スイス大使、2025年に国連人権理事会の議長に
国連人権理事会は9日、スイスのユルク・ラウバー国連大使(61)を2025年の議長に選任した。
人権理事会(本部・ジュネーブ)はすべての人々の人権の促進と保護を目的とする。議長にスイス人が就くのは初めて。
理事会の議長は、会議の議長を務め、特別手続きの候補者の提案、調査機関への専門家の任命などを行う。議長職は、2025年1月から1年間。2024年の議長は、モロッコのオマール・ズニバー大使が務めている。
「多言語、多宗教、多文化、民主的価値観、対話、コンセンサスの構築」―こうしたスイスの価値観を、ラウバー氏は指名直後の理事会でのスピーチで強調した。
現在、スイスの在ジュネーブ国連大使を務めるラウバー氏は、国際関係で長いキャリアを持つスイスの外交官。2015年から2020年まで在ニューヨーク国連大使、オランダ・ハーグ国際刑事裁判所所長室長などを歴任。また、ナミビアや韓国の非武装地帯での平和維持活動にも携わった経験がある。
直面する課題
議長の指名は、47カ国で構成される理事会の政治化や分極化に対する批判が高まり、数多くの課題が累積する中で行われた。米国や中国、ロシアやウクライナにおける戦争、中東情勢など、大国間の対立が緊張を悪化させる可能性がある。
また、国連の財政ひっ迫により、理事会は制約に直面している。このため、プログラムの縮小やサイドイベントの中止が予測され、理事会の機能に影響が及ぶ可能性がある。
ドナルド・トランプ氏が2025年からの米国大統領に再選されたことで、国連加盟国の間では、米国が国連人権高等弁務官事務所への財政拠出を削減するのではないかという懸念も高まっている。2018年、トランプ政権下の米国は「イスラエルに対する慢性的な偏見」と一部の加盟国の人権記録に問題があることを理由に、理事会を脱退した。米国はジョー・バイデン政権下で2022年から2024年にかけて理事会に復帰している。だが、トランプ氏は大統領復権が確定して以来、米国の国連への貢献についてコメントしておらず、不透明なままだ。
また、スイス自体も人種差別への対応などの批判にさらされている。
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スイス初
スイスは人権理事会へのより積極的な関与を目指し、10月には2025年から2027年の理事国入りを果たした。死刑廃止、拷問禁止、表現の自由の促進、少数民族と女性の権利の保護などの問題に焦点を当てる意向だ。スイスは2006年の理事会創設にも積極的に役割を果たし、2006年から2009年、2010年から2013年、2016年から2018年の3期にわたって理事国となった。 ラウバー氏は、人権理事国から議長に指名された。議長は地理的交代制で、2025年は西ヨーロッパその他グループ(WEOG)から選ばれることになっていた。ラウバー氏は、このグループからの唯一の候補者で、無投票で選出された。
編集:Virginie Mangin、英語からの翻訳:上原亜紀子、校正:ムートゥ朋子
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