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身代金目当てか?チューリヒ絵画盗難事件

盗難後の美術館内。この壁に盗まれた絵が掛かっていた Keystone/Stadtpolizei Zürich

2月10日のチューリヒの美術品盗難事件で盗まれた4点の絵画は、正規の市場では決して売れない。犯人の目的は絵画の身代金要求「アートナッピング」という可能性も高い。

美術品を破壊すると脅し、保険会社を脅迫するのだ。連邦文化局のイヴ・フィッシャー氏は、今回の事件では身代金が要求される可能性があることを認めた。

 「今回盗難にあった絵画は、正規の絵画市場では取引できないほど有名。身代金の要求は、犯人にとって儲けになる唯一の手段だ」フィッシャー氏がこう主張するのは、インターポールに盗難絵画のリストがあり、各国警察もそのデータを共有していることが背景にある。盗難絵画を売買すること自体が違法行為であり、あらゆる場面でのコントロールが効くとフィッシャー氏はみる。

支払手段として美術品

 正規の市場では売れないとすれば、有名な美術品を所有したいと思う収集家が取引するブラックマーケットか、アートナッピングのいずれかだろう。しかし、収集家による注文の可能性についてフィッシャー氏は
「実質的には、ほとんどない」
 と断言する。一方で、ブラックマーケットでは美術品が紙幣のような役割さえ担うことがあるとも指摘。南米では、麻薬や武器と美術品が物々交換された例があるという。

アートナッピング

 美術品盗難事件の8割が未解決のままだ。多くの盗難品は事件後何カ月も何年も経たってから、公衆トイレやバス停留所といった公共の場で発見される。これは、市場でも売れず、身代金も支払われなかった場合だ。その他は、保険会社や所有者が身代金を払って解決していると専門家は見ている。こうした場合は「事件解決に協力した人への謝礼」と表現される。

 しかし、保険会社が身代金を払うことは比較的珍しいとフィッシャー氏は言う。保険会社が身代金を支払えば、さらなる事件を助長すると懸念されるからだ。しかし、身代金が保険金より安い場合は、保険会社は身代金を払い、損害を小さくしようとするだろうとフィッシャー氏は明かす。美術館が身代金を払うという場合もある。身代金の受け渡しとなれば、警察にとって犯人や仲介となる弁護士との接触の絶好のチャンスだ。被害のあったビューレコレクションは、事件解決の協力者への謝礼として10万フラン ( 約980万円 ) を提示した。

swissinfo、アンドレアス・カイザー 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

ヨーロッパ絵画のコレクションとして重要な位置を占める。フランス印象派と印象派後の絵画を中心に絵画と彫刻200点所有。1960年に基金として創立するが、チューリヒ美術館 (Kunsthaus Zürich ) の別館になる予定。
現在所有する美術品を集めたエミール・ビューレは、武器製造会社で財を成した。1930年代から美術品の収集を始め、1950年にその収集活動は最盛期となる。後に、収集した何点かがナチスドイツによる盗品だと判明した。今回盗まれた「赤いジャケットの少年」もユダヤ人が所有していたものをナチスが奪ったその1点といわれる。

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