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世界経済フォーラムでバイオテロ対策討論会

クシュパン経済相(右)とヴァセッラ・ノバルティスCEO Keystone

ニューヨークで開催中の第32回世界経済フォーラム年次総会で、スイスと米国共催の生物化学テロ対策討論会が3日行われた。

米国は昨年9月11日の世界貿易センタービルと米国防総省への自爆テロに続き、炭疽菌によるバイオテロで5人の犠牲者を出した。炭疽菌の出所など事件の詳細は未だ不明だが、国際テロ組織の関与は捜査上から消えつつある。世界経済フォーラム(WEF)では3日、スイス米国合同経済委員会(2000年ダボス会議開催中に設立)による生物化学テロ対策討論会が行われ、パスカル・クシュパン・スイス経済相、トミー・トンプソン米保健長官、ダニエル・ヴァセッラ・ノバルティスCEOらが出席した。

トンプソン米保健長官は、米国は炭疽菌テロがいつかまた起き得ると判断し、バイオテロ対策予算の増額を決定したという。米政府はワクチン研究費を18億ドル増額し、今年のバイオテロ対策予算の総額は昨年の10倍となった。さらに、天然痘ワクチンの備蓄を進め、年末までには米国内の男女、子供全員の2億8、600万人分の摂取量を確保できるとしている。

各国政府がバイオテロの脅威を真剣にとらえ始めたのは、10年ほど前からだ。転機となったのは1995年3月、オウム真理教が東京の地下鉄で毒ガス・サリンを撒き12人が死亡、何百人もが重軽傷を負った「地下鉄サリン事件」だった。化学テロの脅威に世界は震撼し、国際協力態勢の強化を求める声が高まった。トンプソン長官によると、東京の経験で特記すべきことは、オウム真理教が国際的に活動していたにも関わらず教団についてほとんど何も知られていなかったことだ。が、地下鉄サリン事件から導かれた答えは、米国は反対しているが生物兵器条約の強化の必要性だ。スイス国防省化学生物研究所のベルンハルト・ブルンナー所長は、国際条約の交渉は大変困難だという。「化学兵器に関しては検証プロセスを伴った条約が整備されている。が、生物兵器に関しては条約はあるものの検証システムがなく、ほとんど役にたたない。それゆえ、我々は検証に関する追加条項制定のためスイスで集まっている。ブッシュ政権は生物兵器条約を拒否を表明してきたが、炭疽菌事件の後では態度を変えるのではないかと期待している。」とブルンナー所長は述べた。

また、化学薬品企業からの代表の1人、ノバルティスのヴァセッラCEOは、一部の企業からは政府規制に反対する声が出ているが、「(業界の)自己規制が有効ならば、それ以上の手段は必要ない。が、私は政府の規制に反対しない。政府は国民の安全を保障し、あらゆる必要な対策を取る義務があるのだから。」と発言した。ヴァセッラ氏は、化学・薬品業界はバイオテロの脅威を真剣に受けとめ、製品や技術の流用がないかを確認し、テロの予防や解決に貢献していると述べた。

が、バイオテの産物には良いこともないわけではない。病気に対する新しいワクチンや治療法の開発が進めば、先進国だけでなく途上国など世界中の人々を救済することになる。

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