旧五菱会の資金、日本へ半額返却
連邦司法警察省が4月18日発表したところによると、チューリヒ州が2003年に押収した日本の暴力団山口組系旧五菱会のヤミ資金およそ58億円が、スイスと日本で折半されることになった。
両国の申し合わせの調印は22日にベルンで行われる。事件発覚から約4年半の長い月日を経てこの事件はスイスでは終結した。今後、日本での分配するなどの具体的な支給方法が検討される。
連邦司法警察省 ( EJPD/DFJP ) は、この事件の解決は「スイス政府と日本政府の協力の賜物」であり、スイス政府が自主的に組織犯罪資金がスイス銀行に預金されていることを日本政府に通告したことが発端であったことを特に強調した。スイスの法律では、外国のヤミ資金がスイス国内で発見された場合、要求がなくとも自主的に該当国へ通達すると定められている。
ヤミ資金の天国は過去のもの?
2003年末、チューリヒ州検察局はスイスの銀行にあった旧五菱会の元幹部梶山進の口座を封鎖し、ヤミ資金5840万フランを没収した。同時にスイス政府を通し、日本政府へも通告した。
2005年11月17日、梶山被告に日本で有罪判決が下った以前の5月から、資金の返却について日本政府から交渉する希望がスイスに届いていた。スイスと日本政府は該当する協定が結ばれていないことから、返却金の配分などに関する交渉が長引いていた。また、日本がヤミ資金を没収した上で被害者に分配するための法律「被害回復給付金支給法」の成立 ( 2006年 ) など、日本側の法整備も待たれ、最終的に両者が合意に至ったのは昨年11月29日だった。
両国で没収金を折半するという決定は、国際基準に従ったものである。スイス分として残る没収金は連邦政府とチューリヒ州に支給される。法律的には連邦3割、州7割となっているが、比率は今後検討されることになる。今回の金額は比較的大きく、州政府の歳入増を望むチューリヒ州では早い配分決定が待たれている。
外国の独裁者の資金もスイスの銀行に流れ込んでくる。
「スケールの大きさでいえばナイジェリアのサニ・アバチャ元大統領の『アバチャ資金』が、スイスにとって最も新しい巨額のヤミ資金だ。予防策、10年ほど前からある銀行が負う疑わしい資金に接触した場合の報告義務 ( MROS ) 、国際的協力の3本柱で組織犯罪の資金のスイス流入を阻止しようとしている」
と連邦司法警察省の広報官ファルコ・ガリ氏は語る。実際、3月に発表になった銀行からの2007年の報告件数は前年より約28%増加し795件を数えた。
「スイスは組織犯罪の資金を隠したり、ヤミ資金を投資したりする国としては適さない国だ」
とガリ氏は語る。スイス政府もスイスの銀行もスイスがマネーロンダリングにかかわる国だという悪いイメージを払拭するための自己アピールは近年、特に強くなっている。
swissinfo、佐藤夕美
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