian Forum ) 」で事務局長を務める予定である。退任を前にスイスインフォのインタビューに答えた。
swissinfo : 連邦外務省開発協力局(DEZA/DDC)で仕事をされた15年間で何に1番貢献されたと思われますか?
フスト : DEZA内部の強化、改善です。言い換えれば、人道援助、東ヨーロッパとの協力、2国間、多国間の関係を使っての援助など、DEZA内部の多様な分野を強化してきました。
swissinfo : あなたは、年間10億フラン ( 約1000億円 )を超える予算を使う仕事の責任者です。力のある地位におられたと思いますが。
フスト: 私は、力があるわけでも、王者でもありません。とにかく重い責任のある仕事であることは確かで、しかし任務は連邦内閣から指示され、連邦議会が監査役を務めます。
ただ、わたしには任務を遂行する際いくらかの決定権があり、ガイドラインは忠実に守りながらも、この自由さをDEZAの目的を達成することに使いました。この意味では力がありましたが、個人的には何の力もありません。
swissinfo : スイスは国内総生産 ( GDP ) の0.4%を開発協力に使っていますが、国連の「ミレニアム開発目標」を達成するには、少なくとも0.7%使う必要があるというアメリカの意見をどう思われますか?
フスト : 国際社会は確かに0.4%は少ないといっています。しかし連邦内閣の予算配分には現実的な制限があります。
わたしとしては、連邦内閣がこれから7年の間に、開発協力の予算を3.3%増やしていくということに満足しています。ほかのさまざまな基金の予算の中では、DEZAのものがトップなのです。
swissinfo : 連邦内閣は最近、連邦経済省経済管轄局 ( seco ) 内の開発課の予算を立てましたが、さまざまな開発関係課をDEZAの下に統括するほうが意味があると思われませんか?
フスト : 国際開発協力には、1つの局が責任を持つのが良いのは当然です。なるべく経費を節約するということをいかに政府が考えるか、いわば政治的意思の問題です。
swissinfo : 2004年末にDEZAがスマトラ沖地震の津波災害の援助を行った際、DEZAが再建した村が今ゴーストタウンで誰も居なくなっていると ドイツ語圏の週刊誌「ヴェルトヴォッヘ ( Weltwoche ) 」が批判しましたが、これは事実ですか?
フスト : われわれが現地で雇っている専門調査員によると、ヴェルトヴォッヘの記者がタイのコー・プラ・トン島 ( Koh Phra Thong ) の村々を訪れた時はちょうど学校の休暇にあたり、学校は空だった。また村人は魚を求めて数カ月、海上生活する時期であったということです。
swissinfo : あなたの後継者である、マルティン・ダヒンデン氏はすばらしいマネージメント力があり、行間を読み取るような方だという評判ですが。
フスト : DEZAを動かしていくには、そうした能力が必要です。DEZAは今素晴らしい局に成長し、この状態で後継者のダヒンデン氏に渡せることをうれしく思っています。マネージャーは先を読み取る力を要求されますが、彼は新しいチャレンジに合うような政策を立てていってくれると思います。
我々は過去15年間、職務を絶えず改善し続けてきました。ダヒンデン氏も同じようにやってくれると思います。
swissinfo、 レナート・キュンツ 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳
1945年生まれ。ザンクトガレン州の大学で、政治学の修士号取得。
1975年、外交官として、ベルン、ジュネーブ、バグダッド、東京を歴任。
1984~1986年、連邦経済大臣の顧問。
1986年、連邦貿易局の局長。
1990~1993年、連邦内務省の事務総長。
1993年~2008年、連邦外務省開発協力局 ( DEZA/DDC ) 局長。
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