赤十字、バグダッドから部分撤退
今月27日の赤十字国際委員会(ICRC、本部ジュネーブ)のバクダッド事務所が狙われた連続爆破テロを受けてICRCは29日、ジュネーブ本部でイラク事務所の国際職員を削減することを発表した。
今後のイラクでの活動に関しては現地職員が基本的に引き継ぎ、その活動も米軍の保護を受けないことを表明、中立な立場での人道援助を続ける方針を示した。なお、ICRCは20年来、イラクで支援活動を続けており、このような人員削減を発表するのは異例なことであり、27日の攻撃が如何にダメージを与えたかを示す。
部分撤退プラン
ICRCは現地に残りたいと自主的に希望する国際職員だけを残し、現地職員はそのまま活動する予定である。引き上げる人数に関しては残るスタッフの安全上、発表しない方針だ。爆破テロ前はイラクでは800人の現地スタッフと35人の国際スタッフが活動していた。ICRCの広報官は「イラクで活動を続けることは我々の任務であるが安全確保が難しくなっているため状況に合わせるしかない」と語った。
米国の要請
米国、パウエル国務長官は連続爆破テロを受けて28日、赤十字国際委員会のケレンバーガー委員長に電話し、赤十字の要員がイラクでの活動を継続するよう要請していた。また、米国は「人道援助機関や民間活動団体(NGO)が撤退すればテロの勝利になる」と表明した。なお、同国務長官はICRCに対し「出来る限り安全な環境を提供できるようあらゆることを行う」と支援提供をしたが、ICRCは中立の立場から米軍の保護を受けない方針を貫くことを明らかにした。
連続テロ
イラクの首都、バクダッドのICRC事務所と警察署4箇所の計5箇所を狙った同時発生の連続爆破テロは計35人死亡、224人の負傷者を出した。ICRC事務所を狙ったテロは爆発物を積んだ車が事務所の囲いに突っ込む自爆テロでICRCは2人の職員を失った。赤十字は中立の立場から人道支援を行う方針で米軍やイラク警察の武装警備は行っていなかった。同テロの犯行首謀者はまだ分からずにいるが外国から侵入したイスラム原理主義系の過激派という見方が強い。
イラクでの活動
人員削減となればICRCの活動も大幅に削減されることになるが、今後も水道設備や医療支援、捕虜の訪問などを続ける方針だ。現在のところ、米軍に捕まえられた1万人近くのイラク人捕虜への訪問を行っている。
スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)
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