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スポーツ選手に、身も心も

スター的存在のスポーツ選手は、女性ファンとの距離の置き方を学ぶ必要がある。 Reuters

スポーツ界には性犯罪がつきもの。監督と選手の間でのセクハラのほか、11月に発生した、サッカーチーム「FCトゥーン ( FC Thun ) 」の選手が未成年ファンと性交渉を持ったとされる事件もその1つだ。

「選手はファンに毅然 ( きぜん ) とした距離ある対応が求められる」。サッカーにおける性問題を研究する「スイス開発アカデミー ( Swiss Academy for Development ) 」のマリアンネ・マイヤー氏が語る。

 FCトゥーンの現役および元選手12人が、15歳の少女と性交渉を持った容疑で取調べを受けた。少女はチームのファンクラブに属していたという。

swissinfo : スポーツ界で性犯罪が多く発生しますが、ほかの世界では起こりにくいのでしょうか。 

マイヤー : 芸術や音楽と違いスポーツは、身体が中心の世界です。サッカーであれば90分のゲーム中、終始、身体と運動がフォーカスされます。

swissinfo : 感情面では、子どもと両親の関係より、監督との関係のほうが深いという研究報告もあります。よって、依存心もそれだけ大きいことになります。選手とサポーターの関係はどうでしょうか? 

マイヤー : 監督と選手の関係は、圧力や権力という面が強くあります。一方、ファンと選手との関係は、直接依存型です。女性選手の場合は、監督に良く思われたいために自分を犠牲にするということもあるでしょう。

一方、ファンと選手は依存関係にあります。力関係は間接的に作用します。女性ファンは、サッカー選手やアイスホッケー選手を男性として見ます。彼女たちは狂信的になり、想像力を駆り立てられたりします。

ティーンエージャーなら、スターである選手により密接に近づこうとします。どれほど近づけるのか試したいと思うのです。スターがファンにちょっと目を向けただけで、もっと親しくなれるための合図だと思い込んでしまいます。

swissinfo : スポーツ選手のファンに対する責任というものがありますか?

マイヤー : スポーツ選手は大人です。大人はその行動に責任があります。特に狂信的なファンになりやすい未成年者に接する場合は。

スポーツ選手は模範的な役割を担っています。他人に接する際の自分の態度が大きな影響を及ぼすのだということを知る必要があります。模範になる人は義務があります。フェアプレーは競技中もファンに対してもあります。立派な選手は、女性ファンに間違った期待を抱かせてはいけません。

swissinfo : スポーツ選手はスターとしての自覚を持てということでしょうか。

マイヤー : 進んでいるスポーツ協会などは、サッカーやアイスホッケーのプロ選手にマスコミやスポンサーとの対応を指導しています。ファンへの対応も学ばせる必要がありますね。大人の選手は、熱狂的なファンとの距離の置き方を知っているはずです。スポーツクラブも、選手たちに非のない態度をとることを要求する責任があります。

swissinfo : スポーツ界での性犯罪のうち、どのくらい明るみに出ない事件があるのでしょうか? 

マイヤー : 具体的な数字は分かりません。まず、性的な暴力という定義がはっきりしません。言葉によるセクハラから、レイプまであります。事件が発生しても、公表されにくいこともあります。犯人を守ろうとするスポーツクラブもあります。

swissinfo : 特にスポーツ選手が、若い女性にとって魅力的なのはなぜですか。

マイヤー : 例えば歌手のロビー・ウィリアムズとは違って、日常的により存在感があるのがスポーツ選手です。毎日曜日にはゲームで彼らを見ることができ、ウィークデーには練習する姿が見られます。身近にいるので近づきやすい。一方で、スターだから近づきにくい。それがティーンエージャーにとって刺激的なのです。

swissinfo : プロの世界では、スポーツ選手にかかるプレッシャーは大きくなっています。それが、異性のファンとの関係に影響していますか? 

マイヤー : 選手には最高の成績を上げるようにというプレッシャーがかかります。成績を上げるということは、英雄的行為や力と深い関係にあります。男性であることが全面に押し出されたとき、若い女性の憧れという思いにスイッチが入ります。しかし憧れは、今回のトゥーンでの事件のように、両者にとって致命的なことになりかねないのです。

swissinfo、聞き手 コリン・ブクサー 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

2007年11月13日 未成年少女と性的交渉があったという疑いで、21人の男性が警察に一時身柄を拘束された。そのうち12人がサッカーチームFCトゥーンの現役選手や元選手だった。
2007年8月 ラ・ショードフォン ( La Chaux-de-Fonds / ヌーシャテル州 ) で、2人のアイスホッケー選手が、当時14歳の少女をレイプ。執行猶予付きで、それぞれ6カ月と1年の禁固を言い渡された。

トゥーンの場合と同様、被害者はある程度同意していたと認められている。

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