国際サッカー連盟FIFA、NGOになりたい?
国際サッカー連盟(FIFA)が、スイスでの法的な地位を赤十字国際委員会(ICRC)や国連のような国際NGO(非政府組織)に「格上げ」しようとしている。
FIFAの本部はチューリヒにある。現在は非営利団体とみなされ、税制上の控除を受けている。法人運営も会社に比べれば広範内な裁量がある。そのFIFAが、スイスの法律の下で特権を享受する国際機関の仲間入りをしたいという。
スイス政府は受入国法外部リンクに基づき、一定の基準を満たした団体に様々な優遇措置を付している。例えば「訴訟手続からの免除」、「スイスへの入国および居住要件の免除」、より大型の減税措置などがこれに当たる。しかし、こうした「特典」は自動的に付与されるわけではなく、組織の性質に応じてケースバイケースで判断される。
FIFAはフランス語圏のスイス公共放送外部リンク(RTS)に対し、NGOを目指すのは税金面が主な理由ではないと強調した。外国人職員を採用する場合の規制を取り払うのが目的だという。
スイス政府は今年、欧州連合(EU)圏外出身の労働者に支給する就労ビザの発行上限を、前年より1千件多い8500人分に引き上げた。しかし多くの国際団体は、有能な外国人の人材を採用するにはまだ不十分だと訴える。
国際オリンピック委員会外部リンク(IOC)は2000年以来、スイス連邦政府の「特権、免責あるいは地位において合意が交わされたその他の国際機関外部リンク」に入っている。
1998~2002年にFIFA事務総長を務めたミシェル・ゼン・ルフィネン氏はRTSに対し、在職期間中に正式な申請は出さなかったものの、FIFA内ではこの件が「しばらくの間」議題に挙がっていたと語った。
メディアの報道によると、イニシアチブを取ったのはFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長だったとみられる。同会長は2017年の就任直後、イグナツィオ・カシス連邦外務相にこの問題を提起した。
可能性はかなりある。FIFAはここ最近、汚職事件や捜査、重要人物の有罪判決などで大いに揺れた。一部の捜査はスイス国内外で続いている。
世界経済フォーラム(WEF)は2015年、「スイスにとって重要な役割を世界規模で果たした。各国、国際機関において認知度を高めた」などとして、スイスの「NGOクラブ」に仲間入りを果たした。それに対して、FIFAが世界的な名声を得たのは、まぎれもなく汚職問題だ。
インファンティーノ会長は今月、会長に再任された際のスピーチで、FIFAは汚職問題とは決別したと話した。同氏は「有毒で、犯罪組織同然の状態から、本来あるべき姿に変わった。FIFAには腐敗の余地はもうない」と強調した。
しかし、そんなFIFAを今NGOに「格上げ」し、世界保健機関(WHO)などそうそうたる国際機関と肩を並べさせるのは、スイス政府にとってあまり得策ではないのかもしれない。
スイス民主党のセドリック・ヴェアムートゥ外部リンク氏は、NGOに格上げさせるには、FIFAはあまりにも「利潤追求型」だと指摘する。ヴェアムートゥ氏はRTSに「スポーツは文化的資産だ。 FIFAは、この文化財のを私物化してしまった」と述べた。
かつてFIFA批判の先鋒に立っていた国民党のロランド・ビュッヒェル氏は、以前より柔和なトーンだ。「EU圏外の人材を採用したいからNGOに、という理由だけなら理解できる。だからといって、外交パスポートや減税措置のような特権が与えられるべきではない」と話す。
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