ツーク州議会で銃乱射、15人死亡
27日午前10時半(スイス時間)、ツーグ州定例議会が開かれていたツーク州議事堂で警察官のベストを着た男が銃を乱射した上、手榴弾を投げ、犯人を含む15人が死亡、15人が負傷した。
警察によると、男はチューリッヒ州に住むフリードリッヒ・ライバッハー(57)。ライバッハーはツーク州議会に飛び込むとライフル銃を乱射、一度立ち去った後すぐ戻り、手榴弾を投げ込んだ。州政府閣僚3人と州議会議員11人は即死し、議員、ジャーナリストら15人が負傷うち1人は重傷だ。ツーク州では月例州議会が開かれており州政府閣僚、州議会議員ら80人が出席していた。
現場に居合わせたスイス・テレグラフ・エージェンシーのリポーター、ドミニク・ヘルタッハは「男は全フロアを駆け回り、人を狙って撃った。」と状況を語った。乱射が始まると同時に全員が床に伏せたが、撃たれた人からのするどい悲鳴があちこちから上がった。「3分間ほどですべてが終ったが、まるで処刑のようだった。議場は地の海となった。」と、州議会議員でUBSウォーバーグ勤務のハンスペーター・ハウシーア氏は述べた。
警察の発表によると、ライバッハーは2年前バスの運転手をしていたが、ツーク州公共運輸機関の職員にけがをさせたことからツーク州運輸局に告訴された。これに対し、ライバッハーは運輸局と司法局の閣僚を名誉毀損で訴えたが、最高裁を含む全司法課程で却下され、ごく最近最終的な控訴棄却を申し渡されたばかりだった。定例議会に出席していて無事だったロバート・ビシク州経済局長は、ライバッハーは彼の権利を主張する書簡とパンフレットの山を議会に投げ付けたと証言しているが、警察は州当局を「犯罪者の集団」「山賊」「アル中」などと表現した「ツーク・マフィアに対する怒りの日」を綴った書簡が残されていたとしている。凶行に用いられた銃はスイス軍のライフル銃スイス製5.6mmSIG「Sturmgewehr90」と、ピストル。また、警察が押収した議事堂近くに駐車されていた車には、多くの銃が積まれていた。
事件を知ったモーリッツ・ロイエンベルガー大統領はツークに急行し、ツーク州議事堂前に献花した。「これは単に人に対する攻撃ではなく、我々の民主的な機関に対する攻撃だ。我々は世界最高ランキングの政治家ですら自由に行き来できる国に住んでいる。このような理解できない衝撃的な事件に見舞われても、我々の自由と民主主義の価値観を維持するため、国民全員が協力しなければならない。」と大統領は語った。
事件当時ベルンの連邦議事堂では国民議会が開かれていたが、ペーター・ヘス国民議会(下院)議員(ツーク州)の呼び掛けにより1分間の黙とうが捧げられた。「ツークでこのような事件が起きて、衝撃を受けている。スイスで議会開催中の議事堂で議員が襲われるなどという事件は、未だかつて無かったのではないだろうか。」と、ヘス議員は地元で起きた惨劇に衝撃を受けている様子だ。ロイエンベルガー大統領とヘス議員は、27日夜行われたツークの教会での追悼ミサに参列した。ロイエンベルガー大統領は、3日間全ての州旗を半旗にし、来週月曜日を全国追悼の日とすると発表した。
ツーク州議会での銃乱射事件は、スイス最悪の無差別大量殺人となった。92年、エルミニョ・クリスチオネがスイス南部の3つの村落で、民家の呼び鈴を鳴らしては出て来た住人6人を射殺した事件があった。また91年5月、アルプスで実業家が家族5人を射殺した後、自殺した事件があった。
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