スーダン内戦、国外からの武器流入で世界最悪の人道危機に拍車
深刻な人道危機が起こるスーダン内戦で、セルビア、ロシアや中国など6カ国から武器供給が事態を深刻化させている。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが、国連武器禁輸措置を迂回したスーダン西部ダルフール地方への流通ルートを明らかにした。
アムネスティ・インターナショナルが7月に公表した調査外部リンクで、何千もの武器がスーダンに流入し、一部は2004年以降、国連の武器禁輸措置の対象地域であるダルフール地方にまで拡散していることが判明した。
スーダンは2023年4月以降、アル・ブルハン将軍率いるスーダン国軍(SAF)とダガロ将軍の指揮下にある準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)が対立する激しい内戦の渦中にある。現在までに避難民は1千万人超、死者は数万人にのぼり、前例のない人道的被害に見舞われている。国連は紛争の影響で、スーダンの人口の過半数が前代未聞の食糧不安外部リンクに陥っているとして、両当事者による戦争犯罪を糾弾している。
アムネスティの報告書は、海外から絶え間なく流入する武器が紛争を煽っている」と指摘した。調査は約2000件の出荷記録と数千枚の画像を分析し、内戦当事者の双方が手にする武器を追跡した。
対スーダン武器輸出は国連の禁輸措置に違反
アムネスティ・インターナショナル・スイス支部広報担当者、ナディア・ボーレン氏は、「複数の国が武器貿易条約(ATT)に違反して、スーダンに武器を輸出している」と解説する。拳銃やライフル銃などの小型武器、また装甲戦闘車両やドローン妨害機器、何百万発もの弾薬、さらには迫撃砲などのより重い武器も輸出されているという。
2014年に発効した武器貿易条約外部リンクは、武器の使用が人権侵害を引き起こす可能性が高い国への武器輸出を禁じている。一方で、世界の違法な武器移転を追跡する調査団体スモール・アームズ・サーベイ(本部・ジュネーブ)のデータ責任者ニコラ・フロルカン氏はフランス語圏のスイス公共放送(RTS)外部リンクで、同条約の文書には違反した際に科す制裁は盛り込まれていないと指摘した。
アムネスティは、スーダンへの武器輸出国としてセルビア、ロシア、トルコ、中国、アラブ首長国連邦(UAE)、そしてイエメンの6カ国を名指しした。そのうち、イエメンとロシア以外は、武器貿易条約の締結国だ。
2024年1月には、国連のスーダン専門家グループによる複数の調査外部リンクが、RSFを支援するUAEからの武器の供与を確認した。その経由地として、RSFの拠点があるダルフール地方に隣接するチャド東部のアムジャラス空港を特定したが、UAEはこの告発を強く否定している。
猟銃を軍事転用
同調査は、武器を紛争に利用するための迂回供給ルートが少なくとも二つ確認した。民間用途(狩猟やスポーツ射撃など)の武器のみならず、軍事転用される可能性のある刃物も輸出されていた。スモール・アームズ・サーベイによると、軍事転用による武器の迂回供給は増加傾向にあり、欧州内でも確認されている。「警報用の銃の軍事転用は、欧州連合(EU)における違法な武器取引の主要因のひとつとして挙げられている」とフロルカン氏は強調する。
こうした武器の迂回供給への対策として、国連事実調査団外部リンク、そしてアムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチ外部リンクなどの人権擁護団体は、武器禁輸をスーダン全域に広げるよう呼びかけている。アムネスティのボーレン氏は「ダルフール地方に限定された武器禁輸は、民間人への被害を阻止するにはまったく不十分だ。スーダンに武器を輸出すれば、ほぼ確実に人権侵害を犯すために使用される」と主張し、武器貿易条約の締約国または署名国に対し、スーダンへの武器輸出を厳格に規制するよう訴えた。
しかし、こうした呼びかけに対する国際社会の反応は鈍い。国連安全保障理事会は9月、ダルフール地方における武器禁輸措置を1年間延長外部リンクしたが、適用範囲はスーダン全域に広げなかった。また、8月にスイスのジュネーブ地方で行われたスーダン内戦の停戦協議は、停戦合意に達することなく終了している。
仏語からの翻訳:横田巴都未、校正:ムートゥ朋子
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