スイスの視点を10言語で

高橋大輔も参加! 20周年を迎えた感動の「Art on Ice アート・オン・アイス」

ネリー・ファータドとスケーター達の豪華共演! swissinfo.ch

雪が降ったり止んだり、日中でも氷点下の気温の日もあるチューリヒ州の2月。こんな寒い日々が続くと、暖かい部屋で引きこもりがちにもなるのだが、娯楽の少ないスイスで、人々が寒い町に出かけたくなるホットな真冬のイベントがある。毎年チューリヒを中心に開催される、ヨーロッパ最大級のアイスショー「アート・オン・アイス Art on Ice」だ。

 今年は20周年の記念公演で、豪華な顔ぶれの出演者がスイスに集った。日本からは2010年世界選手権優勝の高橋大輔もこのショーに初参加。毎年メインのスケーターとして活躍するスイスのスターで、2005、06年世界選手権優勝のステファン・ランビエールや、今回限りでショーの引退を表明した、地元チューリヒ出身、2011年欧州選手権優勝のサラ・マイヤー等と共に、盛大なショーを盛り上げた。 

ステファン・ランビエールとサラ・マイヤーの共演。アート・オン・アイスでこんな光景を見られるのは今年が最後! swissinfo.ch

 1995年にスイスでスタートしたアート・オン・アイスは、オリンピックや世界選手権、欧州選手権でメダルを獲得した世界のトップスターが集まるアイスショーだ。毎年異なるアーティストのライブ演奏に合わせ、スケーター達は氷上を華麗に舞う。スイスでの公演会場はチューリヒの他、ダヴォスと、今年は初めてローザンヌでも開催。2013年には日本でも、アート・オン・アイス・イン・ジャパンとして開催された。 

 アート・オン・アイスが初めて行われた1995年のショーでは、観客の動員数は約6500人だったそうだ。その後年々人気が高まり、現在では8万人もの観客が集う大イベントとなった。同公演はチューリヒ市内のハレンシュタディオン(Hallenstadion Zürich)で数日間に渡り開催される。通常はアリーナが広がる会場内に、にわか仕立てとはとても思えない立派なスケートリンクが登場する。

アート・オン・アイス開始直前のスケートリンク swissinfo.ch

 公演の当日は会場に到着すると、観客席には翌年分のチケットを申し込むためのハガキが置かれている。スケーター達の息づかいまで聞こえてきそうなアイスリンク前の最前列は、高額であるにも関わらず特に人気が高く、このアイスショーの人気を物語っているかのようだ。チケットはネットの予約サイトで購入できる。その他に「VIPパッケージ」と呼ばれる豪華なプランもある。この特別プランでは、ショーの前にホテルでのカクテルとディナー付き。公演会場までの専用VIPシャトルを利用し、特等席でショーの鑑賞。公演終了後はスター・スケーター達と共に過ごすパーティーに参加出来るという特権付きのパッケージである。

ショーのスタートを待ちわびる人々で賑わう、開始前のホール swissinfo.ch

 20周年のメモリアル公演となった今年のメインアーティストには、グラミー賞4部門でノミネートされ、最優秀ポップ女性ヴォーカルを受賞したカナダ人シンガーソングライター、ネリー・ファータド。英国の若手シンガー、トム・オデール、スイス人歌手にマーク・スウェイが登場。スケーター達は、ステファン・ランビエール、高橋大輔らと共に、2013年世界選手権優勝、ソチオリンピック金メダリストのタチアナ・ボロソジャル&マキシム・トランコフのペア、2012年世界選手権優勝、ソチ五輪銅メダリストのカロリーナ・コストナー他、選りすぐりのスケーターが集った。日本からは過去に、佐藤有香、荒川静香、安藤美姫らも出演した。

今年のメインシンガーはネリー・ファータド。誰もが耳にした事がありそうなポップな楽曲がスケーター達の華麗な舞を盛り上げた swissinfo.ch

 今年はスイス国内外で人気の根強いステファン・ランビエールに加え、高橋大輔が出演となった事で、例年に増す、多くの日本人スケートファンも駆けつけた。たまたま会場で日本からのファンの方々とお話をする機会があったのだが、各旅行会社のツアーだけで、200名以上がアート・オン・アイスを鑑賞するため、スイスを訪れたのだそうだ。

