スイスでは、義務教育修了という学歴だけで就職するのは以前と比べて難しくなっている。学業が苦手だった生徒が、就職先が見つからずに生活保護の世話にならざるをえないケースも多い。特に低学力とされる中学生の就職活動を支援するため、「リフト(Lift)」というプロジェクトが10年前に立ち上げられた。(SRF/swissinfo.ch)
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中学生のエズラさんは、いわゆる「できる生徒」ではない。中学卒業後は職業訓練コースへの進学を希望している。そのための職業訓練先探しを有利にしようと、中学生のための就職活動支援プロジェクト「リフト」に参加を申し込んだ。今は、毎週土曜日に3時間、無給で美容院の手伝いをしている。これによって職業体験ができると同時に、履歴書に新たな経歴を付け加えることができるのだ。
「リフト」プロジェクトは発足から10年を迎える。現在スイス全国で2500社の中小企業が協力しており、その数は年々増えている。「リフト」代表のガブリエラ・ヴァルザーさんは、早い段階で自分の実用的なスキルを発見した子どもは勉強にもやる気を出すと言う。学ぶ目的に目覚めるからだ。
関係当局は、義務教育修了後の進学率を、職業訓練コースを含め全体の95%に増やすという目標を設定した。若者により多くの就職のチャンスを与えるためだ。この目標は、スイス生まれの子どもたちについてはすでに達成済みだ。学校教育の一部を国外で受けた移民系の子どもたちに関しても改善はされたが、非進学組の割合がまだ12%となっている。
スイス教師協会(LCH)会長のベアート・ツェンプ氏によると、このプロジェクトはコストはかかるが、長期的に見るとその高いコストに見合うだけの価値を持つ。それは若者がこの先約40年のあいだ社会人として経済的に自立するための支援であり、成功すれば社会保障制度の負担を軽減することにもつながると指摘する。
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職業訓練制度(見習い制度)は、スイスの職業制度を支える屋台骨の一部だ。しかし最近はそれよりも、いろいろな可能性を残しておくために進学するという選択肢に魅力を感じる若者も多い。可能性が多すぎてなかなか決断を下せない「ジェネレーション・メイビー(もしかして世代)」と呼ばれる、今の若者たちの声を聞いてみよう。
ステファン・クルッカーさんは、14〜15歳の若者の気持ちをよく理解している。元キャリアカウンセラーで、現在は他のキャリアカウンセラーを監督する立場にあるクルッカーさんは、学校やベルンの職業・教育・キャリア相談センターで、将来に悩む若者を何千人も見てきた。
通常、義務教育の終わりに、生徒たちは選択を迫られる。進学の意志があり成績が足りている者は高校に進み、他の者は職業訓練の道に進む。多くの場合、前者の道は大学へ続き、後者の道を行けば実社会に出るが、その後専門系の学校に行くことも可能だ。クルッカーさんによると、社会の要求や期待が変化するにつれて、スイスの若者は昔より多くのことを考慮しなければならなくなっている。
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スイス国内では、何十万人もの人々が読み書きや計算能力に問題を抱えている。義務教育を終えたにもかかわらずだ。この問題は以前からあったが、いまだタブー視されている。8日の国際識字デーにちなみ、スイス国内の関係団体が7日、こうした問題を広く周知するための全国的なキャンペーンを始動させた。
キャンペーンは「Einfach Besser!(とにかく、良くなろう!)」。スイス識字全国組織のクリスティアン・マーグ代表は「キャンペーンを通じて、私たちは『基本的な言語能力』というテーマを、一般市民だけでなく、その問題を抱えている本人に呼びかけたい」と話す。キャンペーンは同組織と教育に関する全国会議が一緒に立ち上げた。
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