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気軽に行くスイスの雪山〜人々の冬のお楽しみ

フィルストへと登るロープウェーから眺める、雄大なアルプス swissinfo.ch

只今、スイスはスキーシーズンの真っただ中。毎年冬になると、1~2週間の休暇を取り雪の世界へと出かけるのが人々の習慣だ。スイスの学校では、冬休みが終わったかと思えば、今度は春休みの前にスポーツホリデーと称する休暇が始まる。この期間、大人も子供も一緒に家族みんなでスキー旅行に出かけるのが、スイスでは恒例の冬の行事だ。

 ある友人の勤務先では、今年は彼女が働く部署のほとんどの同僚達が、2月の同じ週にスキー休暇の申請をしたため、その期間は部署ごと休みになったのだそうだ。これはあくまでも極端な例ではあるものの、スイスの人々とスキーとの密接な関係を物語っているように感じられる。筆者は生まれ育ちが九州で、雪山とはほぼ無縁の子供時代を過ごした。ロンドン育ちの英国人の夫もまた、スキーとはあまり縁の無い幼少時代であったらしい。そんな我が家のように、雪の上のスポーツと馴染みの薄い家庭でも、青空の下、真っ白に輝く美しい銀世界に魅了され、しばしば冬の山へ出かける。スイスの人々にとってもそれは同様で、雪の降り積もった山へ、スキーやスノーボード以外の目的で訪れる人もいる。今回はスキーをしない人にも気軽に楽しめるスイスの雪山の魅力を、筆者が目にした光景も例に挙げながらご紹介してみよう。

交通規制がされている山上のシュトースの村までは、麓の町の駐車場に車を停めて、ケーブルカーで登る swissinfo.ch

 標高の高い雪山へは、ふもとの最寄り駅まで電車などの公共交通機関か車で行き、そこからケーブルカーやロープウェーで山の上まで登って行く。休暇を楽しむ人々は、お気に入りのスキー場や宿泊先が決まっており、毎年決まった場所へと出かけて行く事が多い。ホリデー用のヴィラを別荘として所有する人達もいる。我が家は日帰りか週末の1〜2泊で雪山を訪れる。チューリヒ湖畔の自宅から、2時間ほどで辿り着けるシュヴィーツ州にあるシュトース(Stoos)は、散策目的であれば、特別な雪の装備をしなくても気軽に出かけられる場所だ。シュトースの村へは麓の町まで車で行き、そこからケーブルカーに乗車し、山頂まで登って行く。山の上に到着すると辺り一面は白銀の世界。村の中心部へは馬ゾリも走る。もちろん徒歩でも移動可能で、標識を頼りに村まで気軽にスノーウォーキングを楽しむ事も出来る。

山頂から見渡す景色。村や湖が小さく見える swissinfo.ch
スキーコースの案内だけではなく、ウォーキング用の標識も設けられている swissinfo.ch

 青い空の下、真っ白な雪の上をハイキング。これも散策好きなスイスの人々のお馴染みの光景。場所によっては滑りにくい厚底の靴や雪用ブーツで問題なく歩けるところもあるが、コースと距離によっては滑ってしまい、危険な場合もある。本格的なスノーウォーキングを体験する際には、専用のスノーシューズを身につけて雪の上を歩くのが基本だ。

雪の上を歩くための専用シューズを履いて、スノーウォーキングにレッツゴー! swissinfo.ch
小高い丘の上に建つ教会から、雪山と村を見渡す。歩き疲れたらベンチに腰かけて休憩 swissinfo.ch

 しばし散策し、お腹が空いたら村で一休み。スイスの山岳リゾートには、情緒豊かな山小屋風レストランがある。あったかい暖炉の前で、冷えた体を暖めながら、アツアツのスープや焼きソーセージ等を味わうのもお楽しみの一つ !

