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スイス製の鐘がオリンピックの空にこだまする

スイス西部、ラ・ショトフォンの近郊で伝統的な手法で作られるベルがオリンピックで使われる。 Le Matin/Germond

アテネ五輪で使われるスイス製のベルがオリンピックを前に、アテネに届けられた。

このベルはスイスの伝統的手法で作られたもので、アテネ五輪の陸上トラック競技で最後の1周を知らせる時に鳴らされる鐘として使われる。

陸上トラック競技や自転車競技に選手達に最後の1周を知らせるベルがある。ベルが鳴ると、選手達は一斉にラストスパートをかける。ロス・アンゼルス、ソウル、アトランタ、シドニー大会と、オリンピックの陸上競技で重要な役割を果たすベルを鋳造したのは、スイス西部ラ・ショトフォンの近郊にあるブロンドノー鋳造会社である。注文主は、オリンピックの公式計測器メーカーであるスイスのスウォッチ社だ。 

伝統工業

 バルセロナ大会では、スウォッチ社が公式測定器メーカーから外されたため、スイス製のベルの注文はなかった。今回再びスウォッチが公式の測定器メーカーに指名されたので、スウォッチ本社の隣村に工場があるブロンドノー社に、直径17cmで、重さ2.5Kgのベル30個が注文された。実際に競技で使われるのはこのうちの3個。残りは国際オリンピック委員会(IOC)の委員に記念としてプレゼントされるという。

 ブロンドノー社のセルジュ・ヒュゲニン社長は「スポーツ界で時間の測定器やスポーツ用具がハイテク化している中で、ベルだけは昔のまま」と語る。伝統に則(のっと)り、注文された数だけ、パリ南部の石切り場から採集された砂を使って鋳型を作るので、一個一個が微妙に違うという。鋳型に流すのは銅と錫(すず)を8対2で混ぜあわせ1,200度で溶解した合金。今回のアテネ大会用のベルには、五輪のマーク、競技のロゴ、開催地アテネの地名がギリシャ語と英語で刻まれている。お値段は1個250フラン(約2万1,000円)。同社としては収益より宣伝効果のための鋳造だ。

実用よりお土産

 ブロンドノー社のメイン・ビジネスは、牛の首につけるカウベルの鋳造。しかし、酪農家の需要も段々と減ってきており、観光客のお土産用のベルの製造に活路を見い出している。

 18世紀にスイスから移民として米国に渡った、アーミッシュといわれる人たちにもベルは人気で、年間300個の注文があるという。アーミッシュはキリスト教の一派で、電気などを使わず、日常生活ではきわめて古い時代の技術しか使わないことで有名だ。「禁止されている電気を使わないで、伝統的に鋳造しているのが人気の理由だろう。祖国のスイス的なものを飾りたいという気持ちもわかる」とヒュゲニン社長。

 ブロンドノー社のベルは、シラク・フランス大統領も好きで、家に飾っている。毎年クリスマスには同大統領から、クリスマスカードが送られると自慢のヒュゲニン社長である。

スイス国際放送 マークアンドレ・ミゼレ (佐藤夕美 (さとうゆうみ)意訳)

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