隣国から国境を越えてスイスに働きに来る労働者が、スイス人から職を奪っているわけではないし、むしろスイスの労働市場にメリットをもたらしている―。何かと否定的な見方をされる越境労働者について、スイス人の経済学者たちがこんな研究結果を発表した。
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研究論文の共同著者でヌーシャテル大学の経済学者シルヴァン・ヴェーバー氏はスイスインフォの取材に対し「越境労働者の増加と国内失業率の上昇はつながりがない」と語った。「手法のいかんに限らず似たような結果が得られた。国境を越えて働きに来る人が、スイス人から職を奪っているのではない」
スイスには毎日、フランス、ドイツ、イタリア、オーストリアから約31万5千人が国境を越えて通勤してくる。それは国内労働力の6%を占め、国境に近いジュネーブ州、バーゼル市、ティチーノ州では30%を超える。
研究はスイスの経済学者3人が実施。それによると、越境労働者の存在は懸念や、時には拒絶さえ生むが、スイスの労働市場にはほとんど悪影響を及ぼさない。研究では、国内全土の過去20年分のデータを分析した。
ヴェーバー氏は 「会社は、創立した場所で有資格者を雇おうとする。見つからなければ企業活動の一部を移転しなければならないこともある。越境労働者のおかげで、企業は元の所在地での活動を維持でき、それが結果的に地元労働市場に貢献している」と話す。
ジュネーブでは、「ジュネーブ市民運動」(Mouvement Citoyens Genevois外部リンク)が越境労働者の排除を求め選挙に打って出た。だが今回の研究では、失業率と越境労働者の数との間に因果関係はないという。
フランス語圏の州の失業率は全国平均の2.9%よりはるかに高い。ヌーシャテル州は5.3%、ジュネーブ州は4.9%、ジュラ州は4.0%、ヴォー州は4.11%だ。ヴェーバー氏によると、失業率の高さは越境労働者の影響よりも労働市場の構造に問題がある。
スイスのドイツ語圏は、職業訓練がフランス語圏よりも浸透しているとヴェーバー氏は話す。スイスの子供たちは通常、義務教育を終えると職業訓練か進学の道を選ぶ。職業訓練を終えた若者は容易に職を見つけることができるため、全体の失業率も低く抑えられているという。
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