20周年の記念公演で初参加、会場を魅了する演技を見せた高橋大輔 swissinfo.ch

 筆者はアート・オン・アイスの公演に出かけたのは今年で5度目。そのうち何度かは、リンクに近い最前列の席をタイミングよく予約する事ができた。リンク前の席では、観客とスケーター達との距離も近く、間近まで滑ってきた際にスケート靴が氷の上でシャリッと音を立てるのも聞こえて来る。日本とは異なり、スイスではこのショーに関しては、カメラの持ち込みには特に制限はなく、フラッシュ無しであれば写真撮影は可能だ。(2015年現在)

 豪華なスケーターたちが演技を披露するアイスショーは、日本でも鑑賞した経験があるのだが、スイスでのショーは観客の盛り上がり方も派手だ。これも国民性の相違と表現すべきか、普段はもの静かでおとなしいイメージもあるスイス人達も、この場では大きな歓声を上げる。応援スタイルも人それぞれで様々。ブラボーと大声を上げる人もいれば、指笛を吹き興奮する人々もいる。 

 ショーは年々バージョンアップしている印象を持つ。アーティストの歌に合わせ、美しく、しなやかな動きで氷上を舞うスケーターの姿に魅了される事は言うまでもないのだが、演技を見せるためだけのアイスショーではなく、観客をとりこにする趣向を凝らした数々の演出は、何度目にしても飽きる事はない。まさにその名の通り、氷の上で繰り広げられるアートだ。時にはおどけたパフォーマンスや表現を見せるスケーターや、観客席を巻き込み大サービスをしてくれる出演者もいる。過去には、ステファン・ランビエールが氷上で歌とダンスのパフォーマンスを見せるという場面もあった。数年前に出場したロシアのエフゲニー・プルシェンコは、観客席ギリギリまで近づいてステップを踏み、4回転ジャンプも惜しみなく披露してくれた。今回出演したジョアニー・ロシェット(2010年バンクーバーオリンピック銅メダリスト)は、演出の一環で最前列の観客席に飛び込み、ものすごいスピードでリンクへ戻って演技を続けた。高橋大輔の情熱的な演技と見事なステップにも、会場は大いに沸いた。今年も演技の合間のコメディあり、氷の上に花火が上がる等のサプライズな仕掛けありと、アイスショーという領域を超えた、盛大なショーとなった。

フィナーレは出演者一同が勢揃いし、大盛り上がりのアイスダンス swissinfo.ch

 スケーターやアーティスト達を眺めていると、彼ら自身が観客と共に一体となり、楽しんでいる様子が観ている側にも伝わってきて、それがまた嬉しい。最高潮に達したショーの最後は、出演者全員でグループ演技を披露し、その後、スケーター達は会場内をぐるぐると周回して、リンクに近い観客達とハイタッチ。出演者も観客も、最高の気分で氷上のビッグイベントは終了する。 

ショーの終わりは出演者たちがリンクを周りながら、観客達とハイタッチ!会場が一つになる瞬間 swissinfo.ch

 今年も公演終了後、既に来年のショーのチケット受け付けがスタートした。来年はどんなスター達がスイスにやってくるのか?既に来年の公演が楽しみだ!

スミス 香

福岡生まれの福岡育ち。都内の大学へ進学、その後就職し、以降は東京で過ごす。スイス在住11年目。現在はドイツ語圏のチューリヒ州で、日本文化をこよなく愛する英国人の夫と二人暮らし。日本・スイス・英国と3つの文化に囲まれながら、スイスでの生活は現在でもカルチャーショックを感じる日々。趣味は野球観戦、旅行、食べ歩き、美味しいワインを楽しむ事。自身では2009年より、美しいスイスの自然と季節の移り変わり、人々の生活風景を綴る、個人のブログ「スイスの街角から」をチューリヒ湖畔より更新中。

人気の記事

世界の読者と意見交換

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部