美術品泥棒のソムリエに懲役4年
アルセーヌ・ルパンと騒がれたアルザス出身のフランス人、ステファン・ブレトヴィザ−(32)の裁判がスイスのフリブール州で今月行われ、4年の懲役刑で刑期終了後もスイス領土から15年間の追放を言い渡された。これは検事側の請求より1年少ない。
ヨーロッパ全土の美術館、教会、競売所から200点余り、スイス内では1995年から2001年まで、90点余りの作品を盗み、スイスでの盗品だけでも73万ドルから120万ドル相当に値するといわれる。
異常な美術収集家
ブレトヴィザ−は大変優れた美術愛好家で、17世紀から18世紀の美術品を主に盗んだ。彼の収集品にはブリューゲルやヴァト−、ブーシェなどの絵画もあり、一番高価な絵は16世紀のクラーナハ(父)の作品で800万ドル相当だ。盗んだものを自ら修復、調査し、専門家に鑑定を依頼したりもし、自分でカタログまで作っていた。ヨーロッパでの盗みはフランスの他にベルギー、ドイツ、オランダ、デンマーク、オーストリアにまで及ぶ。
裁判
ブレトヴィザ−の弁護士は「彼は金儲けするために物を盗んだわけでなく、美術品に対する愛着からしたことで本人は一時、借りるつもりであった」と弁護した。ブレトヴィザ−は「精神的に安定するために美術品が必要で、美術品も自分を必要としていた」といい「盗んだ後はやっと良い気持ちになり、でもしばらくすると他のものが必要になってきた」と供述した。「美術品が傷まないように暗闇で暮らしていた」とも語った。
盗みの手口と発覚の経過
2001年の11月にルツェルンのワーグナー美術館で400年前のラッパを盗んだのが発覚して逮捕された。これまた美術愛好家であった警察官の事情聴取に答えているうちに、他の盗みも供述してしまった。ブレトヴィザ−は好きな美術品に目をつけて、リュックサックやコートの中に隠せる小さいものを選び、絵はポケットナイフで額から外した。美術館での「高価でない品物の見張りは甘い」と説明し、法廷の精神科医は「被告の特出すべき点は彼のあまりにも « 平凡» な印象である」といい、ブレトヴィザ−の性格を内向的で子供っぽく、無責任なナルシストと評した。
盗品の行方
当時、ブレトヴィザ−の逮捕を聞いて、スイスの国境に近いミュルーズで同居していた母親は“怒り”のあまり美術品をライン川に捨て、絵画をハンマーで破壊した。この時、母親が壊した美術品は140万ドルに当たると想定される。これに対して、裁判でブレトヴィザ−は「全てを亡くした」と涙を流して泣いた。スイスでの懲役が済んでからフランスでの裁判が待っている。
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