赤十字、イラクの事務所一時閉鎖
赤十字国際委員会(ICRC)のヤコブ・ケーレンバーガー委員長は8日、チューリヒのターゲスアンツァイガー紙とのインタビューでICRCがイラクの首都バグダッドと南部の都市、バスラの事務所を一時閉鎖することを明らかにした。
この決断は先月27日、ICRCバグダッド現地事務所爆破テロで12人死亡した事件を受けた措置で、その後、在住職員を減らすに留めたが治安情勢が悪化したためにやむを得ずに2大拠点の閉鎖を決めた。閉鎖期間はまだ、未定だが北では活動を続ける方針。
撤退理由
ICRCの報道官、アントネッラ・ノタリさんはスイスインフォに「現在のイラクのひどい状況ではバグダッドとバズラの事務所の活動を続けることは出来ない」と説明。また、ケーレンバーガー委員長は同紙に「長年、イラクで活動してきた我々職員にとって先月のテロは大きなショックだった」と語り、撤退の理由にイラク人職員が自爆テロで死んだことと未だに分からない犯人によってICRCのような人道支援組織が標的になっていることを挙げた。
中立尊重、警護なし
爆破テロを受けて、米国のパウエル国務長官はICRCに米軍の保護を申し出ていたが中立の原則から断っていた。ケーレンバーガー委員長は同紙のインタビューでも「独立した人道支援」という立場から今後のイラク支援活動において占領軍の警護を受けることはないと明らかにした。また、「今後、ICRCは現地での新しい活動方法を見つけなければいけない」と語った。
ICRCとイラク
この決定により、ICRCのイラクの事務所は北部だけとなる。ICRCはイラク国内の外国人スタッフ30人とイラク人スタッフ約600人の削減や再配置については職員の安全も考え、言及していない。イラクでのICRCの活動は捕虜訪問や捕虜と家族の連絡、飲料水や医療の支援などが主。旧フセイン政権下でも活動を維持し、1980年代から戦争中も支援を続けてきたICRCの撤退はイラク人にとっては大きい。ICRCの事務所閉鎖は10月末の国連の撤退に続き、国際機関撤退の流れをさらに強めることになり、米国にとっては手痛い打撃になりそうだ。
スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)
<イラクでの人道支援経過>
−2003年、8月19日、バグダッド国連事務所テロでデメロ特別代表ほか20人以上が死亡、約600人いた外国人職員が大幅に削減された。
−10月27日、ICRCバグダッド本部自爆テロでICRC職員を含めて12人死亡。
−10月29日、ICRC、バグダッドからの部分撤退を発表。
−10月30日、アナン国連事務総長がバグダッドから外国人職員全員の退去を決断。
−11月6日、ICRCケーレンバーガー委員長、バグダッドとバズラ事務所の一時閉鎖を決定。
JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。