空港で遊ぼう!~チューリヒ国際空港~
夏休みにはいり、空港はいつにも増して出入国する人々でごった返している。休暇に出掛ける期待で嬉しそうな家族連れ、休暇帰りでぐったりしている御老人、別れを惜しんで涙ぐんでいるカップル、緊張した表情のビジネスマン、元気に走りまわる子供達等々、行き交う人々の様子は実に様々だ。旅の目的が何であるにしろ、空港は出会いと別れが交錯する場所であり、“旅”というドラマのスタート地点でありゴール地点でもある。私は空港の持つそんな独特の雰囲気が好きだ。だから、フラッと買い物や食事に出かけることがある。自宅から空港へは車で20分ぐらいなので便利だ。
子供の頃、海外旅行はまだとても高価だったので、海外へ行った人は身近にほとんどいなかった。だから空港内のリアルな雑音が録音されたカセットテープ(飛行機の離着陸音、空港アナウンス、外国語の会話等)を繰り返し聴いたり、テレビで世界旅行番組を見たりして、海外旅行気分に浸って楽しんでいた。“いつの日か外国を一人旅して、日本と違う世界を見てみたい”という夢は、英語の勉強に励むきっかけにもなった。当時は将来スチュワーデスになって、世界各地を飛び回りたいと思っていたが、それから数十年後に、スイスの空港近くの小さな町に移り住むことになるとは夢にも思わなかった。人生は本当にどこでどう転ぶかわからないものだ。
天気が良ければカメラを持って、離着陸する飛行機を空港周辺で眺めたりすることもある。フォトスポットは空港の東西南北12ヶ所にあり、様々なアングルから飛行機を間近に眺められるので迫力満点。先日は空港の東にある軍事施設近くのスポットに出掛け、スマートフォンに最近ダウンロードしたアプリ(Flughafen Zürich)を試してみた。このアプリはとてもよくできていて、目の前で離着陸する飛行機の情報を即座に知ることができる。例えば、航空会社名、現時点での高度、飛行時間や距離、目的地の天気等のアクチュアルな情報で、飛行機をただボンヤリと眺めているよりは楽しく観察できる。
また、空港内で飛行機を眺めたい人はターミナル2に新しくできた見学者用テラスB(Zuschauerterrasse B)がオススメ。テラスへの入場前に出国の際と同じような荷物と着衣のX線チェックがあるので要注意。入場料金は大人5フラン、小人2フラン(10歳以下は無料)で、一見の価値は十分ある。広々としたテラスにはモダンなベンチが置かれ、お洒落な雰囲気。レストランや、家族向けにミニ飛行機が置かれた子供の遊び場もある。中でも是非試してもらいたいのは、テラスの4ヶ所に設置されたエアポートスコープと呼ばれるハイテク望遠鏡。スイスには珍しく無料で使え、ドックに停まっている飛行機に焦点をあわせてズームアップすると、覗き画面にその飛行機の詳しいデータがでる仕組みになっている。また、空港内の施設(管制塔や大気汚染観測所等)に焦点をあわせれば、その情報も読める。言語は英語とドイツ語で選択可能。大人でも十分楽しみながら空港の知識を身につけることができる。今後、空港を利用する際に時間があれば、是非見学者用テラスBに一度行ってみてほしい。
その他にも、空港の楽しみ方は沢山ある。例えば空港内をバスで見学するガイドツアー(75分)や、飛行機整備士や空港消防団員の仕事や働く姿を見学するツアー、子供の誕生日パーティ(3時間。最低6人以上で1人につき33フラン、空港ガイド、ケーキ・飲み物・記念品付)等もあり、子供から大人まで気軽に楽しめる企画が用意されている。また休日には、空港周囲(約20km)の歩行者専用道路でインラインスケートやサイクリング、犬の散歩等を楽しむ人も多い。ちなみに、空港内のサービスセンターで、自転車やインラインスケート、ノルディックウォーキングのストックをレンタルすることができるので、誰でも気軽に試せる。こんな至れり尽くせりのチューリヒ空港に、あなたも一度足を運んでみてはどうだろう。
森竹コットナウ由佳
2004年9月よりチューリヒ州に在住。静岡市出身の元高校英語教師。スイス人の夫と黒猫と共にエグリザウで暮らしている。チューリッヒの言語学校で日本語教師として働くかたわら、自宅を本拠に日本語学校(JPU Zürich) を運営し個人指導にあたる。趣味は旅行、ガーデニング、温泉、フィットネス。好物は赤ワインと柿の種せんべいで、スイスに来てからは家庭菜園で野菜作りに精をだしている。長所は明朗快活で前向きな点。短所はうっかりものでミスが多いこと。現在の夢は北欧をキャンピングカーで周遊することである。
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