 スイスには、美しくそびえるアルプスの連峰を見渡せる山頂の展望台がいくつもある。冬にも訪れる事の出来る見晴らしのよい展望台もあり、特にベルナーオーバーラント地方の山々は、春夏秋冬、四季を通じて筆者のお気に入りだ。

世界中からの観光客で賑わうグリンデルワルトの近くにある、フィルスト展望台 swissinfo.ch

 グリンデルワルトの村まで出かけたある冬の日、ロープウェーに乗って、フィルスト(First)の展望台まで登ってみた。夏にはハイキングコースとしても人気の高いフィルストは、冬になると周りがゲレンデとなり、悠々と山の斜面を滑るスキーヤー達の様子が目の前に飛び込んでくる。山のてっぺんに到着した後、屋外の展望台から雪のアルプスを眺めてみた。真っ白な雪に覆われた山の風景が圧倒されるほど美しい。展望台では屋外のカフェがオープンしており、澄みきった山の空気を吸い、熱い飲み物で体を温めながら、眼前に迫りくる雄大な大自然を満喫した。

 ある山では、急な坂をソリで滑り降りる人々に出会った。スイスのスキー場には、ソリ滑り専用のコースが設けられている場所もある。日常の生活空間にも自然がいっぱいのスイスでは、雪が積もった日には遠方まで出かける事なく、住まいの近隣の裏山や丘陵などで、ソリで滑って遊んでいる子供達を見かける。スイスでソリ遊びというと、「アルプスの少女ハイジ」のアニメの一場面で、ペーターが村の子供達とお手製のソリに乗って、滑る速さを競い合っていた冬のシーンを思い出す。知り合いの中には、子供の頃に手に入れた、使い慣れたソリを60年以上愛用している人もいる。筆者の友人の家族も小さな子供達を連れ、週末には雪山に出かけ、ソリ滑りを楽しんでいる。二人乗り用のソリもあり、幼児でも小型のイスを装着して大人と共に楽しめる。スイス人の旦那様は、ソリ滑りのコースの長さ、スタート地点からゴール地点までの標高や勾配など、詳細を調べてから出かけるのだという。ソリ滑りは子供の娯楽という感覚だけではなく、スポーツの一環として捉え、本格的に楽しんでいる大人達もいる事に興味を覚えた。

オプヴァルデン準州(OW)エンゲルベルクから、ロープウェーで登ったティトリス山(Titlis)でソリ滑りを楽しむ人々。次々と滑り降りてゆく! swissinfo.ch

 スキー場には日光浴をしに訪れる人々もいる。ある知人はかつて、家族と共に毎年スキー休暇を楽しんでいたのだが、近年ではスキーは少しお休みして、もっぱらゲレンデのそばの屋外カフェで読書にいそしんでいるのだそうだ。標高の高い雪山は晴れている事が多いので、真冬に太陽の光を浴びるのにもうってつけの場所なのだ。スキーを卒業した大人世代の人々の中には、他にも同じような楽しみ方をしている人がいるらしい。これもまた、人それぞれの雪山の楽しみ方だ。

 颯爽と雪山を滑るスキーヤーやスノーボーダー達の姿が、スイスの冬の大きなイメージである事は確かなのだが、それ以外にも、雪に囲まれ思い思いの生活を満喫する姿が、スイスの人々の冬の生活風景なのだと感じる。

スミス 香

福岡生まれの福岡育ち。都内の大学へ進学、その後就職し、以降は東京で過ごす。スイス在住12年目。最初の2年間をバーゼルで過ごし、その後は転居して、現在は同じドイツ語圏のチューリヒ州で、日本文化をこよなく愛する英国人の夫と二人暮らし。日本・スイス・英国と3つの文化に囲まれながら、スイスでの生活は現在でもカルチャーショックを感じる日々。趣味は野球観戦、旅行、食べ歩き、美味しいワインを楽しむ事。自身では2009年より、美しいスイスの自然と季節の移り変わり、人々の生活風景を綴る、個人のブログ「スイスの街角から」をチューリヒ湖畔より更新中。


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