GMOコメがスイスにも流入
アメリカ産で遺伝子が組み換えられたコメ ( GMOコメ ) 、LL 601 が欧州共同体 ( EU ) に出回っていることがニュースになっているが、スイスでもこのほど初めてLL 601が検出された。
大手スーパーのミグロやコープは即刻、アメリカ産の長粒種米の販売を中止したが、ディスカウントショップでは扱っているコメがアメリカ産ではないとして販売を続けている。
アメリカから輸入したコメの中にLL 601が混入していたと、スイスドイツ語圏のテレビ ( SF DRS) が9月12日に報道した。LL 601を検出したのはミグロの食品試験所。スイスで許容されているGMO食品の含有率0.01%を大きく上回る0.9%のLL 601がアメリカ産長粒種米から検出されたため、即刻輸入された1500トンのコメの流通を停止し、販売も停止したという。
コープも販売停止
GMOテストが制度化されたのは今週から。それ以前に販売された長粒種米については、保証はないとミグロは認める。一方、ミグロと同じ大手スーパーのコープも同じ業者からコメを輸入しているが、検査した結果LL601は検出されなかったという。しかしながらコープも、アメリカ産長粒種米の販売を停止した。
一方、ディスカウントショップのデンナーとアルディ・スイスは、引き続き販売するという。デンナーは、コメをアメリカ以外の国から輸入しているというのがその理由。アルディはドイツですでにコメの販売を停止しているが、スイスではその必要がないという判断だ。アメリカ産のコメというとスイスでは、高級ブランド「アンクルベンズ」がすぐ思い起こされる。アンクルベンズが遺伝子操作をされているかどうかは、今のところ不明だ。
連邦政府の判断を待つ
大手スーパーは、今後の連邦政府の判断を待つとしている。特に注目されるのはEU の判断。連邦健康局のマルティン・ショット技官は「許可されていない食品については、まったく妥協する余地はない。認定された検査方法で検出されたのなら、販売は禁止される」と言う。
しかし、販売禁止となったコメの処理については規制がない。焼却処理が義務付けられておらず、再輸出されることも考えられる。最終購入者にすべては委ねられているわけだ。結局輸入業者が自己管理を徹底し、GMOコメの混入がないことを証明する書類を確認するしかないという。EUではすでに、こうした証明書の添付を義務付けている。
EUではスキャンダル拡大
EU諸国でのGMOコメのスキャンダルは拡大の一方だ。フランスとスウェーデンへ輸出されているアメリカ産のコメの中にもEU では認可されていないGMOコメの混入が発覚したとAFP 通信が9月12日、報道した。現在、EUの検査の結果が待たれる。
環境保護団体のグリンピースによると、ディスカウントショップ、アルディの扱うアメリカ産のコメ、商品名ボン・リ ( Bon-Ri ) には、GMOコメが混入しているという。このGMOコメは、いかなる国でも栽培や販売が禁止されているLL 601の可能性が高いという。
EU当局は、アメリカの食品医薬品局 ( FDA ) のLL 601に対する危険度の評価を参考にするというが、アメリカの植物検疫庁 ( USDA-APHIS ) と食品医薬品局の両当局は、人体に及ぼす影響はないと判断している。
swissinfo、外電 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )
- GMOコメLL 601 ( Liberty Link Rice 601 )
除草剤耐性で、除草剤リバティリンク(成分グルフォシネート)に耐性を持たせたもの。バイエル・クロップサイエンス社 ( 前アベンティス・クロップサイエンス社 ) が開発した。
- 日本の厚生労働省は8月19日、米国産のコメ ( 長粒種米のみ ) の輸入を禁止している。
- 昨年11月27日の国民投票で、イニシアチブ「遺伝子組み換えのない食品」を可決。これにより、遺伝子が組み換えられた家畜と農産物の栽培は向こう5年間禁止となった。スイス連邦基金はさらに、遺伝子組み換え食品の長所とリスクなどについての研究計画を進めている。
- EUはGMO食品法を1998年に設定。新しいGMO食品の輸入は禁止されたが、2004年5月には、GMO食品の取引を解放した。同年9月にはトウモロコシの種類がリストアップされた。GMO食品の販売認可は、そのリスク、人体と環境への影響についての科学的調査を経る必要がある。0.9%以上含有している場合は、表示義務がある。
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