国民発議権、なぜ政党が使うと失敗するか
国民が憲法改正案を発議し、国民投票にかける権利「国民発議権」がスイスに導入されたのは1891年。それ以来、196件の提案が国民投票にかけられてきた。近年では政党が主体となって発議案を出しているが、可決されることはまれだ。(SRF/swissinfo.ch)
提案が国民投票にかけられる前に、政府と連邦議会はまずその提案が法的に有効か否かを判断する。有効と判断すれば、その案に賛成するか反対するか、反対するなら対案を出すかどうかなどを議論する。現在、国に登録済みの提案は28件。一部はまだ署名集めの段階、一部は国民投票実施日が決まるのを待っている段階だ。
近年では、政党が独自の提案を発議することも増えている。だがそのほとんどが失敗に終わっている。左派の社会民主党はこれまで26件の提案を発議してきたが、そのどれもが国民投票で否決されるか、撤回されたか、無効と判断されている。
右派の国民党が発議したのはこれまでに8回。外国人犯罪者を自動的に強制送還させる案と、移民規制案の2件は国民投票で可決されている。
1983年以降、発議件数は急増し、この30年で100以上の提案が国民投票にかけられた。最終的に可決されたのは、14件だ。
提案の件数が増えているため、政府・連邦議会がその審議に割く時間も増えている。この事態を憂慮する国民議会(下院)議員のカール・フォグラー氏は、発議要件を厳格化するよう政府に迫っている。
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