猛暑でマッターホルンが崖崩れ
15日、スイスのシンボルとも言われる名峰マッターホルン(標高4478メートル)の3400メートル地点で崖崩れがおこり、ツェルマットガイド協会は16日、ツェルマットからの登山禁止を決定、他のルートからの山頂登山も「勧められない」と発表した。
崖崩れで死傷者は出なかったものの、落石が続いており、15日には、登山中の約90人の登山客がヘリコプターで3200メートル地点のヘルンリ山小屋に救助された。
崖崩れの要因
多くの専門家は岩と岩を繋げるセメントの役割をしていた永久凍土が記録的猛暑で溶けたために起こったと分析している。ここ一ヶ月以来、普段この時期(6月)は約3000メートルである気温0度の地点が標高4000メートル地点に上がってしまった。また、6月、7月に標高2500メートルから3000メートル地点で雪がないと、日光の反射熱が岩や地面に奥深く伝わってしまうという。万年雪のマッターホルンでは「通常、6月には東側山頂に雪が残っているところが、全くない」とツェルマットガイド協会のミギ・ビナー氏。スイスの今年の6月は250年ぶりの猛暑を記録、7月に入っても高温は続いている。
登山再開は何時?
現在、マッターホルン登頂が可能なのはイタリアからライオン山稜のコースのみ。ガイド協会のビナー氏は「現在、ツェルマットから出発できる他のルートを検討中で日曜日(20日)からは登山が可能になる見込みはある。今夜には分かるはず」と17日に語った。問題はスイスから登頂予定の登山家たちがイタリアの出発地点まで辿り着くのに2日間かかる。ツェルマットの観光業にも影響がでるのではないかと住民の不安は大きい。
氷河も落ちる
ほぼ同時期にはグリンデルワルトの氷河の一部がリュッチネ川に落ち、2メートルの津波を起こした。ここでも、氷河の氷塊が落ちる原因は暑さのせいだとみられている。このまま、猛暑が続けば標高の高い山々は皆、崖崩れや突然の増水などの危険にさらされることになる。
マッターホルン登頂
日本人にも人気のマッターホルン山頂の登山が可能なのは通常7月中旬から9月中旬まで。スイスからはツェルマットからヘルンリ山小屋に行き、宿泊して早朝からヘルンリ山稜を登るコースとイタリアからライオン山稜を登るコースが一般的だ。この登頂は特別な登山具が必要なうえ、道を見つけるのが困難で、下山も登りと同様に時間がかかるため、登山経験者でないと不可能。山岳ガイド料、宿泊費などを含めると1000フラン(約8万7千円)以上かかる。一般の観光客にはマッターホルンが眺められるハイキングコースなどが好まれる。
マッターホルンは4つの山稜と4つの岩壁からなっている四角錐の美しい山。初登頂は1865年だが、難攻不落の山として知られ、山麓の住民からは「魔の山」として恐れられていた。初登頂のエドワード・ウィンパー(英)の率いる7名は山頂を征服したものの、帰路に1人が足を滑らせ、3人を引き込み転落、残り3人はザイルが切れ、命拾いをして生還したという悲劇がこの山を有名にした。
スイス国際放送、屋山明乃
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