スイスでは若者の自殺が後を絶たず、3日ごとに一人が自らの命を絶ってしまう。これを食い止めようと、ある革新的なキャンペーンが始まった。(SRF、swissinfo.ch)
このコンテンツが公開されたのは、
ある晩、18歳の高校生イリヤスさんの元に友人から電話がかかってきた。話を聞くと、恋の悩みで憔悴し、自殺したいという。男性は自分の父親に電話を渡して代わりに話してもらった。友人はイリヤスさんの父親と話し、自殺を思いとどまった。
これは、青少年保護団体「Pro Juventute外部リンク(青少年のために)」の新しい自殺予防キャンペーン「話して、聞いて、助けを求める」で紹介された実話の一つ。スイス連邦鉄道(SBB)もキャンペーンを支援している。
キャンペーンのウェブサイトには五つの動画インタビューを掲載。イリヤスさんら若者5人が「友人にどうやって自殺を思いとどまらせたか」という経験談を自身の言葉で語る。キャンペーンでは、悩みを抱える若者に、まず友人に相談して欲しいと呼びかける。
スイス連邦鉄道の駅構内などには5人の顔写真を大きく掲載したポスターが掲示されており、スマートフォンのアプリでこのポスターを読み込むと、5人の動画が掲載されたサイトに飛ぶことが出来る。
スイスでは若者の10人に一人が自殺を試みたことがあるとされる。特に女性は男性に比べ、その数が3~4倍になる。
2009~15年、スイスでは29歳未満の自殺者が年間約130人に上った。
(英語からの翻訳・宇田薫)
続きを読む
おすすめの記事
自殺者の7割超は男性、未遂は大半が女性 専門家が分析
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは自殺による犠牲者の数が、交通事故、エイズ、麻薬で亡くなる人の合計を上回っている。自ら人生に終止符を打とうとするのはどういう人たちなのか。そしてどうすれば彼らを救うことができるのか。西スイス自殺未遂観察センターの専門家2人に話を聞いた。
もっと読む 自殺者の7割超は男性、未遂は大半が女性 専門家が分析
おすすめの記事
スイスで寂しくなったら?
このコンテンツが公開されたのは、
米国人のアレクサンドラ・デュフレーンさんは家族とチューリヒに住んでいる。この国に住む外国人として、特にクリスマスシーズンに感じる寂しさとその対策について語る。
もっと読む スイスで寂しくなったら?
おすすめの記事
最多、銃器による自殺
このコンテンツが公開されたのは、
「欧州抗うつ同盟 ( EAAD ) 」はこの度、ヨーロッパ15カ国で15歳から24歳の若者が行った1万5000件の自殺について調査を実施した。スイスの次に銃器を使った自殺が多いのはフィンランド ( 28% ) とフランス…
もっと読む 最多、銃器による自殺
おすすめの記事
ストップ、自殺
このコンテンツが公開されたのは、
しかし交通事故でも自殺しようと多量のドラッグを使用して車に乗る例も多く、いずれにせよ自殺はスイスの15〜25歳の青少年の主な死因といえそうだ。 「高校生の時、校友が自殺してショックを受けました。6年前はまだ自殺について…
もっと読む ストップ、自殺
おすすめの記事
銃好きのスイス、規制の歴史
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの銃規制法と銃の所持率の高さは、この国が銃を所持する権利や国民軍の必要性を深く信じていることと関係している。何世紀も前には、一部の州で、男性は銃を持っていないと結婚が出来ないと定めた法律もあったほどだ。しかし、最近の国民投票や欧州連合(EU)との合意によって、誰がどんな銃を所持していいのか、そしてそのリスクについて議論されるようになってきている。
もっと読む 銃好きのスイス、規制の歴史
おすすめの記事
高齢、重病、無力感 それでも生きていくのか?
このコンテンツが公開されたのは、
死期を自分できめることは正しいのか?もしそうだとしたら、そのことが高齢者に対して「早く人生を終えるように」と無言の圧力をかけてしまわないか?この二つの問いをめぐり、今スイスでは自殺ほう助についての議論が再燃している。自…
もっと読む 高齢、重病、無力感 それでも生きていくのか?
おすすめの記事
死を巡る議論―自殺天国のスイス
このコンテンツが公開されたのは、
不治の病であれ、生きるのに疲れたのであれ、死について議論する際、自己決定が最も重要であり最後の論拠となる。大多数の人が生の終え方を自分で決めたいと望む。スイスで広く受け入れられている自殺ほう助は、致死量の薬を摂取することで死を迎えるが、この最期の行為は患者本人が行わなければならない。事前に医療の手助けも必要だ。
スイスは自殺ほう助の先進国だ。年老いた人が自殺する権利は事実上規制されておらず、外国人が安楽死を求めてスイスを訪れる「自殺ツーリズム」がブームになっている。このリベラルな現状を見ると、スイスでは自殺ほう助が肯定的に受け止められているような錯覚に陥るが、実際は違う。自殺ほう助は政治や宗教、社会通念や倫理などといった価値観との戦いの連続だ。たとえ差し迫った状況にあるからといって、人の命をどうするか、そもそも問うていいものなのか。自殺ツーリズムを法で規制するか否かの議論はいまだ消えることはない。
もっと読む 死を巡る議論―自殺天国のスイス
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。