スイスの年金制度は賦課方式と積立方式の混合型。その目的は定年退職者の経済的自立を保障することだ。
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スイスの年金制度は3本の柱から成る。
老齢・遺族年金(AHV/AVS)
第1の柱は、日本の国民年金に当たる老齢・遺族年金だ。スイスで働く、あるいはスイスに居住する全ての成人に加入が義務付けられている。雇用主も加入しなければならない。年金原資の約3割は各種の連邦税で賄われている。
老齢・遺族年金は現役世代が今の高齢者の年金を支払う賦課方式だ。年金の受給開始年齢は本人も遺族(遺児、寡婦、寡夫)も男性65歳、女性64歳(段階的に65歳に引き上げ)だ。
受給額は保険料の納付期間と収入によって異なる。最低限の生活を保障する額とされている。それでも最低限の生活に足りない場合、定年退職者は追加給付外部リンクを申請できる。追加給付は国費で賄われている。
社会の高齢化が進み、老齢・遺族年金の資金確保が大きな課題だ。年金改革案は過去に何度も否決されてきたが、2022年には女性の段階的定年引き上げ(64歳から65歳)、2024年には年間受給額の1カ月分増額(13カ月目の年金)が国民投票で可決された。
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職業年金(BVG/LPP)
第2の柱は職業年金だ。保険料は雇用主と従業員が負担し、少なくとも雇用主が半分以上を拠出する。一定額以上の収入がある全ての被雇用者は労使の代表者が運営する年金基金に加入しなければならない。
職業年金は積立方式だ。被保険者は年金基金に保険料を支払い、年金基金は積立金を運用して利益を上げる。定年退職時には、積立金から月毎、あるいは一括で年金が支払われる。つまり、被保険者は自身が将来受け取る給付のために貯蓄する。
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職業年金は老齢・遺族年金と合わせ、退職前収入の6割を確保することを目指している。
個人年金
第3の柱である個人年金は貯蓄口座のような仕組みだ。一定額を個人口座に払い込み、老後の資金に充てる。預金は定年まで引き出せず、税控除の対象になる。
個人年金への加入は任意。銀行預金や生命保険の形で行う。元本は運用され、定年時に利息と共に引き出せる場合もある。
個人年金は、比較的収入が多い人が定年後により高い生活水準を求めて収入の一部を蓄えるものだ。
仏語からの翻訳:江藤真理
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スイスの連邦議会は16日、女性の定年年齢の引き上げや老齢年金支給額の微増を含む年金制度改革関連法案を可決した。
公的年金の財政基盤の強化を目的にした同法案は、今年後半に行われる国民投票で有権者からの最終判断を受ける。
年金制度改革関連法案が国民投票で可決された場合、女性の定年年齢は現在の64歳から男性と同じ65歳に引き上げられる。また、老齢年金(日本の国民年金に相当)では、給料からの差し引き額が微増され、年金支給額が月70フラン(約7900円)増額される。
一方、企業年金ではいわゆる年金転換算定率が6.8%から6%に引き下げられ、年金支給額が減額される。
この法案の目的は、公的年金である老齢・遺族年金制度の財政基盤を安定させることだ。この制度はスイスの社会保障における3本の柱の一つを成している。
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スイスの年金制度改革をめぐる議会の議論、最終段階に突入
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スイスの年金受給者数は年々増え続け、老齢・遺族年金(AHV/AVS)制度を圧迫している。1世紀かけて築き上げられてきた社会保障制度を改正する試みは、過去20年間、全て失敗に終わってきた。だが国会で先ごろ、全州議会(上院)に続き国民議会(下院)が、改革案の一つである女性の年金支給開始年齢引き上げを可決したことにより、その歴史が変わろうとしている。
そろそろベビーブーム世代が定年を迎える時が訪れ、年金の支給額は急増する。そうすれば、年金の財源を提供する「現役」の人口層への経済的負担が増す。50年前は、年金保険料を支払う就労者10人で2人の年金受給者を支えていた。それが今では10人で3人分の年金を負担しなければならない状況にあり、2030年には4人に増えると予測されている。
スイスの年金制度を支える3本の柱のうち、加入が義務付けられている第1の柱にあたる老齢・遺族年金(日本の国民年金にあたる)では年間約80億フラン(約8400億円)の財政赤字が予測されている。また、就労者の加入が義務付けられている第2の柱、企業年金制度も、平均寿命の延びに加え、企業年金積立金の運用収益が下がり続けていることで影響を受けるとみられる。
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