偽装結婚を困難に
この先スイス人との結婚を認められるのは、スイスに合法的に滞在している外国人のみ。こんな法改正が求められている。これは増える偽装結婚を食い止めるための方策だ。
この案は、中道派政党のほか市町村の戸籍役場からも支持されている。反対を表明しているのは社会民主党や緑の党だ。
スイスに保護を求めてやってくる人々は、現在、難民申請を却下されても、戸籍役場に婚姻や同性同士の登録制パートナーシップを届け出ればスイスを出なくてすむ。国民党 ( SVP/UDC ) のザンクトガレン州国民議会議員トーニ・ブルンナー氏が提案した民法およびパートナーシップ法改正は、このような逃げ道を塞ぐためのものだ。
よりよい協力体制
改正が行われれば、それ以後結婚できるのは、合法的に滞在していることを証明できる人のみ。だが、国民党にはこれだけでは不十分とみえ、この問題を本当に解決するため、すでに別の対策も要求している。
キリスト教民主党 ( CVP/PDC ) は、滞在を合法的にするための結婚がとにかく減少すればよいと望む。
急進民主党 ( FDP/PRD ) もこの提案を歓迎しているが、婚姻の権利と個人や家庭生活を尊ぶ権利は保持されるべきという考えだ。
ブルンナー氏また、結婚しようとしている人の不法滞在が発覚した場合、戸籍役場の職員は当局に連絡することとしている。この案は、当局との協力体制がようやく改善されるとしてスイス戸籍役場協会からも支持されている。
そして、州もまた偽装結婚を防ぐことができると期待を寄せる。ただし、連邦政府から偽装結婚の調査を依頼されるため、その費用に対する補償を政府に要求する意向だ。
懐疑的な左派
これに対して懐疑的な意見を持つのが左派だ。社会民主党 ( SP/PS ) と緑の党 ( Grün/Les Verts ) は、この案が通れば婚姻や家庭に対する基本的権利が制限されるとみている。さらに、このような規則が国内外の権利の原理と相容れるどうかも疑問だ。
この両政党はまた、ルツェルン州キリスト教民主党のルエディ・ルステンベルガー氏による提案に対しても慎重な態度を見せている。この案は公民権法を変更し、結婚によって得たスイスの国籍の無効化期限を5年から8年に延ばそうとするもの。
社会民主党と緑の党は法的安定性が脅かされるとし、悪用ケースの数が少ないことから期限の延長は必要ないと考える。
しかし、州の監督当局はこの案に賛成だ。さらに有効なのは、連邦司法警察省移民局 ( BFM/ODM ) の担当セクションの人員を増やすことだと主張する。
ルステンベルガー氏の案は戸籍役場の職員や中道派政党の支持も得ている。しかし、「国籍の剥奪を監視する期間には10年が必要」という国民党には少し物足りなさそうだ。
swissinfo、外電
- 2006年にスイスで結婚したカップルは4万300組。2005年より200組多い。
- 離婚数も増加しており、2006年には前年より100組多い2万1400組が離婚。
- 婚姻数はここ数年およそ4万組で安定しているが、離婚数は大幅に増加。
- 1970年の離婚率は約12%、現在は40%を上回る。
- 偽装結婚の数ははっきりしていない。
- 当局は年間500から1000組だと推定している。
- 連邦裁判所は、偽装結婚に関する上訴を年間およそ100件取り扱っている。
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