10人に1人がDV犠牲者
スイスの成人女性の10人に1人がドメスティック・バイオレンス ( DV ) の犠牲となっていることが連邦内務省男女均等待遇局の調べで明らかになった。
2001年から2004年の間にDVが原因で死亡した人の数は女性が年間平均22人、男性が4人。連邦政府はこうした現状に対し、より積極的な対策を講じる意向だ。
複雑な原因
男女均等待遇局 ( EBG/BFEG ) のパトリシア・シュルツ局長は5月14日に開いた記者会見で、「パートナー間の身体的、性的、心理的な暴力はスイスに広く見られる現象」だと説明した。パートナー間の暴力の原因が調査されたのは今回が初めてだ。
調査を率いたマリアン・シェア・モーザー氏は、この暴力の原因は1つだけではないと言う。
「数え切れない個人的、社会的リスク要因のさまざまな結びつきでパートナー間に暴力が生じる。特によく見られる要因は、幼少期に受けた暴力、過度の飲酒、あるいは反社会的行動や犯罪行動だ」
しかしまた、女性と男性の間の力関係、争いの収拾をつける方策を知らないこと、ストレス、妊娠、出産、離婚や別居、失業、そして社会的な孤立などもDV発生の要因になるという。統計的には外国人カップルや異国籍同士のカップルにDVが多く発生しているが、だからといって国籍を決定的な理由とすることはできないと、シェア・モーザー氏は安易な推論に警告する。
統計の欠如
シェア・モーザー氏はさらに
「外国人カップルや異国籍同士のカップルにはほかにもさまざまなリスク要因があり、これらを考慮に入れると国籍とパートナー間の暴力の間に直接的なつながりを証明することはできない」
と説明する。
DVに関する全国的な統計は取られておらず、今回の調査でデータに甚だしい欠如があることが確認された。警察の犯罪統計が改訂されて2010年からは全国的な統計が取られることになっているが、それでもこの穴を完全に埋めることはできない。警察に通報されるのは全体のわずか一部で、表に出ない数字はその後も残るからだ。
実際の規模がある程度分かるものに「被害者援助窓口」の統計がある。これによると、相談ケースの半数以上がDV関連で、相談に訪れる人の4分の3が女性だ。一方、男性に対する暴力の調査はほとんど行われていない。暴力に苦しんでいる男性がいることは確かだが、数字としてはじき出されたものはまだない。
今回の調査では、スイスがこれまでに行ってきた対策についても詳しく調べられた。法的には、DVは2004年以降、公犯罪として罪に問われることになった。さらに2007年からは民法に新しい暴力保護基準が設けられ、被害者は相手に対し、接触を禁じたり自宅を退去するよう求めることができるようになった。また、独自に法的措置を取ったり、DVを専門に扱う部署や調整を行う部署を設置した州も数多い。
しかし、連邦政府はDV阻止のための法的基盤の実現化を徹底するだけではなく、パートナー間の暴力が国民経済に及ぼす影響に関する調査も実施し、それとともにさらなる情報対策および予防対策も検討する予定だ。
swissinfo.ch、外電
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