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象が泳ぎ、コウノトリが飛ぶ〜生態系丸ごと!チューリヒ動物園

広大な動物園の地図で、お目当ての動物達をチェック。それぞれの動物の絵が描かれたサインに沿って、レッツゴー! swissinfo.ch

スイスの人々は、動物との触れ合いが大好きだ。チューリヒには自然を感じながら、動物達に接する事が出来る場所がある。市内にあるチューリヒ動物園だ。ここでは世界各国から集められた珍しい動植物に出会える。園内にはマダガスカルの熱帯雨林が生い茂り、動物が放し飼いにされるなど、様々な趣向が凝らされ、動植物を間近で観察できる動物園として、世界のメディアからも注目をされている。今回は進化を続ける新しいチューリヒ動物園をご紹介しよう。

 市内の小高い丘の上に位置し、緑に囲まれた瀟洒な住宅街の一角にあるチューリヒ動物園は、人間と動物との距離が近く、人々が自然と動物に身近に触れ合える場所だ。自然環境保全センターとしての役割を果たしており、生物の保護に重点を置いている。園内で飼育されている動物達が、もともと住んでいた環境に合わせて、その生態系を維持できるように考えられた、新感覚の動物園なのだ。

放し飼いにされた一部の鳥や動物たちは手を伸ばせそうな程、間近で眺める事ができる swissinfo.ch

 園内を歩き始めると、クジャクがすぐそばまで近寄って来て、目の前を通り過ぎた。ここで放し飼いにされた動物達は、人間が危害を加えない事をちゃんと知っていて、恐れる事無く人に近づいて来る。ガチョウの集団は、リーダーらしき1羽を筆頭に、歩道で行進を始めた。可愛い後ろ姿をカメラに納めようと、すぐ後方で行進を見守っていた。と、その時、ちょうどガチョウと出くわした子供達が、キャーッっと、驚きと喜びの混ざった奇声を発したため、ガチョウたちは一斉にくるりと回れ右して、向きを反対に変え、すぐ後ろにいた筆者の方に向けて突進して来た。一瞬の事で、これにはさすがに驚いたが、もちろん彼らの行く手の邪魔にならないよう、慌てて道を空けた。

整列して園内を歩き回る、ガチョウたちの行進! swissinfo.ch

 園内の数カ所には高い木の上に、コウノトリ(Storch)の巣が作られている。鳥達はもちろん放し飼いだ。ドイツ語のStorchは、日本語でコウノトリと訳されているが、日本では、シュバシコウと呼ばれている種なのだそうだ。チューリヒ動物園では、春から初夏にかけて、親鳥が雛の世話をしている自然の光景を見学できる。親鳥は上空を悠々と飛び、巣で待つ雛鳥たちのために餌を探し求める。巣の中では口を開けて、ピーピーと鳴きながら餌を待つ小さな雛鳥たちの様子がとても可愛らしい。

園内数カ所の木の上にあるコウノトリの巣。春から初夏にかけ、親鳥が雛の世話をする様子が眺められる swissinfo.ch

 冬のシーズン(11月〜2月の気温が10℃以下の日)には、人気者のペンギン達が園内をパレードする。子供達は、手を伸ばせば届きそうなペンギンの行進に大はしゃぎだ。チューリヒ動物園は季節ごとに様々な催しが開催され、年間を通して大人も子供も楽しめる。

カラフルな色をしたカメレオン。放し飼いされているため、この距離感で観察できるのがすごい! swissinfo.ch

 2003年に完成した「マソアラ熱帯雨林(Masoala-Regenwald)」は、マダガスカルの「マソアラ国立公園(Masoala National Park)」との共同プロジェクトで実現した植物園。敷地面積は11000平方メートルと広大で、マダガスカルの熱帯雨林を再現している。土壌は現地から運ばれ、約3000種もの植物が植えられている。熱帯の湿度と温度をヒーターで保っているため、中に入ってみると、湿り気のあるむっとした暑さを感じる。定期的に人口の雨を降らせて、完璧に現地の熱帯雨林を再現しているのだという。雨林の中は数分いるだけで、ジワリジワリと汗がにじみ出てくる。奥へと進むと、珍しい鳴き声の鳥が鳴き、木々の間を素早く飛び回る姿が目に留まる。夕刻になると、コウモリも飛んでいる。様々な種類の昆虫、色彩豊かなカメレオンにも出会えた。放し飼いにされているため、トカゲのような爬虫類も、すぐ足元まで近寄って来る。階段を登って、見晴し台の上から広々とした熱帯雨林を眺めてみると、ここがチューリヒ市内である事を忘れてしまいそうだ。

色彩がとても豊かな鳥。マソアラ熱帯雨林の中には、マダガスカルの珍しい鳥や動植物が生息する swissinfo.ch

 広い動物園内を歩き疲れたら、ピクニックエリアでランチ休憩。シンプルなサンドウィッチも、自然いっぱいの中で味わうと、美味しさも倍増する。園内の各所には、このような休憩エリアと、子供たちが楽しめるプレイエリアも設けられている。

