ホモセクシャル 登録ラッシュにならず
スイスでは、2007年1月からホモセクシャルのパートナー登録が認められて1年になる。ただし実際登録をしたカップルは2000組にとどまっている。特に女性は4分の1と少なかった。
チューリヒ州はホモセクシャルのカップルが多いこともあり、700組が登録したが、登録までのハードルはいまでも高いようだ。
「ホモセクシャルのパートナー登録により、法的な身分が変わるので、異性同士で結婚している人と同様、職場にも届け出ることを忘れてはいけません」
と「西スイス・レズビアン協会 ( LOS ) 」のシルヴィー・ベル氏は指摘する。
登録が差別につながる
男性が優位に立つ職場において、レズビアンの女性はパートナー登録によりさらに差別されると思うとベル氏はみる。レズビアンにとって登録により法的な保障を受けられる継承権や遺産相続権などにはあまり興味がない上、男性より収入も少ないことが、登録件数の少なさの理由だという。
そもそもレズビアンにとって、問題は別のところにあると指摘するのはヴァレー/ヴァリス州のホモセクシャル協会「アルパガイ ( Alpagai ) 」のバルバラ・ランテマン氏。
「例えば、パートナー登録をしても、養子縁組の権利はない」
同性関係者と異性関係者の平等化のためのパートナー登録だが、同性同士のパートナーの場合は養子縁組を認めない法律ができたことで、さらなる差別を生んだというのだ。
レズビアンのパートナー登録は少ないが、男性でも女性でもそもそも登録が少ないのも事実。だが、時がたてば、年間4万組が申請すると予想されている。ホモセクシャルは全人口の5%から10%という統計からすると、今後、登録しない人は比較的少ないと見込まれる。
カミングアウトが必須
「ホモセクシャルは、いまだに法的に差別されている。周囲に自分がホモセクシャルであると公表しカミングアウトした人は少数」
と言うのはホモセクシャル組織「ピンク・クロス ( Pink Cross ) 」のジャン・ポール・ギサン氏だ。登録には必ずカミングアウトが必要となる。長い間ホモセクシャルは罪として見られ続け、現在でもそのように考える人がいる。人をののしるときにホモセクシャルが引用されたりするように、現代でも否定的考え方は広くあるとギサン氏はみる。
一方、長年差別され続けてきた年配より、若い世代は、年金、遺産相続、病院での見舞い権利などに魅力を感じないとギサン氏はみる。登録は結婚と同様に、家族を形成することだ。よって、ホモセクシャルでも ( 異性のパートナーとの間に ) 子どもが生まれたとき、初めてパートナー登録をすることを考えたりするとみられる。
「ホモセクシャルに対する偏見の少ない若い世代は、パートナー登録にあまり興味がないのでは。多くの場合、登録するとパートナーと別れたとき、裁判沙汰になるのを心配するのではないか」
と分析するのは「スイス戸籍関連協会」のベアトリス・ランケッティ氏だ。
一点の曇りもない愛
登録することがカミングアウトにつながるため勇気がいる上、結婚と同様、税金面でも有利になるわけではない。結婚した人やパートナー登録をした人が同棲者より優遇されるようであれば、登録する人も増えるとギサン氏はみる。
ヴヴェイ市の戸籍課によると、ホモセクシャルですでに登録を済ませた人は、長年同棲生活をしてきた人が多い。同課のピエール・シュナイダー氏は
「登録に来る同性カップルの姿を見るにつけ、この登録が意味があることだと実感します」
と語る。シュナイダー氏の同僚カタリン・バスティアン氏も
「登録にちなんだセレモニーも、ユニークです。異性同士のカップルと違い、2人の愛に一点の曇りも無いように見えます」
偽装結婚ではないかと疑うこともある異性同士の結婚とは、まったく違うのだと言う。
swissinfo、ファビエン・ギゼル ( SDA/ATS ) 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳
2005年5月の国民投票で、ホモセクシャルのパートナー登録が58%の支持を得、承認され、2007年1月から登録が可能になった。
異性同士の婚姻法とほぼ同じだが、養子縁組や不妊治療をすることは禁じられている。
また、同じ姓を名乗ることや同等の市民権を得ることはできず、外国人のパートナーのスイス国籍取得の簡易化措置は受けられない。
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