日本の被災者に勇気を届け、ゴール!
「日本の被災者のためにもこの試合は絶対負けられないと思った」とジュネーブサッカーチーム「FCセルベット ( FC Servette ) 」のキャプテンは3月20日、試合終了後にこう語った。
スイスサッカーチーム第2リーグに属するFCセルベットはこの日、ジュラ州の「SRドゥレモン ( SR Delémont ) 」と対戦。しかし、これはいつもの試合とは違った。東日本大震災の犠牲者に対する追悼と被災者に対する支援の意味が込められていたからだ。
頑張ってほしい
「東日本大震災の惨状にショックを受けた。チームの調子が悪く落ち込んでいたが、そんなことは本当に大したことではなくなった。試合をすることで募金に貢献できたらと思った」
とキャプテンのリアネル・ピジナット氏 ( 33歳 ) は話した。
試合の結果は4対1の大勝利。
「良い試合ができた。この勝利の喜びが『頑張ってほしい』というメッセージとなり日本の被災者のもとに届いたらこれほどうれしいことはない」
と続ける。特にテレビで見た観た被災者の忍耐強く穏やかな表情に感動したという。
開会式ではFCセルベットのマジッド・ビッシャー会長と菅沼健一在ジュネーブ出張駐在館事務所代表のあいさつに続き、1分間の黙とうが東日本大震災の犠牲者に捧げられた。その後、喪章の代わりに日本の旗を腕に着けた選手全員が元気にスタートを切った。招待を受けた日本人約350人は、ゴールが決まるごとに手にした日の丸を振り応援。
また、入場者には全員に赤十字社の募金振り込み先が記入された紙が配られ、試合中にはスイス人観客席を中心にボランティアの若者約8人が募金箱を持って回った。多くのスイス人がコインの代わりにお札を入れたという。
グリーンエネルギーで世界の手本に
今回の「募金サッカー試合」はビッシャー会長を中心にした企画だった。かつて存在さえ危ぶまれ、ドン底にあったFCセルベットを救ったビッシャー会長。今回も日本を支援するために何かしたいと思ったのだという。
現在32の企業の集合体「32グループ ( 32Group) 」の最高経営責任者 ( CEO ) でもあるビッシャー会長は、若いときにバルブの輸入など、仕事の関係で何度も日本に行き、日本人から多くのことを学んだ。日本人は働き者で正直だ。それに我慢強い。こうした性格の強さは世界の国に大きなメッセージとなって伝わっていると語る。
今回も
「なぜ災害はいつも日本を襲うのか分からないが、そうした災害を ( 運命として ) 受け止め、それから起き上がる強さを日本人は持っている。そうした日本人を助けたい。日本人は1人ではない。がんばってくれというメッセージを伝えたかった」
と言う。また、もし海外に移住しなければならない状況がきたとしても世界中が快く受け入れてくれるだろうと付け加える。
さらに現在の被曝( ひばく ) の脅威に対しても
「心配しなくてもいい。日本人は内に強い力を持っている。必ず今の状態から立ち直れる。それに悪いことの裏には必ず良いことの芽が潜んでいる。それは核エネルギーを放棄して、グリーンなエネルギーに転換することだ」
と力づける。人類の存続を脅かすこのエネルギーの利用に対しドイツもスイスも直ちに猶予期限を設けたが、日本も必ずやそれを行い、世界の手本になってくれる確信があると励ます。
外国にいる日本人が頑張らなければ
「今日は忘れられない一日になった」と語るのはジュネーブ日本倶楽部 (JCG ) 会長アベル・美穂氏だ。FCセルベットから500人分の招待券と募金の話が来た後にオーガナイズを受け持ったのは同クラブだった。
「月曜日 ( 14日 ) に電話があり時間はわずかしかなかった。しかしスイス人は日本人に似て勤勉で物事をきちんとやる国民性。日本人が好きだし。被災者を助けたいという気持ちで一丸となり、全てがうまく運んだ」
と言う。
同クラブは、別に今回独自に1万フラン ( 約89万円 ) を準備金から寄付する。さらにまたジュネーブのレストランなどに募金箱を設置する。そしてその動機を次のように語った。
「テレビの画面の前で泣いたスイスに住む日本人は多い。でも本国が元気がないときに外国にいる日本人までしょんぼりしていては仕方がない。今こそ元気を出して被災者を励まさなければと思い、理事会で直ちにこうしたことを決めた」
3月25日 ( 金 )
ツーク ( Zug ) 市アルト劇場 ( Theater Arth ) で20時からオペレッタ「陽気な農夫」を上演。入場料、飲食品の売上金を「幸福の鎖 ( Glückskette/Chaîne du Bonheur ) 」に寄付。
バーゼル市芸術大学 ( Hochschule für Gestaltung und Kunst ) で展覧会「和」を開催。オープニング17時から20時まで。寄付金はスイス赤十字社に寄付。
3月26日 ( 土 )
ソロトゥルン州ベラハ ( Bellach ) のヘスガレージ ( Carrosserie Hess AG ) で11時半から洗車サービス、日本食販売。収益金はスイス赤十字社および幸福の鎖に寄付。
バーゼル市ラディソン・ブルーホテル ( Radisson Blu Hotel ) のロビーで17時からと19時からの1時間、バイオリンとピアノのチャリティコンサートを開催。
バーゼル日本語学校とバーゼル日本人会が、10時から17時までバーゼル市Freie Strasse郵便局前で募金活動を実施。
チューリッヒ日本人学校・日本語補習校が10時から17時までチューリヒ市Rennwegで街頭募金を実施。
バーゼル市芸術大学で展覧会「和」を10時から17時まで開催。寄付金はスイス赤十字社に寄付。
3月27日 ( 日 )
ルツェルン市パウルス教会 ( Pauluskirche ) で17時からチャリティコンサートを開催。
バーゼル市芸術大学 ( Hochschule für Gestaltung und Kunst ) で展覧会「和」を10時から17時まで開催。寄付金はスイス赤十字社に寄付。
3月30日 ( 水 )
スイス日本協会がチューリヒ市プレディガー教会 ( Predigerkirche ) で19時半からチャリティコンサートを開催。寄付金は日本赤十字社に寄付。
4月2日 ( 土 )
ルツェルン州クリエンス ( Kriens ) クラウス教会 ( Bruder Klaus Kirche ) で19時より尺八のチャリティーコンサートを開催。寄付金は日本赤十字社に寄付。
チューリヒ州ヴィンタートゥール ( Winterthur ) 市で開催される「春まつり」の一環で募金活動。
チューリッヒ日本人学校・日本語補習校が10時から17時までチューリヒ市Rennwegで街頭募金を実施。
4月3日 ( 日 )
チューリヒ市芸術大学で17時から支援チャリティコンサートを開催。入場無料、寄付金はスイス赤十字社へ寄付。
バーゼル日本語学校とバーゼル日本人会が、14時から17時までバーゼルSBBトラム乗り場で募金活動を実施。
4月10日 ( 日 )
チューリヒ州ヴィンタートゥール市で開催される「春まつり」の一環で募金活動。
遠距離通信会社スイスコム ( Swisscom ) が3月11日から31日までスイスから日本への通話を無料にするとTwitterで発表。
・携帯および固定電話からの通話とSMS
・日本でのローミング ( 携帯電話での日本国内および日本からスイスへの通話、SMS、MMS、データ・ローミング )
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