子供たちに大人気、有料で動物園内を走るバス、マソアラエクスプレス swissinfo.ch

 タイの国立公園から名を取って「ケーン・クラチャン・エレファントパーク(Kaeng Krachan Elefantenpark)」と名づけられた新しい象のパークは見逃せない。昨年6月17日に産まれた子象は人気者で、インターネットの投票により、オミーシャ(Omysha)と命名された。名前は微笑みを意味するのだそうだ。新しい象のパークは旧舎の6倍の広さで、7頭のゾウがのびのびと飼育されている。象達は自由にパーク内を歩き回り、背伸びをして、高い場所や壁の穴の中にある餌を食べたりもする。おとなしい印象もある象達なのだが、仲間同士の争いも時々起こるため、屋内外で数頭ずつ分かれて飼育されている。広々としたパーク内は、タイの森林をイメージして設計され、天井から自然光が入るように明るくデザインされている。エレファントパークとマソアラ熱帯雨林の建設費は、すべて寄付でまかなわれたというからすごい。スイスの人々の、動物愛護と環境保護への関心の強さを物語る一例だ。

2014年にオープンした「ケーン・クラチャン・エレファントパーク」の全景。象が泳ぐプールはこの中。屋内外にある広大な敷地の中で、象達がのびのびと飼育されている swissinfo.ch

 エレファントパークの最大のアトラクションは、象が泳ぐプールだ。現在は週に2回、週末の決められた時間に象が水浴をする姿が見学できる。水浴をするのは、体の温度を調節し、皮膚のケアをするためだという。筆者も6月のある日、見学に出かけた。象が透明部分の水槽下まで潜り、プールの中を泳ぐしくみとなっている。プール(透明水槽)の目の前は、観客の見学スペース。水槽上部からは、象が水の中へとダイビングする姿も目にする事が出来る。泳ぐ予定時刻の30分前になると見学席は、象の水浴を見ようと集った人々で超満員。しかし、自身が訪れた際には、残念ながらプール内で泳いでいる象の姿を目にする事が出来なかった。この日、泳ぐ予定であったオミーシャは水浴気分ではなかったのか、足先の部分を少しだけ水に浸し、パシャパシャとしばらく音を立てると、観覧者の待つプール下方まで潜る事無く、その日の水浴は終了。この動物園では、観客が集い、待ちわびていても、無理に象を水の中に入れようとあおったりはしない。象が水浴気分でないのであれば、それは仕方の無い事。ひと目泳ぐ姿を見たいと集った観衆はガッカリした顔は隠せぬものの、誰一人として不満を述べる者はいない。象が泳いでいる姿を見学したければ、また再び人間が足を運べばよい。これもまた、スイススタイルだと感じる。

子象のオミーシャのキュートな姿が印象的なエレファントパーク内。時にはすぐそばまで、象たちが近寄って来る事も! swissinfo.ch

  ちょうど同じ日に、日本からのTVクルーの方々をお見かけした。お話をうかがってみると、NHKのBS放送にて、8月にチューリヒ動物園の特番が組まれる予定なのだそうで、撮影のために日本からやって来られた撮影隊であった。チューリヒの街の様子は度々日本のテレビ番組でも紹介されているが、今回はチューリヒ動物園をテーマとして番組が構成されるのだという。スタッフの方のお話によると、番組は日本国内で、8月6日に放送が予定されているとの事。とても興味深い。スイスではオンタイムとはいかないのが残念だが、いつか視聴させていただく機会が楽しみだ。

象達が泳ぐプール。運が良ければ、上部の見学エリアからは象が水場から水槽の中へダイブする姿、下方の水槽前見学エリアからは水浴する様子が見られる swissinfo.ch

 エレファントパークの隣の広大な敷地には現在、アフリカのサバンナパークが建設中だ。同時にそのすぐそばにはゴリラパークも建設中で、それぞれ2020年と2024年にオープン予定である。規模を拡大し続けるチューリヒ動物園では、新しい動物たちとの出会いや、新たな発見がいっぱい!おトクな年間パスを購入して、季節毎に訪れてみるのもお勧めだ。

スミス 香

「動物に触ってみよう!」という体験クラス。動物園内でいろいろな動物のガイドツアーや、餌付け、写真教室など、様々な催しが開催される swissinfo.ch

(上記に記したテレビ番組のスケジュールは、あくまでも現在の予定として、撮影隊のスタッフの方にうかがいました。局の事情によっては放送日時が変更される場合があるかもしれません。詳しくは番組表などで詳細をご確認下さい。)

福岡生まれの福岡育ち。都内の大学へ進学、その後就職し、以降は東京で過ごす。今年の春で、スイス在住12年目。現在はドイツ語圏のチューリヒ州で、日本文化をこよなく愛する英国人の夫と二人暮らし。日本・スイス・英国と3つの文化に囲まれながら、スイスでの生活は現在でもカルチャーショックを感じる日々。趣味は野球観戦、旅行、食べ歩き、美味しいワインを楽しむ事。自身では2009年より、美しいスイスの自然と季節の移り変わり、人々の生活風景を綴る、個人のブログ「スイスの街角から」をチューリヒ湖畔より更新中。

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