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ラマダンに備えるチューリヒのホテル

Keystone

顧客に細心の注意を払うことで有名なチューリヒのホテルは、神聖なるラマダンの最中に滞在するイスラム教徒の宿泊客を心地よくもてなすための研修を受けた。

ここ4年間で、アラブ諸国からの観光客の数は増加したが、今年2009年のラマダンは、夏休みシーズンピークの8月にあたる。ホテル側は、断食をし気前良く支払う宿泊客を心地よくもてなそうと必死だ。

ラマダン時の対応

 チューリヒ観光局は、さまざまなチューリヒ市のイスラム教団体と共同で、5月に一連のワークショップを開いた。その際の重要事項は、日の出から日の入りまでの間は一切飲食せず、夜間になって特別に調理した食事を希望する宿泊客にどう対処するかということだ。

 イスラム教協会チューリヒ支部の副会長であるハサン・アボ・ユッセフ氏は、チューリヒのホテルはゲストの希望に沿うために、速やかに学習していると語る。

 「ホテルのマネジャーたちは、イスラム教徒の断食の時間帯と食事ができる時間帯、またその際の食事の内容について熟知しなければなりません。彼らは日没後に朝食を取り、そのほかの食事は日の出前に取ります」

ジュネーブから観光客流入

 食事の規制は、断食が終わった時間になくなるわけではない。イスラム教徒は、断食後も、イスラム教の法に基づいて決められた「 ハラール・ミート」だけを食べる。彼らは、肉食動物、雑食性動物の肉を食べることは許されず、イスラム法に基づいて屠殺 ( とさつ ) された肉だけを食べることができる。

 チューリヒ観光局は彼らの要望に添って、ラマダンの際に必要な食事をサービスできるホテルのリストを作成した。また、これらのホテルは、市内にあるモスクの場所を心得、ホテル内では祈りの際の部屋や絨毯 ( じゅうたん )、またアラビア語の新聞まで提供するといった具合だ。

 広報担当のマウルス・ラウバー氏曰く、過去4年間にアラブ諸国からの滞在者は3万人から6万2000人に増加したという。こうした観光客はこれまでずっとジュネーブに滞在していたが、近年の宣伝効果によって、チューリヒにも滞在するようになった。

 「アラブ諸国からの訪問者は、チューリヒは文化的娯楽が数多くあり、ナイトライフやショッピングが楽しめる都会であると認識するようになりました。そして口コミによって需要が増したので、ホテル側も彼らの要望に応えようとするようになりました」
 とラウバー氏は語る。

贅沢好きな観光客

 このような流れになった理由は、オイルマネーで潤い、景気が後退しているこの時期でも豊かな国々から来た人々が気前よく消費することにある。ラウバー氏の話によると、アラブ諸国からの観光客は団体で旅行し、1日1人平均500フラン ( 約4万5000円 ) を使うという。

 「こういった状況からして、ホテル側は、夜勤の従業員を雇い、さらに彼らをもてなすための設備をわざわざ整えてでもビジネスの価値があると判断したのです」 

 これらのサービスは、ラマダンの月がスイスの休暇期間ピーク時と一致する向こう6年間は提供できるように準備が整っている。イスラム教のカレンダーとキリスト教のカレンダーは同じではないので、ラマダンが始まる時期は毎年約1週間ずつ早まるとスイスのホテル側は認識している。 

新しい顧客

 「ジュネーブなどフランス語圏内のホテルは、山のリゾート地に滞在してラマダンを迎える宿泊客の扱いに慣れています。しかし、チューリヒ、バーゼル、ルツェルンといった、ドイツ語圏の都市にはまだ完全にラマダンを過ごす宿泊客に対応できる体制が整っていません」
 とアボ・ユッセフ氏は語る。

 ラウバー氏は、7、8年前はまだホテル側もラマダンをスイスで迎える宿泊客へのサービスの必要性を感じていなかったようだが、最近のアラブ諸国からの観光客の増加はその姿勢を大きく変えたと主張する。
「ホテル側は、新しい友人をがっかりさせたくはありませんから」
 とラウバー氏は語った。

マシュー・アレン、チューリヒにて、swissinfo.ch 
( 英語からの翻訳 白崎泰子 )

ラマダンはイスラム教徒にとって、聖典コーランが初めて啓示された最も宗教的で重要な月である。イスラム教カレンダーによると9カ月目にあたり、今年2009年は、キリスト教カレンダーの8月22日から始まる。

ほとんどのイスラム教徒は、断食を行う。それはイスラム教5行のうちの4つ目に当たる。ラマダンは精神性を高め、善意ある行為をし、祈りと黙想の中で時を過ごすためとされる。

ラマダンの最中は多くのイスラム教徒たちが夜明け前にたくさんの食事「スフール ( suhoor )」を取る。そして、日中は預言者ムハンマドの例に従って断食をし、日没後にナツメヤシの実と水を取り、夜に食事を始める。

欲望を絶ち、気高い精神を養う断食の月、ラマダンは「イード・アル・フィトル祭 ( Eid-ul-Fitr-Fest ) 」で終わる。その際にイスラム教徒は、祈りのためにイスラム教の寺院であるモスクを訪れ、家族やイスラム教区民と共に集う。

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