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世界の人権状況が分かるネット検索機能

世界の数多い人権侵害状況を追っていくのは専門家にも難しい Keystone

12月21日から誰でも世界の人権状況が見られるデータベースの検索サイト「世界人権インデックス」 www.universalhumanrightsindex.org が使えるようになった。このサイトはスイス政府の主導の下でベルン大学がモントリオール大学と3年間に渡って立ち上げたもので45万フラン ( 約4300万円 ) かかった。

データベースには国連の主要な7つの人権条約に関する批准状況、資料文献や特別報告官などの分析、勧告がテーマや国別に即時に見られる。どの国がどれほど人権状況が向上したかが一目で分るようにするのが狙いだ。

 このプロジェクトを支援したスイスのブレーズ・ゴデ国連大使は「この分野での不透明な部分と戦うため」とジュネーブの会見で発表した。

 今年の6月から、国連人権委員会を解消して総会の傘下に格上げされて設置された国連人権理事会。その原案を提唱したのがベルン大学のヴァルター・ケーリン法学教授だ。同教授が国連改革の一環として「人権問題の透明化」を提唱してきたがそれを実現したのがこのサイトだ。1月からは国連人権高等弁務官事務所 ( OHCHR ) にサイトの運営が引き渡される予定だ。

専門家にも複雑な人権問題

 自らも国内避難民に関する国連事務総長代表であるケーリン教授は「国際条約を監視する各委員会のメンバーでも必要な資料を見つけるのが難しく、例えば2年前の勧告と矛盾した結論を出すといったケースがあった」と話す。この「道具」は委員会のメンバーだけでなく、国際機関、各国政府代表、NGOに働く人やジャーナリストなどを対象に作られた。

例えばどう使う?

 スイスを例にとってみよう。「例えば、国別でスイスの項目にいくとスイスの弱点、人種差別と男女平等問題がすぐに見えてきます」と説明。なるほど、スイスをクリックすると、勧告がもっとも多いのは女性に関する差別 ( 36件 ) と人種差別 ( 53件 ) に関するものと直ちに見えてくる。

 日本はどうだろうか。驚くことに、国際労働機関 ( ILO ) の重要な条約の一つである「強制労働の廃止に関する条約」や「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約」に批准していないことなどが一見して分かる。留保 ( Reservations ) の項目をみると「日本は差別待遇を罰する国内法の整備を直ちに行うように」との勧告が目に飛び込む。確かに分かりやすくできている。

あくまでも指標

 しかし、この世界人権インデックスはあくまでも検索機能であり、人権状況のランキングを打ち出すといったものではない。資料数が多いからといって人権状況に積極的に取り組んでいるということでもなく ( 例、中国475件 ) 少ない国は国連が興味を示していない国という訳でもない。主な国際人権条約に批准していなかったり、国内危機などに直面している国は極端に資料が少ない ( 例、イラク36件 )
 
 ケーリン教授は「この『道具』は使う人それぞれの分析が必要で、数字などは慎重に扱う必要がある」と言う。


swissinfo、 屋山明乃 ( ややまあけの )

ー国連の主要な7つの人権条約を監視する委員会はー

人種差別撤廃条約に基づく人種差別撤廃委員会 ( Committee on the Elimination of Racial Discrimination )

社会的、経済的及び文化的権利に関する国際規約に基づくA規約人権委員会 ( Committee on Economic, Social and Cultural Rights )

市民的及び政治的権利に関する国際規約に基づくB規約人権委員会 ( Human Rights Committee )

女性差別撤廃条約に基づく女性差別撤廃委員会 ( Committee on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women )

拷問等禁止条約に基づく拷問禁止委員会 ( Committee against Torture )

児童の権利条約に基づく児童の権利委員会 ( Committee on the Rights of the Child )

移住労働者条約に基づく移住労働者委員会( Committee on Migrant Workers )

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